半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2024年01月31日

月例消費レポート 2024年1月号
消費は一進一退の状態から抜け出せず足踏み状態にある-足許での消費マインド改善の後押しに期待
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 名目で一旦プラスに転じた支出全般の伸びも、再びマイナスに落ち込んでいる。

 日常生活財は総じて好調を保つが、耐久財ではカテゴリー内で好不調の格差が鮮明である。

 雇用環境は方向感が定まらないが、収入環境ではプラスの動きが続き、マインドも総じて改善に転じている。

 値上げの悪影響は一部で残るが、輸入物価の伸びはマイナスが続き、国内企業物価の伸びは足許でゼロ、消費者物価の伸びも低下を続けており、この先物価上昇の圧力は緩和されるだろう。

 日銀の金融政策転換はもうしばらく先との見方が優勢だが、イールドカーブの底堅さと上方への揺り戻し傾向を見る限り、緩やかながらもインフレ見通しが織り込まれつつある。

 今後公表予定の、年末・年始の消費関連指標で消費の堅調ぶりが確認されれば、足許での消費マインド改善の動きと相まって、消費復調への足がかりとなりそうだ。

 JMR消費INDEXは2023年12月も前月同様60.0となり、横ばいの状況にある(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、消費支出は9か月連続で悪化が続き、平均消費性向も悪化に転じている。他方、預貯金は7ヶ月連続で消費の増加に寄与する動きを示している。雇用関連の2指標について、有効求人倍率は4ヶ月連続、月間所定外労働時間は5ヶ月連続で悪化となっている。販売関連では、10指標中改善が8指標となった。改善の指標数は前月10月よりも増加し、改善の側の優勢も続いている(図表2)。

 消費支出の伸びは、名目では再びマイナスに落ち込んでいる。実質でも9ヶ月連続のマイナスとなっている(図表4)。

 10大費目別では、11月は名目ではマイナスが6費目となっており、再びマイナスの側が優勢の状況となっている。実質ではマイナスが7費目と、マイナスの側が優勢の状況が続き、マイナスの領域数も前月よりも増えている(図表5)。

 名目と実質の伸びの差は、教養娯楽で+7.5%と最も大きく、実質増減率も+0.4%と僅かなプラスに止まっている。次いで食料では名目と実質の伸びの差は+7.2%となり、実質増減率も-1.2%とマイナスへと落ちこんでいる(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2023年4月以降マイナスが続いている。消費者物価の伸びは2023年11月以降、低下が続いている。国内企業物価の伸びは2022年12月以降低下が続いている。特に2023年9月以降は国内企業物価の伸びが消費者物価の伸びを下回り、直近の2023年12月には伸び率ゼロの状況に至っている(図表6)。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、財とサービスでともに、伸びは低下している(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別でもすべての業態で伸びはプラスとなっている(図表11図表12)。

 外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。

 新車販売は2023年12月時点で、乗用車(普通+小型)は12ヶ月連続のプラスだが、軽乗用車は5ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表13)。

 家電製品出荷については2023年11月時点でも、黒物家電は総じてマイナスである。情報家電でも、ノートPCとスマートフォンはともにマイナスである。白物家電では、ルームエアコンはプラスだがそれ以外はマイナスに沈んでいる(図表14図表15図表16)。黒物家電について1月25日に公表された12月分も総じてマイナスであるが、情報家電については、ノートPCはプラスに転じている。白物家電についても、1月24日に公表された2023年12月分で、洗濯乾燥機以外の3品目でプラスとなっている。

 新設住宅着工戸数は、全体では6ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、持家で24ヶ月連続のマイナス、分譲住宅・一戸建てで13ヶ月連続のマイナスである。分譲住宅・マンションは2023年11月に再びマイナスへと落ちこんだ(図表17)。

 3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、近畿圏でプラスだが、首都圏、中部圏、その他の全ての地域ではマイナスとなっている(図表19)。

 雇用環境については、2023年11月時点で、有効求人倍率は4ヶ月ぶりに低下する一方、失業率は横ばいとなっている(図表8)。

 収入については、現金給与総額は23ヶ月連続プラス、所定内給与額は25ヶ月連続のプラスである。超過給与額は3ヶ月ぶりにプラスに戻した(図表9)。

 消費マインドについては2023年12月時点で、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに上昇に転じている(図表10)。

 マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年に入り、円安・株高の傾向が続いている(図表21)。2024年1月26日時点での終値は、株価は35,751円07銭、円ドル為替レートは1ドル148円16銭である。

 日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2023年10月19日に終値で4.98%を付けたのをピークに、その後は低下傾向にあったが、2023年12月27日に3.79%を付けたのを底に上昇に転じ2024年入り後も上昇傾向が続いている。日本国債10年物金利は2023年11月1日に終値で0.959%を付けたのをピークに、その後は低下傾向が続いていたが、2024年1月15日に0.563%付けたのを底に上昇傾向に転じている(図表22)。2024年1月26日時点での終値は、米国債10年物金利で4.14%、日本国債10年物金利で0.721%である。

 日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2023年11月1日をピークにイールドカーブは下方シフトに転じ、11月30日に一旦上昇するも12月11日を境に再び低下の動きが続いた。2024年1月15日を底に、イールドカーブは再び上昇傾向に転じている(図表23)。その後も11月25日にかけて、上昇傾向を保っている。



 総合すると、消費は一進一退の状態から抜け出せず足踏み状態にある。
 名目では一旦プラスに転じた支出全般の伸びも、名目と実質ともに再びマイナスに落ち込んでいる。
 日常生活財は総じて好調を保っているが、耐久財は、各カテゴリー内で好不調の格差が鮮明になっている。
 雇用環境は方向感が定まらないが、収入環境ではプラスの動きが続き、マインドも総じて改善に転じている。
 値上げの悪影響は教養娯楽と食料で目立ち、特に食料でのダメージは相変わらず大きい。ただし、輸入物価の伸びはマイナスが続き、国内企業物価の伸びは低下を続け足許ではゼロとなった。消費者物価の伸びも総じて低下が続いていることから、この先物価上昇の圧力は一層緩和されていくと見込まれる。
 日銀による金融政策の転換はもうしばらく先との見方が優勢だが、年末年始にかけて低下基調にあった日本のイールドカーブも、1月半ばを底に上方へシフトバックする動きをみせている。イールドカーブの底堅さと上方への揺り戻し傾向を見る限り、緩やかながらもインフレ見通しが織り込まれつつあるようだ。
 今後公表が予定される、年末・年始の消費関連指標の数値から、消費の堅調ぶりが確認されれば、足許での消費マインド改善の動きと相まって、消費復調への足がかりとなりそうだ。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


   

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い
消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い

調査結果を見ると、「ラックス(ユニリーバ)」と「パンテーン(P&G)」が複数の項目で僅差で首位を競り合う結果となった。コロナ禍以降のセルフケアに対する意識の高まりもあって、シャンプー市場では多様化、高付加価値化が進んでいる。ボタニカルやオーガニック、ハニーやアミノ酸などをキーワードに多様なブランドが競うシャンプー市場の今後が注目される。

消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.12.03

24年10月の「新設住宅着工戸数」は6ヶ月連続のマイナス

2024.12.02

企業活動分析 イオン株式会社 24年2月は、営業収益・営業利益ともに過去最高を更新し増収増益

2024.12.02

企業活動分析 宝ホールディングス株式会社 24年3月期は、バイオ事業不調により減収減益

2024.12.02

企業活動分析 TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)  23年12月期は減収減益、事業構造の転換へ

2024.11.29

月例消費レポート 2024年11月号 消費は一旦足踏み状態となっている-政策転換を消費回復への新たな起爆剤に

2024.11.29

24年10月の「ファミリーレストラン売上高」は32ヶ月連続プラス

2024.11.29

24年10月の「ファーストフード売上高」は44ヶ月連続のプラスに

2024.11.28

消費者調査データ No.417 シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い

2024.11.28

消費からみた景気指標 24年9月は6項目が改善

2024.11.27

24年9月の「全国百貨店売上高」は32ヶ月ぶりのマイナス、残暑で季節商品が苦戦

2024.11.27

24年9月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月連続のプラスに

2024.11.27

24年10月の「コンビニエンスストア売上高」は11ヶ月連続のプラスに

2024.11.26

24年9月の「広告売上高」は、5ヶ月連続のプラス

2024.11.25

企業活動分析 LIXILの24年3月期は海外の需要減の影響で減益へ

2024.11.25

企業活動分析 東京ガスの24年3月期は大幅な減収減益

 

2024.11.22

MNEXT 世を騒がす「雪崩」現象の正体―兵庫県知事選の分析

2024.11.22

MNEXT 「消費社会白書」で分析するアメリカ大統領選の接戦予想のはずれ

2024.11.22

MNEXT やはり起こった「雪崩」現象―「岩盤保守の正体」

2024.11.21

24年9月の「商業動態統計調査」は6ヶ月連続のプラス

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.11.22

MNEXT 世を騒がす「雪崩」現象の正体―兵庫県知事選の分析

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area