眼のつけどころ

コロナの出口シナリオとV字回復戦略―日本の「隔離人口」は約39%

2021.02.04 代表取締役社長 松田久一

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5~6月の集団免疫獲得で感染拡大は収束

 コロナ禍の出口がやっとみえてきた。日本は、5~6月には「集団免疫」を獲得し、コロナの収束過程に入りコロナ感染拡大は終息する。これは、一般的に流布されている出口は2~3年先というシナリオよりも極めて早い。

02

早い収束の鍵を握るのは隔離人口の多さ―人口の約39%は対話しない

 理由は、「コロナ感染症の社会集団分析」(有料会員限定レポート)で明らかなように、日本の「隔離人口(Removed)」は対話人数と対話時間の分析から約39%と推測できた。ある平日の1日の対話時間が「15分以下」、つまり、濃厚接触(マスクなしでの15分以上の対面接触(WHO))に該当しないからである。従って、日本では最大で感染する可能性のある人口は約61%となり、「感受性人口(Susceptibles)」は約7,717万人である。

03

集団免疫獲得には約52%の抗体保有率が必要

 コロナ禍からの脱出の決め手はワクチン接種しかない。ワクチン接種をしなければ、対人対話を停止しないかぎり、感染拡大は続く。感染拡大を終息させるには、ウイルスの抗体を持つことである。抗体を持つ層が一定程度増えれば、感染は拡大せずに、感染は収束する。集団の大部分が免疫を持つことによる感受人口の間接的な保護効果は「集団免疫(herd immunity)」と呼ばれている。

 仮に、10人の感染者が30人に感染させたとする。そして、30人のなかで20人が抗体を保有していれば、新たに増える感染者は10人になる。さらに、抗体保有者が25人になれば、10人の感染者は新たに5人の感染者しか増やすことができない。これが繰り返されると、新しい感染者数は減少し、感染拡大は収束する。天然痘や麻疹(はしか)の感染事例で知られている。しかし、ワクチンの有効性、副反応などもあり、拒否者も少なくなく、完全とは言えない。従って、リスクとコストを最小化してベネフィットを最大化するしかない。

 この集団免疫を獲得するには、集団のどの程度の免疫獲得率、つまり、抗体保有率が必要になるかが課題となる。コロナ感染症の集団免疫に必要な「抗体保有率」は約52%である。

 この数字は「基本再生産数(R0)」[1]によって定式化されている。最近、よく耳にするようになった「実効再生産数(Rt)」[2]とは異なり、感染症拡大の始まりから終息までの全過程の終了で明らかになる、感染症固有の特性である。「実効再生産数(Rt)」は、時間的な途中経過を示す数字である。コロナ感染症は、暫定で1.4~2.5(WHO)と推測している。集団免疫が効果を生む集団の抗体保有率(臨界免疫化割合)[3]は、1-(1/R0)で算出できる。このことから感受性人口の約52%が抗体を持てば、集団免疫効果が働くようになる。しかし、日本の感染確認数は約40万人(2月3日)と人口の0.32%である。ほど遠い数字である。従って、欧米の研究機関は、ワクチン接種の遅れもあり、日本の感染症の収束は欧米よりも遅れると予測している。

04

日本の隔離人口の多さが免疫獲得を早くする

 隔離人口とは、何らかの理由で感染しない人と、すでに感染した人口の合計である。「コロナの社会集団分析」では、ある平日の1日に「対人接触時間」が15分以下の人の比率である。これは感染条件である「濃厚接触(マスクなしの15分以上の対面接触)」のない人々の比率である。統計的推定としては、より実態を捉える追調査が行われるべきだが、隔離人口を推計するには有効である。

 感染拡大を収束させるには、感染しない人口を増やして、感受性人口を減らすことである。それには、ワクチン接種によって免疫獲得者を増やすとともに、感染しない層を増やすことである。政府や都道府県などによる対応策は、この感染しない層を増やす政策であり、中世のペスト流行(黒死病)の隔離政策と同じである。

 しかし、日本での対人対話分析を行うと約39%の人々が15分以上の対話をしない。つまり、感染しようがないことがわかった。

 感染がどのように起こるかは未解明な部分が大きい。感染経路から考えて、対面接触による飛沫感染が主とされていることから「濃厚接触がない」ということの意味は大きい。

05

隔離人口層は、40代以上、単身世帯、独身社会人、非正規雇用層に多い

 隔離人口層を、濃厚接触層と比較すると、「40代以上」、「単身世帯」、「独身社会人」、「非正規雇用層」、そして、「人付き合いはわずらわしい」の価値意識を持つ比率が相対的に多いことがわかった。主観的な印象としては「中高年の独身オタク」像が思い浮かぶ。

 この層が感染拡大を抑止し、集団免疫獲得を容易にする。必要な免疫獲得人口は感受性人口の約52%、人口比で32%である4,013万人(感受性人口7,717万人×52%)となる。従って、先行して接種される医療従事者が約400万人、さらに、約3,600万人の65才以上の層が加わり、5~6月時点での1回目のワクチンによる免疫獲得者は約4,000万人となる。この時点で、「仮集団免疫」が獲得できることになる。少なくとも上期で集団免疫が獲得できると想定できる。

 但し、これには幾つかの仮定しておくべき条件がある。隔離人口予測の信頼性、隔離人口がワクチン接種しないこと、ワクチンの有効性が90%以上あること、ワクチンの供給と接種が円滑に行われることなどである。

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コロナ防衛策から攻勢策への転換で早期コロナ禍脱出シナリオ

 これまで整理したことをまとめると、戦略経営やマーケティングを展開するためのシナリオを描くことができる(図表)。

図表.コロナ禍からの早期脱出シナリオ
図表

 戦略的には、楽観的なシナリオと悲観的なシナリオを描き、悲観シナリオをベースに行動し、楽観シナリオに向けて着実に準備するのが原則だ。

 このシナリオでは楽観と悲観を分けるのは、集団免疫を達成する時間が違うからだ。流れは変わらない。早いか、遅いかである。眼のつけどころは、隔離人口の推計である。今回は、感染症拡大と不可分の関係にある対人対面会話の社会集団からの分析を試みた。現在の治療から得られる個体的な医療分析、感染症の数理モデル分析で欠如している視座である。

 このシナリオでもうひとつ強調したいのは、V字回復が起こる可能性が高いことである。特に、消費主導のV字回復である。

 理由は、三つある。ひとつは、コロナ禍での抑圧された欲望のはけ口としての消費である。欲望は抑圧されることによって、より強くなる。特に、旅行ニーズは極めて強い。集団免疫達成後のGoToトラベルキャンペーン再開が引き金となり、国内旅行から消費が回復しそうである。ふたつめに、コロナ禍の家計黒字の拡大と預貯金の増加によって、消費を実現するための原資があることである。そして、最後に、人口は少ないが21世紀生まれで、20年世代区分の「ミレニアル世代」が、20代になり、本格的に、消費市場に参入してくることだ。長年の世代分析の専門家として言えるのは、彼らが「消費好き」だと言うことだ。消費好きの世代が登場するのは、30年ぶりの現象である。

 コロナ禍の脱出シナリオが見えた現在、戦略経営やマーケティングの担い手は、タイミングを見計らって、生産計画、新製品導入、ブランド投入、宣伝広告投資、流通チャネル戦略、新規事業を準備すべきだ。特に、コーポレートブランディングの立て直しと顧客に会えるようになる営業力の再投入は有効になるだろう。

 成功の鍵はタイミングだ。消費がV字回復する際に、需要に対応できるマーケティング対応と供給体制を持っているかである。ダラダラ回復なら「先延ばし」決定で「後手必勝」だが、V字回復なら「先手必勝」である。

5月末の緊急事態宣言の再延長に伴い、本コンテンツの更新版、「コロナの出口シナリオ(2月版)の更新―2ヶ月遅れのV回復の予兆」を公開しました。

【参考文献】

  • 稲葉寿(2008)「感染症の数理モデル」、培風館

【注釈】

  • [1] なんらかの病原体に対してすべてが感受性を有する個体からなるホスト人口集団において典型的な1人の感染者が、その全感染期間において再生産する2次感染者の期待数。R0で表す。(稲葉寿「感染症の数理モデル」より)
  • [2] 基本再生産数は、完全に感受性人口のみからなる人口学的な定常状態にあるホスト人口を前提とした2次感染者の再生産数であるから、介入行為によって部分的に免疫化された定常的ホスト人口や、時間的に定常ではないホスト人口における2次感染者再生産数を区別しておいたほうがよい。ホストのすべては感受性とは限らない場合、あるいは感受性ホストが定常状態ではない場合の特定の時刻における平均的な1感染者が、その全感染性期間に再生産する2次感染者総数を実効再生産数と呼ぶ。(稲葉寿「感染症の数理モデル」より)
  • [3] 特定集団への集団ワクチン導入によって流行を根絶するための閾値。
    図表
    集団ワクチンの臨界免疫化割合という。臨界免疫化割合を超える集団ワクチン接種によって達成される集団レヴェルの免疫状態が集団免疫である。(稲葉寿「感染症の数理モデル」などより)

オリジナルレポート
コロナ感染症の社会集団分析

図表

なぜ日本では新型コロナ感染者数が少ないのか――。本レポートでは、各種オープンデータと「消費社会白書2021」調査結果をもとに、感染拡大の抑止要因を独自に分析。日本の社会集団を切り口に、より分析的な仮説を提示します。


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