前編で触れた銀座の名物である歩行者天国の話を少しだけ振り返ります。3月28日から約3ヶ月の長期休止をした銀座のホコ天。これまで、よほどの悪天候以外は休まずに毎週末と祝日に行われていたホコ天にとって、これほどの長期休止はまったく初めての事態でした。さらに、4月からの緊急事態宣言後は、店舗のほとんどが休業を余儀なくされ、銀座のホコ天は、歩行者の天国にするまでもなく、歩行者のいない寂しい場所になってしまっていたのです。しかし、今年6月13日に再開を果たした銀座のホコ天は徐々に息を吹き返しました。
実は銀座の復活の陰には、銀座に再び活気を取り戻すために知恵を絞り、画策していた人々の尽力があったのです。そのひとつが、8月3日から本格始動した新プロジェクト「New Style New GINZA Project」。仕掛け人は、銀座で70年にわたり、街の歴史をみてきたクリエイティブエージェンシー「株式会社ライトパブリシティ」という広告制作会社でした。思うようにお客さんが戻らず、戸惑っている銀座の旦那衆の苦悩を見過ごすわけにはいかない。銀座の仲間としてひと肌脱がなくては・・・。そんな思いからプロボノという形で応援することになったようです。そうして生まれたのが、「新しい生活様式を踏まえたうえで、安心して食事や買い物を楽しめる街づくり」をスローガンにした、新しい銀座をアピールするこのプロジェクト。
オリジナルロゴとして考案したのが、矢印(→)と無限大(∞)のマーク。銀座1丁目から8丁目の店舗が力を合わせ、新しい銀座へ向かっていくという姿勢やその力が無限に広がっていく街の未来を表現しているそうです。→と∞に、数字の1と8の意味も持たせるあたりに、長年、銀座で広告制作会社をやっている地元愛と力量を感じます。そして、コピーは「おかえりGINZA」。こちらもわかりやすくて温かい言葉です。
ロゴマークとコピーが決まったところで、「New Style New GINZA Project」の第一弾として展開されたのが、新しい銀座の顔づくり。緊急事態宣言の解除後、また以前のように銀座に足を運んでもらいたいという願いを込めて「おかえりGINZAのれん」を発案。銀座1丁目から8丁目までの様々な場所に「おかえり銀座」と書かれた黄色いのれんやポスターを掲げることになりました。
最初に掲げたのは、1930年創業の日本を代表する老舗テーラー「壹番館」。そこからは、江戸時代に京都で創業し、東京遷都から銀座に移り、現在13代目が受け継ぐ和菓子店「萬年堂本店」や大正6年に創業し、与謝野鉄幹・晶子夫妻が名付けたという画材店「月光荘」など、多くの老舗や店舗が「おかえり銀座」という気持ちを込めて黄色いのれんを掲げています。
前編(「UNIQLO TOKYO」「和光本館」「SEIKO MUSEUM」...新名所登場で賑わい取り戻す銀座の今)
今回訪ねた街はコチラ!
著者プロフィール
赤沢奈穂子
放送作家。
日本脚本家連盟、日本放送作家協会会員。
コピーライターから放送作家に転身後、日本テレビ「11PM」でデビュー。番組における最初で最後の女性作家に。テレビ、ラジオ、イベントなど数々の番組等に関わり、1993年渡米。NY、イスラエル、ロンドンでの約7年の居住を経て帰国。その後は、番組構成をはじめ、雑誌ライター、書籍の執筆、イベント運営など、幅広く活動している。既婚。2児の母。東郷奈穂子名義でも活躍中。
コピーライター作品「フルムーン旅行」
放送作家作品「テレビ東京/出没!アド街ック天国」ほか
近著に、萩谷慧悟ダイビングフォトブック「HORIZON」(2021)、「Azure Blue」(2022)、小西成弥フォトブック「treasure」(2022)など
連載:気になるあの街に行ってみた!
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参照コンテンツ
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シリーズ「移動」のマーケティング
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- 変わる家族と駅の役割
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- ビッグデータの宝庫「駅」でのビッグデータ利用を阻むもの
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- 観光日本のゲートウェイ「駅」
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