![](https://www.jmrlsi.co.jp/scto/case/images/top/ubereats.jpg)
フードデリバリーサービスを展開する「ウーバーイーツ(Uber Eats)」が、日本におけるビジネス展開の加速度を上げている。
このサービスは、2016年9月に渋谷区と港区で、約150店のレストランパートナー、1,000名の配達パートナーで事業をスタートした。その後、順次サービスエリアを拡大し、2017年10月にはレストランパートナーは1,000店、配達パートナーは5,000名を突破した。さらに、同12月にはサービスエリアを東京23区全域に拡大した。
2018年に入ると、東京以外の都市部にもサービスエリアを拡大。2019年6月のレストランパートナーは10,000店を超えている。
ウーバーイーツの日本売上は公表されていないが、ウーバージャパンの決算公告をみると、純利益は2017年度の3,059万円から2018年度は1億2,837万円と4.2倍にまで伸長している(ウーバージャパンは商用ライドシェアサービスが認可されていないため、収益の多くはウーバーイーツによるものと推測できる)。
図表1.日本におけるウーバーイーツの事業展開とレストランパートナー数推移
![図表](https://www.jmrlsi.co.jp/scto/case/2019/ubereats-01.png)
ウーバーイーツの急成長の要因は、市場変化の波に乗ってきたことにある。
ウーバーイーツは、ユーザー(注文者)とレストランパートナー、配達パートナーをつなぐ「市場プラットフォーム」といわれるビジネスモデルである。
仕組みは、次のようになっている。ユーザーはアプリをダウンロードし、食べたいメニューのあるレストランを探し、注文する。注文を受けると、ウーバーイーツからレストランに料理依頼が行き、レストランは注文を受託する。同時に、配達パートナーには配達依頼を出し、配達可能なパートナーが依頼を受け、ユーザーの元へ届ける、というものだ。
ユーザーにとっては、様々なレストランの料理を一括して検索できるほか、宅配に対応していない店舗の料理も注文できることがメリットである。一方、レストラン側は顧客開拓と配達人員コストが削減でき、配達パートナー側には好きな時間に働けるというメリットがある。
ユーザーは、配達手数料と店内飲食よりも高い料理代金をウーバーイーツに支払い、レストランには調理代金、配達パートナーには配達代金を支払うというものである。ウーバーイーツの収益は、注文手数料と配達パートナーから得るサービス手数料で成り立っている。
ウーバーイーツのような市場プラットフォームのビジネスモデルが注目されているのは、ネットワーク外部性が働くからだ。「市場プラットフォームは、市場の二者以上の参加者の相互行為及び相互取引を支援する。例えば、一方の参加側の参加者がより多く参加すれば、他方の側の参加者も増えるようになる」というメカニズムが働く。
市場プラットフォーム競争で勝ったプラットフォーマーが高収益になるのは、こうしたネットワーク外部性によって、市場を寡占化、独占化し、価格をコントロールできるからである。
図表2.ウーバーイーツのビジネスモデル ―市場プラットフォームビジネスモデル
![図表](https://www.jmrlsi.co.jp/scto/case/2019/ubereats-02.png)
こうした市場プラットフォーム戦略が実現できた鍵は、デジタル技術の普及である。
スマートフォンの定着で、ウーバーイーツのアプリも一挙に普及。2018年の世界ダウンロード数は7,100万件であった(Apptopia調べ)。アプリをインストールすれば、好きな店や料理をマッチングしてくれ、簡単に注文でき、決済を完了させると到着時刻や配達員の位置まで確認できる。このように、手軽にデリバリーサービスが受けられる利便性がユーザーに支持された。
さらに注目すべき点は、ライドシェアサービスで培ったサービスの仕組みを配達員用アプリに上手く応用していることだ。
例えば、ヒートマップの応用。これは、どの時間帯にどの地域に客が集中しているかを運転手が確認できるものであるが、こうした情報を配達員は確認することができる。どの地域で待機すれば稼げるかがわかる仕組みだ。また、地図上にブースト情報(売上が通常よりも多く獲得できる)が表示され、こうした地域で待機していれば、より多く稼ぐことができる。
ネットを使ったマッチングシステムとデリバリー機能により、プラットフォームビジネスを実現させているのである。
このように、従来なら関与者間の共通基盤を形成することが容易ではなかったことが、ネットの普及と情報技術革新によって可能となっている。
ウーバーイーツの市場プラットフォームビジネスモデルは、まさに市場変化を捉えて成功を収めたケースといえるだろう。
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