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JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2019年5月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとしては、INDEXの数値は2019年に入って以降、50を挟んでの上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出は2019年5月に再び改善に転じた。平均消費性向も3ヶ月ぶりに改善に転じている。預貯金は2017年12月以降一貫して悪化が続いている。
販売関連指標は、2019年4月時点では計10項目中、改善が6項目に対し悪化が4項目となっていたが、2019年5月時点では改善が5項目に対し悪化が5項目となり、双方が拮抗している。前号とは対照的に、2019年4月から5月にかけて、支出水準関連指標では改善の動きがみられたものの、販売関連指標では悪化の動きが進んでいる(図表2)。
公表された2019年5月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出に関して、二人以上のうちの勤労者世帯では2019年5月現在、名目の伸びは5ヶ月連続でプラスとなり、実質の伸びも再びプラスに戻した。伸び率の値も名目と実質ともに大きく上昇している(図表5)。二人以上世帯では、消費支出の伸びは直近の2019年5月時点で名目と実質ともにプラスとなり、伸び率の値も双方とも上昇している。
直近の10大費目別にみると、2019年5月時点で、名目と実質ともに、10大費目全てで伸びはプラスとなっている。2019年4月から5月にかけての推移をみても、名目と実質の双方で、プラスの費目数が大きく増え、マイナスの費目数は大きく減っている(図表6)。以上より、消費支出に関しては、全体でみても10大費目別でみても改善の動きが認められる。
消費者物価指数の動きをみると、2019年2月頃を底に上昇に転じていた物価の伸びは、2019年5月にはプラスを保ちつつも、伸び率の値は総じて低下している(図表7)。販売現場での動きをみると、日常財のうち、商業販売は2019年5月時点で、小売全体の伸びはプラスを保っており、主要な業態別でも一部を除き概ねプラスを保っている。外食は直近の2019年5月時点では全体並びに全ての業態で伸びはプラスを保ち、伸び率の値も総じて上昇している(図表11、図表15)。
他方、耐久財に関しては、新設住宅着工戸数は2019年5月時点で、全体の伸びは2ヶ月連続でマイナスとなっており、カテゴリー別では前月同様、分譲住宅・マンションの伸びの落ち込みが際立っている(図表14)。新車販売は2019年6月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びがマイナスに転じている(図表12)。
家電製品出荷は2019年5月時点で、白物家電の伸びはプラスを保つ一方、黒物家電の伸びは大きくマイナスへと落ち込んでいた(図表13)。2019年7月19日に社団法人電子情報技術産業協会より公表された「民生用電子機器国内出荷統計」(2019年6月分)、並びに、2019年7月23日に社団法人日本電機工業会より公表された「民生用電気機器 国内出荷実績」(2019年6月分)によれば、黒物家電の伸びは財ごとにプラスとマイナスに分かれ、白物家電の伸びは総じてマイナスへ転じている。
雇用環境に関しては、完全失業率は2018年6月以降、2.4%のラインを挟んでの上下動が続いており、直近の2019年5月は横ばいとなっている。有効求人倍率は2018年11月以降、1.63倍の水準で横ばいが続いていた。しかし、直近の2019年5月には1.62倍となり、2018年10月以来7か月ぶりの低下となった(図表8)。
収入環境に関して、「毎月勤労統計」における現金給与の伸びの推移をみると、2019年5月時点で、超過給与額の伸びは一旦プラスに転じた。しかし、現金給与総額と超過給与額の伸びは5ヶ月連続でマイナスとなっている(図表9)。
消費マインドに関しては、消費者態度指数は2019年6月時点で9ヶ月連続の悪化となっている。景気ウォッチャー現状判断DIも2019年5月以降、2ヶ月連続で悪化となっている。消費マインドでは悪化の動きに拍車がかかっている(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは12月以降、マイナスが続いている(図表16)。他方、生産については、鉱工業全体での指数は2018年10月を境に低下傾向に転じた後、2019年3月を境に上昇に転じている。ただし、輸出関連産業と内需関連産業のいずれでも、分野間で好不調に格差がみられる(図表18、図表19、図表20)。
マーケットの動向をみると、2019年6月に入って以降、為替は横ばい傾向で推移している。
株価は、2019年6月初旬から7月初旬にかけて上昇傾向で推移した後、7月半ばにかけて低下傾向で推移し、7月半ば以降は再び反転の動きが見られた(図表21)。ただし、7月25日の終値で21,756円55銭を付けたのをピークに、その後は若干低下の動きがみられる。
長期金利は2019年4月17日に終値で-0.009%を付けて以降、マイナスのまま低下傾向で推移してきた。2019年7月5日に終値で-0.170%を付けたのを境に、若干上昇の動きがみられたが、
2019年7月12日に終値で-0.118%を付けたのをピークに、その後は再び低下傾向で推移している(図表22)。2019年7月26日時点での終値は-0.153%となっている。
総合すると、消費では、消費支出を中心に改善への揺り戻しの動きがみられる。日常材では好調さを保つ一方、耐久財では総じて悪化の動きが鮮明となっており、分野間で好不調の格差が目立っている。雇用環境ではピークアウトの気配が出始めるとともに、収入環境では悪化の動きが続いており、消費マインドでは悪化の動きに拍車がかかっている。
経済全般の動きとして、輸出では悪化の動きに一向に歯止めがかからない。生産は全体では下落の動きが続いた後、若干上昇に転じている。ただし、分野間で好不調に格差がみられ、生産の回復の動きは一枚岩ではない。為替は横ばい傾向で推移し、株価では上昇の動きが度々見られはしたが、相場の天井は重く直近の高値を越えられずにいる。
2019年7月28日の任期満了に伴う第25回参議院議員通常選挙は、2019年7月21日(日)に投開票がなされ、与党が改選議席の過半数越えを果たした。2019年10月からの消費税増税も含め、安倍政権が進めてきた経済諸政策は予定通り実施されることとなるだろう。
景気にも既にピークアウトの兆しが見え始め、遅かれ早かれ出てくると予想される下落方向への動きに対し、2019年10月からの消費税増税は、その勢いに拍車をかけるものとなりかねない。雇用や収入、消費マインドなど消費を取り巻く環境への逆風も、今後更に強まる可能性も懸念される。
これまで頼みの綱だった外需に対する先行き不透明感が高まりつつある中で、今の日本経済が、税率上昇2%分の購買力低下への圧力を跳ね返せるだけの経済成長を、外需抜きで或る程度持続できるのかが問われてくる。この問いへの賛否如何で、これからの消費の行方は分かれてくることとなるだろう。
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