2023年の消費と戦略経営
~マーケティングの6つの革新~

2022.11.29 代表取締役社長 松田久一

本コンテンツは、2022年11月10日に開催したネクスト戦略ワークショップでの講演内容に加筆修正を加えたものです。各セッションの講演録は順次公開してまいります。

01

時代をどう捉えるか

 初めに、皆さまにお礼を申し上げたいと思います。多くの方々にご参加いただいき、誠にありがとうございます。また日頃、私どもの社員を通じまして、色々な仕事、プロジェクトを頂戴しておりますこと、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

 まず、私どもの市場環境の分析、消費社会白書をご案内させていただくのですが、やはりマーケティングというのは、時代をどう捉えるかというところが毎年非常に難しい課題になります。

 今年は特に難しく、その一端として私どもが研究している消費社会白書の歴史的な枠組みのようなものを、私どもの得意な世代論をベースにして、今、時代をどう捉えるべきかをお話しさせていただければと思っております。これが私どもの白書の認識になっております。ピーター・ドラッカーが、「経営とは、時代をどのように捉えればいいかということ」だと申しておりますが、私どももそのように考えております。

02

日本経済と政治の「ふらつき」

 最初に、今の時代というものを少し見てみたいと思います。今の日本経済あるいは政治そのものについて、ふらついているのではないかというのが私どもの考えです。このふらつきというのが、色々な意味で社会の背景になっているのではないかと思っております。

 そのふらつきの背景には、時代をどう捉えるかという認識がないのではないかという問題意識を持っております。為政者あるいは経営者にしても、昔の経営者、政治家に比べて、時代認識や歴史についての知識が非常に浅い。そんな弱点を持っているのではないか、それがふらつきの原因になっているのではないかと思っております。

03

新しい「戦後」

 そこで、最初に皆さまにご提案させていただきたいのは、この時代をどう捉えるかということです。そこで手がかりとしたのは、戦後というキーワードです。戦後が壊れて、崩壊しているのではないかというのが、私どもの仮説です。

 戦後の成立というのは、戦後80年経ち、私も含め今の世代は全く戦争を知らないのですが、戦後の枠組みの中で生きてきたわけです。そういう意味で、戦後というのが大きなキーワードになってくると思います。

 中村政則さんという方がいらっしゃいまして、その著書「戦後史」での戦後史の区分は、5区分とされております。「戦後の成立」が1945年から1960年。そして「戦後の基本的枠組みの定着」。私どもは、この基本的枠組みの定着の中で生きてきたのではないかと思います。そして「戦後の揺らぎ」「戦後の終焉」。そして、現在また「新しい戦争の中で」という区分をされております。

 その中で、先日亡くなった安倍さんは、戦後レジームの転換をずっと言っておられましたが、まさに戦後の中の終わり、そこに私どもはいるのではないか。そして、どこへ行くのかというのが、私どもの大きなテーマです。

04

日本の未来はどこへ向かっているのか

 そこで、一つの手がかりとして「NHKスペシャルにみる2022年」を見てみたいと思います。結論から申しますと、NHKスペシャルをずっと見ておりますと、絶望の未来しか見えません。

 テーマを挙げますと、『混迷の世紀「プロローグ"プーチンの戦争"世界はどこに向かうのか」』『新・ドキュメント太平洋戦争「1942大日本帝国の分岐点」』に続き、『"中流危機"を越えて』。私どもがずっとテーマとして捉えております中流危機の問題、安倍さんの問題、そして混迷の世紀、民主主義は勝つのか。先日、アメリカの中間選挙が行われ、どうもトランプ勝利とはならなかったようです。

 このような流れで見ていくと、NHKがこういうものをあおっているとは全く思いませんが、世論の反映として今のふらつきの中で、私たち一般の人々にとっては絶望の未来しかないと、これが今の日本の状況なのではないかと思います。

05

20年世代論でみる日本の未来

 そこで、何が足りないのかということを考えてみると、時代診断がないということがマーケティングや経営、経営者にとって、一番大きな問題ではないかと思います。

 戦後の枠組みの中で育ってきたのですが、私どもは軍事よりも経済、平和、そして中流社会というものを大事にしてきました。その戦後の枠組みそのものが、崩壊していくということに直面しているのではないかというのが、一つの時代診断です。

 大言壮語をしてもビジネスにはなりませんので、私どもが得意とする世代論で時代を分析してみました。結果、今の時代に似ている時代とは、過去の歴史からいうと明治維新後の青写真なき日本国家をどう成立させていくかという問題の時期。日本が戦争に負けて、どんな日本を建設していくか、平和な日本をどう建設し、豊かな中流社会を形成し、そして製品よりも欲望を大事にする社会をどうつくっていくかという枠組み、そういうものをつくった戦後と同じような時代に生きているのではないかと思います。

図表

 そういう意味で、今は新しい戦後、青写真なき新しい立国といえるのではないかと思います。人生4区分として1区分20年、一時代を80年と捉えていくのが、世代史観というものです。日本もやっと、Z世代という20年世代区分が顕著に知られるようになってまいりましたが、20年世代区分の背景にあるのはこの世代循環史観です。

 バイデンがよく第3次世界大戦というのも、この世代循環史観が背景にあるからで、そういうものと日本がリンクしてきたということだと思います。そういう意味で、2006年から2025年は、今の戦後の枠組みが危機に陥って、亀裂と動揺が起こり、戦後が終わっていく。これから、もうすぐやってくる2026年から2045年、この時期に新しい制度が再生されて、新しい日本が建設されていくのではないかという歴史観を持てるのではないかと思います。

 人生を4区分で捉えると20年ごとに交代していきますので、20年ごとに時期区分があり、この全体で80年が一つの時代になっているというのが、世代循環史観の考え方です。

06

世代交代と収入格差が変える時代

 2026年は、どんな世代がどんな時代をつくっていくのか。新しい戦後をつくっていくわけですが、バイデン風にいうならば、第3次世界大戦の時代を生きていく世代となりますが、その戦後世代にユニクロの柳井さんがいます。これがひいおじいさんにあたります。続く成長世代は楽天の三木谷さんです。おじいさんが三木谷、お父さんがリーチ・マイケルになります。Z世代が大谷翔平。Z世代の次は、もう名前が決まっており、α世代といいます。α世代にやってくるのが、悠仁親王ということになります。

 この世代の組み合わせを見ると、これから新しい時代がやってくるということをイメージしていただけるのではないかと思います。皆さまの会社も、ぜひこのような形で、世代と時期区分をすることによって、一つの企業の現在の状況を捉えていただけるのではないかと思います。

 このように、歴史を数字的に、時間の流れで捉えた上で、今度は私どもがビジネスとしているのはその断面です。その断面をどう捉えるかということについて焦点を当てているのが、この白書となります。その白書の中で、主なポイントをご説明させていただきます。

 日本のZ世代の人口は、アメリカのZ世代の3分の1ぐらいにしかなりません。80万人ぐらいしかいないのです。従って、少数派なのですが、そのZ世代がこれからをリードしていくことになります。彼らの特徴は、単独化、ソロ大好きという生き方の世代だと思います。

07

収入格差が広がる「砂時計社会」

 もう一方で、産業構造の転換が劇的に起こっており、このコロナ禍で収入格差が大きく拡大した背景には、産業構造転換についていった産業と、ついていかなかった産業の差というものがあります。おそらく10倍ぐらいの差が出ております。

図表

 この収入格差と単独化が起こった結果として、現在の我々の社会は砂時計のような社会になり、上にあった中流社会の家庭がばらばらになって下に落ちていくというイメージを持っていただいてもいいのではないか思います。中流家庭がこぼれて落ちていく砂時計社会、これが一つの見方としてあるのではないかというのが、今回の提案です。

08

新しい時代「創造立国」を解く10の鍵

 私どもがこれから考えていく新しい時代の命名は「創造立国」です。その「創造立国」を解く10の鍵を消費社会白書で提示しております。

図表

 Z世代ではなく、「ミドルとシニア」、そして「感情保守」「エモーショナルブランド」、感性や感情というものが大事にされる。そして内食ではなく「加工内食」、伸びているのは内食ばかりではなくて、内食の中の加工内食です。そして、家電は家事の苦労を解放してきましたが、むしろそれを乗り換えて「エンタメ化」しようとしている。そして海外旅行が戻っていくというよりは、むしろ未知に隠されていたインナーでの遊び、「インナーレジャー」化が進んでいくのではないか。そして「値上げ下のデフレ感覚」を持っている。そして「収入階層」。更に「ロープライスチャネル」ということで、コンビニエンスストアで食事が買えない層が出てくるのではないか。消費に関しては「マウンティング」というようなことが、これからの消費を解く鍵になるのではないかと認識しております。この10の鍵をこれから発表させていただく内容の手がかりとして持っていただければと思います。

09

6つのマーケティング革新

 最後に、時代が変わっていく、そして市場が変わっていく中で、私どもが提案したいのが、いわば新創業のマーケティングというものです。新しいリブートマーケティングというのが、非常に重要なポイントになっていこうかと思います。その中で、私どもが革新していかなくてはならない領域が、6つあります。

図表

10

感情行動リサーチ

 まず、私どもはリサーチ会社出身のマーケティング専門のコンサルティング会社ですが、まず合理的な行動ばかりに目を向けたリサーチばかりを追求してきたのではないかという反省がございます。そういう意味で、感情行動、特に今回はブランドについて新しい知見をどんどん入れていっております。行動経済学とか感情心理学とかを取り入れた新しいリサーチです。

 合理的行動とはどんな行動かというと、AとBという商品があって、どちらを選ぶかということを考えていくと、必要な属性を全部ピックアップして、それに得点を付けて、合計点の大きいほうを選ぶというのが合理的行動です。しかし、そんなことを実際にやっている消費者はいません。従って革新として、新しい皮膚感覚を入れたリサーチが必要なのではないかと思っております。

11

2階建てセグメンテーション

 2番目には、コンビニに行けない層がおそらく2~3割ぐらい出てくるのではないかという意味で、2階建てのセグメンテーションというのが必要になってくるのではないかということです。どちらかに振り切らないと振り切られてしまうのではないかというのが、セグメンテーションについての革新ということです。

12

生活イノベーション

 そして3番目に、生活イノベーションというものが起こっています。歴史がどこに行くか分からないという状況の中で、生活は確実に変わっていっています。その中で、人々が行っている生活イノベーションにぴったりな商品がどんどん出てきています。今回、シャークというダイソンキラーと呼ばれているメーカーの事例を紹介させていただきます。

 2階建てセグメンテーションについては、ウォルマートがいかに社会階層の変化と対応して成長してきたかというのを、ご案内させていただく予定です。

13

エモーショナルブランディング

 そして4番目には、やはりマーケティングの中心はブランドになりますので、「エモーショナルブランディング」をご提案させていただこうと思っています。ブランドとは感情の固まりです。その感情をいかにして掴んでいくかというのが、これからのブランディングの課題になっていこうかと思います。

 GAFAが強いと思われていましたが、崩壊していくのではないかと思います。GoogleはGoogleで課題を持っておりますし、Amazonも初めて減収に陥ります。それからNetflixがDisney+に抜かれました。ネットワーク外部性というのがあって、GAFAに勝つことはできないと思われていたのですが、どうもそんなことはない。その背景には、どうやら感情というものがあるようです。

14

価値志向の値上げ

 そして5番目に、値上げです。値上げというのは、1回だけで済むわけではなく、何度も値上げしていくことが必要になりますので、そういう意味で価値志向の値上げを、皆さんにご提案していこうと考えております。カルディや3COINSを事例としてご案内できるのではないかと思います。

15

創造的購買づくり

 最後に、創造的購買づくりです。私どもはよくメーカーや生産者側の立場で仕事をしておりますが、流通とメーカーは対立するのではなく、関連購買や、あるいは想起購買を一緒に創造できる仕事、売り場づくりができるのではないか。ネットが進み、合理的購買行動が盛んになる中、一方で消費者は買い物に楽しさを求めている。そこはメーカーと一緒に仕事ができる領域ではないかと思っております。

 この6つの機能を、当社得意のビジネスプラットフォームとしてつくり上げて経営成果を出していく。こういう循環をつくり上げていくような6つのマーケティング革新が大事なのではないかと思っております。

16

「創造立国」へのマーケティング理念

 最後に皆さまにご提案したいのは、マーケティングとは、適当にうまくやって売れればいいという理念を持った経営ではございません。ご存知のように、1970年代に生まれた消費者志向の中でのマーケティングは、日本の中で花開いていくわけですが、その理念とは、消費者の満足度を上げていくということです。

 消費者の満足度を上げていくことによって、利益は達成されると考えるのがマーケティングの理念ということになります。そういう意味で、今の時代に重要な利他的自己利益志向イコールマーケティングそのものです。

 そういう理念をもう一度この日本の中で取り戻したいというのが、我々マーケティングと共に歩んできた当社の希望です。それを皆さまと一緒に築いていきたい。生活者とマーケティングが歴史を動かすのだと。経済学は政策として為政者のものですが、マーケティングは生活者と一緒になって歴史を動かしていく。そこに最大の強みがあり、おそらく、歴史を動かすことによって、戦争のような様々な問題も生活志向の中で転換していけるのではないかということも考えております。そういう意味で、「創造立国」へのマーケティング理念ということを、再度皆さまにご提案をさせていただこうと思っております。

書籍イメージ

2022.11 発行
版形:A4版カラー
本体11,000円(税込み)

「創造立国の時代」ととらえてみました。消費者が求めるものは、価値の創造と増加です。企業が果たすべき時代使命は価値創造であり、暮らし方なのです。価値増加には、マーケティング革新を通じた企業革新が必要であり、目指すべきは価値成長企業です。価値提供ができれば、収益性は結果としてついてきます。マーケティングで新しい時代づくりにのぞみましょう。