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公開日:2023年02月16日

月例消費レポート 2023年2月号
消費は持ち直しの動きがみられる―値上げの悪影響をどう乗り越えるかが消費回復のカギに
主任研究員 菅野 守

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 支出全般の伸びは上昇に転じ、10大費目別ではプラスの側が優勢である。耐久財では好不調の格差がみられるが、小売販売はプラスを保ち、外食でも改善の動きが続くなど、消費は持ち直しの動きがみられる。
 雇用環境は横ばい、収入環境は改善傾向にあるが、マインドは方向感が定まらない。値上げの悪影響は、日常生活財から選択的支出へと広がりつつある。この先、消費者物価上昇の動きが広がり強まっていく可能性もゼロではない。
 賃上げは消費への悪影響を軽減する効果は期待されるが、賃上げの幅の格差により、購買力の低下を被る層と回避できる層とに分かれる。
 購買力低下層による消費への押し下げ圧力と、購買力維持層での消費の押し上げ効果との優劣が、消費回復のカギを握る。購買力低下の悪影響を緩和する施策が、消費回復に必要となる。

 JMR消費INDEXは2022年12月に66.7となり、下げ止まりの動きを見せた(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、12月は、支出関連の3指標は2ヶ月連続で悪化となった。他方、販売関連では、改善が10指標中8指標と前月よりも増えている(図表2)。

 消費支出の伸びは、12月も名目ではプラス、実質ではマイナスであるが、伸びの値はいずれも上昇に転じている(図表4)。

 10大費目別では、名目ではプラスが9費目、実質では6費目であり、その個数はいずれも前月よりも増加している。特に名目では、プラスの側が圧倒的に優勢である(図表5)。

 食料とその他の消費支出の2費目は、名目の伸びはプラスだが実質の伸びはマイナスである。値上げの悪影響は、日常生活財だけでなく、選択的支出にも広がっているようだ(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2022年9月以降、低下が続いている。

 他方、国内企業物価の伸びは横ばい傾向にある。消費者物価の伸びは、緩やかな上昇傾向を保っている(図表6)。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2022年8月以降、財・サービスともに物価の伸びは上昇を続けている(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は9ヶ月連続のプラスであり、チャネル別でも全ての業態でプラスとなっている(図表11図表12)。

 外食売上も、全体で13ヶ月連続のプラスであり、業態別でも3業態全てで10ヶ月連続のプラスである(図表20)。

 新車販売は、2023年1月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにプラスとなった(図表13)。

 他方、家電製品出荷については、黒物家電は総じてマイナス、白物家電も概ねマイナスである。情報家電はスマートフォンでマイナスが続いている(図表14図表15図表16)。

 新設住宅着工戸数は、全体で3ヶ月連続のマイナスであり、利用関係別でも、分譲住宅・マンションを除き概ねマイナスである(図表17)。

 雇用環境は、失業率と有効求人倍率ともに、横ばいとなっている(図表8)。

 収入は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに11ヶ月連続のプラスである(図表9)。現金給与総額の実質賃金指数も、2022年12月は前年比+0.1%となっており、3月以来9ヶ月ぶりのプラスである。

 ただし、消費マインドについては2023年1月現在、消費者態度指数は2ヶ月連続で上昇する一方、景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月連続で低下しており、足許で方向感は定まらない(図表10)。

 総合すると、消費はそれまでの鈍化傾向から、持ち直しの動きがみられる。

 消費支出など支出全般の伸びは上昇に転じている。10大費目別でみても、プラスの側が優勢である。

 小売販売は総じてプラスを保ち、外食でも改善の動きが続いている。

 耐久財では引き続き分野間で好不調の格差がみられ、足許では悪化の動きの方が目立っている。

 雇用環境は横ばいであり、収入環境は改善傾向にあるが、マインドは方向感が定まらない。

 値上げの悪影響は、日常生活財から選択的支出へと広がりつつある。

 一部報道によると、2023年内に飲食料品で値上げが予定される品目数は、1万点を超える。その半分近くは2月に、4月までにはほぼ全ての品目で実施される予定だ。

 電力各社の値上げも、早ければ4月から実施される見通しだ。

 この先、財・サービスの違いを問わず、消費者物価上昇の動きが広がり強まっていく可能性も、決してゼロではない。

 賃上げの動きは、値上げによる購買力の低下をある程度抑止し、消費への悪影響を軽減する効果が期待される。

 ただし、賃上げの上昇幅は個人により異なってくる。購買力の低下を被る層と回避できる層とに、消費者は分かれてくるだろう。

 したがって、購買力低下層による消費への押し下げ圧力と、購買力維持層での消費の押し上げ効果との優劣が、消費回復のカギを握ることとなる。

 その場合、個人間での賃上げの格差を念頭に、値上げによる購買力低下の悪影響を緩和できるような施策が、消費回復の実現には必要となってくるだろう。


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特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


参照コンテンツ


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