半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2021年03月16日

特集:コロナ禍の消費を読む 消費動向速報
基礎的支出の落ち込みは一時的、選択的支出では改善の裾野拡がる
主任研究員 菅野守


図表の閲覧には有料の会員登録が必要です。
登録済みの方はこちらからログインしてお読みください。

 コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。


基礎的支出はマイナスへと大きく落ち込み、消費支出に対する基礎的支出の構成比も低下に転じている。
基礎的支出で最近悪化している品目は、コロナ感染再拡大により家計で自粛の対象となったものが目立つ。ただ今後、そうした悪影響がなくなっていくと考えられるため、基礎的支出の落ち込みは一時的なものに止まるだろう。
選択的支出では、クルマ関連支出や教育関連サービス支出に止まらず、ペット関連支出、理美容関連支出、コンテンツ関連支出、家事の効率化や外部化のための支出などへと、支出改善の領域が拡がりつつある。

1.選択的支出よりも大きく悪化した基礎的支出

 選択的支出の伸びは、マイナスに沈んだまま伸び率も低下し続けている。2021年1月には、基礎的支出もマイナスへと大きく落ち込んだ(図表1)。


図表1.基礎的支出と選択的支出の前年同月比伸び率の推移

ログインして図表をみる


 その結果、2020年10月を底に上昇を続けてきた基礎的支出の構成比も、2021年1月には低下に転じている(図表2)。


図表2.基礎的支出と選択的支出の構成比の推移

ログインして図表をみる


2.コロナ感染再拡大の影響が色濃く表れた基礎的支出の悪化の動き

 基礎的支出で最近悪化がみられる品目には、2020年11月以降のコロナ感染再拡大により、家計で自粛の対象となったものが目立つ。

 図表3では、2021年1月に前年同月比伸び率の値が-5%以下となった計13項目について、2020年11月から2021年1月にかけての伸び率の推移を分類し列挙している。


図表3.基礎的支出で最近悪化がみられた項目

ログインして図表をみる


 2020年12月はプラスだったが2021年1月にはマイナスに転じているのは「贈与金」(香典、見舞金、謝礼金、祝儀など)、「他の工事費」(板ガラス取替代、サッシ修理代、エアコン取付代など)、「すし(外食)」、「信仰・祭祀費」(教会献金 、宗教団体の会費、さい銭など)、「医療保険料」、「歯科診療代」、「公営家賃」の7項目である。

 2020年12月以降、最近2ヶ月間連続してマイナスとなっているのは「設備器具」、「他の入院料」(出産入院料以外の入院料すべてを含む)の2項目である。

 2020年11月以降、最近3ヶ月間に一貫してマイナスが続いているのは「ガソリン」、「医科診療代」、「他の菓子」(こんにゃくゼリー、かりんとう、チューイングガムなど)、「他の和生菓子」(大福餅、くず餅、どら焼など)の4項目である。

 これら13項目のうち、「ガソリン」での支出減少は、クルマでの外出自粛の影響が出ているものと思われる。「すし(外食)」での支出減少も、飲食店での営業時短強化や外食自粛などの影響といえる。「医科診療代」「他の入院料」「歯科診療代」などでの支出減少は、医療現場が逼迫化した中でコロナ以外の病気での入院・手術等の先送りや、医療機関への受診自粛などの影響が出た可能性は高そうだ。「贈与金」「信仰・祭祀費」などでの支出減少は、初詣や挨拶回りなどの自粛と考えられる。

 ただ、こうしたコロナ感染再拡大による悪影響は、緊急事態宣言の解除後、無くなっていくものと予想される。その意味で、基礎的支出の落ち込みは、一時的なものに止まると目される。


3.改善の裾野の拡がりがみられる選択的支出

 選択的支出では、これまで伸びを続けてきたクルマ関連支出や教育関連サービス支出に止まらず、ペット関連支出、理美容関連支出、コンテンツ関連支出、家事の効率化や外部化のための支出などへと、支出改善の領域が広がりつつある。

 2020年11月以降一貫してプラスが続いているのは「ペット・他のペット用品」(ペットフード以外のすべてを含む)、「自動車等関連用品」、「他の仕送り金」(国内遊学仕送り金以外の、生活補助を目的とした仕送り金)、「高校補習教育・予備校」、「授業料等:私立大学」、「布団」、「浴用・洗顔石けん」、「住宅関係負担費」、「他の教養娯楽用品のその他」(カメラ・デジタルカメラ付属品、バレエや日本舞踊などの舞台用衣装など)、「化粧クリーム」、「インターネット接続料」、「他の自動車等関連サービス」(車検印紙代、運転免許試験手数料など)の計12項目である。

 2020年12月以降、最近2ヶ月間連続してプラスとなっているのは「動物病院代」、「授業料等:私立高校」、「書籍」の計3項目である。2020年12月はマイナスだったが2021年1月にはプラスに転じているのは「電気洗濯機」「植木・庭手入れ代」「自動車教習料」「自動車購入」「自動車等部品」の計5項目である。

 図表4は、2019年11月~2020年1月と2020年11月~2021年1月の計6ヶ月の間に1回以上、月あたり支出金額が500円以上となったものを対象に、2021年1月における前年同月比伸び率の値が+5%以上となった計20項目を選別の上、分類し列挙している。


図表4.選択的支出で最近改善がみられた項目

ログインして図表をみる


 計20項目のうち、「自動車購入」「自動車等部品」「自動車等関連用品」「自動車教習料」「他の自動車等関連サービス」の5項目はクルマ関連支出であり、「高校補習教育・予備校」、「授業料等:私立大学」「授業料等:私立高校」の3項目は教育関連サービス支出である。クルマ関連支出や教育関連サービス支出は、前回に引き続き支出が伸びているものである。

 残りの12項目のうち、「ペット・他のペット用品」「動物病院代」の2項目はペット関連支出、「浴用・洗顔石けん」「化粧クリーム」の2項目は理美容関連支出、「インターネット接続料」「書籍」の2項目はコンテンツ関連支出、「電気洗濯機」「植木・庭手入れ代」の2項目は、家事の効率化や外部化の支出である。これら8項目は、支出の伸びが顕著なことが、今回新たに確認されたものである。

 このように選択的支出では、改善の裾野の拡がりがみられる。



特集:コロナ禍の消費を読む


参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.07.26

消費者調査データ 炭酸飲料(2024年7月版)  首位「コカ・コーラ」、迫る「三ツ矢サイダー」、高い再購入意向の無糖炭酸水

2024.07.25

24年5月の「広告売上高」は、6ヶ月ぶりのプラス

2024.07.24

24年5月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.07.23

24年5月の「商業動態統計調査」は2ヶ月連続のプラス

2024.07.22

企業活動分析 キユーピー株式会社 23年11月期は海外など好調で増収も原材料高騰で2桁減益に

2024.07.22

企業活動分析 カゴメ株式会社 23年12月期は引き続き海外事業がけん引し増収増益に

2024.07.19

企業活動分析 ライオン株式会社(2023年12月期) 増収も土地譲渡益の反動等で減益に

2024.07.19

企業活動分析 ユニリーバ(Unilever)(2023年12月期) 減収減益、事業部門の業績格差受け、新成長戦略を修正へ

2024.07.19

24年6月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.18

24年6月の「景気の現状判断」は4ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.17

MNEXT 円安は歓迎すべきかー過熱する円安論争

2024.07.16

企業活動分析 山崎製パン株式会社 23年12月期は大幅な増収増益で過去最高益に

2024.07.12

消費者調査データ スポーツドリンク・熱中症対策飲料(2024年7月版) 首位「ポカリスエット」、追い上げる「アクエリアス」

2024.07.11

24年5月の「消費支出」はふたたびマイナスに

2024.07.10

24年5月の「家計収入」は20ヶ月ぶりのプラス

2024.07.09

24年4月の「現金給与総額」は28ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.07.08

企業活動分析 大塚HD 23年12月期は売上は過去最高を記録、医療事業の減損損失で減益に

2024.07.08

企業活動分析 小林製薬の23年12月期は、R&Dや宣伝広告への積極投資を行い増収減益に

2024.07.05

成長市場を探せ 初の6,000億円超え、猛暑に伸びるアイスクリーム(2024年)

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2024.07.03

MNEXT コロナ禍の前中後の内食もどりはあったのか? -食欲望の現在-

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area