5Gとは「第5世代移動通信システム(5th Generation)」のことで、通信規格の名称。1979年に登場した「1G」から現在の「4G」に続く最新の規格で、日本では2020年3月から商用化が開始された。
総務省は5Gの要求条件を以下のように定めている。
- 超高速通信
下り最大20Gbps、上り最大10Gbps(4Gの10倍以上) - 超低遅延通信
遅延1ms程度(4Gの10分の1程度) - 多数同時接続 1km2あたり100万台程度(4Gの10倍)
これにより4K/8Kの高精細映像などの大容量コンテンツの伝送や、自動運転や遠隔ロボットへの活用、IoTの普及などが期待されている。
総務省は「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」(2022年3月)の中で、5G対応エリアの目安である人口カバー率を、2020年度末の30%から2023年度末には95%まで引き上げることを目標に掲げている。
携帯電話事業者各社も基地局整備を加速させており、ソフトバンクは2022年4月にカバー率90%を突破したことを発表した。
しかし実態は普及には程遠い。各社のカバー率には、前世代の規格である4Gの周波数帯を転用した、いわゆる「なんちゃって5G」も含まれるためだ。
一般に、電波の周波数が高いほど一度に大容量のデータが伝送できるので、通信速度が速くなる。日本国内で5G専用の周波数として割り当てられているのがSub6と呼ばれる3.7GHz帯、4.5GHz帯、そしてミリ波と呼ばれる超高速通信の28GHz帯の三つの帯域である。一方、4Gは700~900MHz帯や1.5GHz~3.5GHz帯を利用しており、これらの周波数帯の転用では5G本来の速度的なメリットが享受できない。
こうした転用を「5G」と呼称することに対して優良誤認*1に当たるとの見解や、同じ周波数帯に4Gと5Gが同居するため、既存の4G利用者の通信品質が低下する可能性も指摘されている。5Gエリアから4Gエリアに切り替わる際に通信が止まる「パケ止まり」も無視できない問題だ。
それでもKDDIやソフトバンクが4G転用を進める背景には、少しでもカバー率を高め、利用者に「5G対応」をアピールしたい思惑がある。
5G SA(5Gスタンドアローン、5G単独での運用)方式は、その高い周波数帯の特性から電波が遠くまで届きづらく遮蔽物にも弱いため、狭いエリアでしか使えない。これは、超高速通信のミリ波で顕著である。現在の4Gと同等のエリアをカバーするには、より多くの基地局を整備する必要があり、多大なコストと時間がかかる。一方4Gの転用では既存の設備を使える上、電波の問題もないため、より迅速に「5G」を普及させることができる。
これまで5G SAにこだわる姿勢を堅持してきたドコモも、カバー率で他社に遅れをとっていることから2022年3月、4G転用へ方針転換。2024年3月までに人口カバー率90%を目指すとしている。
「本当の5G」の普及には、まだまだ時間がかかりそうだ。
- *1 消費者に対し、提供する商品・サービスが実際よりも著しく優良であると示すもの。景品表示法において優良誤認表示の禁止が定められている。この場合、5Gの表示にも関わらず実際は4G相当の通信速度であることが優良誤認にあたると指摘されている。
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