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公開日:2023年03月22日

月例消費レポート 2023年3月号
消費は改善の動きが続く-値上げの悪影響に持ちこたえられるかが鍵に
主任研究員 菅野 守

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 支出全般の伸びは上昇を続けている。耐久財では好不調の格差が目立つが、小売販売や外食を中心に、消費は改善の動きが続いている。
 収入環境は改善傾向にあるが、雇用環境とマインドは方向感が定まらない。
 値上げの悪影響は食料を中心に各領域へと広がっているが、そのインパクトは和らぎつつある。
 輸入物価の上昇にもブレーキがかり、企業物価の上昇もピークアウトしつつあるが、消費者物価上昇の動きは暫く続きそうである。
 賃上げの動きや政府の低所得層対策などにより、値上げの悪影響にどこまで持ちこたえられるかが、今後の消費回復の行方を左右することとなるだろう。

 JMR消費INDEXは2023年1月に86.7へと、更に上昇している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、1月は、支出関連3指標のうち、消費支出と平均消費性向の2指標は3ヶ月ぶりに改善へと転じた。販売関連では、改善が10指標中9指標と前月よりも増えている(図表2)。

 消費支出の伸びは、1月も名目でプラスが続いており、伸びの値も上昇している(図表4)。

 10大費目別では、1月は名目ではプラスが6費目、実質では3費目であり、名目でプラスの側が優勢となっている。ただし、その個数はいずれも前月よりも減少している(図表5)。

 食料、交通・通信、その他の消費支出の3費目では、名目の伸びはプラスだが実質の伸びはマイナスである。特に、食料とその他の消費支出では、名目と実質の伸びの差が顕著である(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2022年9月以降、低下が続いている。国内企業物価の伸びも2023年1月は低下している。他方、消費者物価の伸びは引き続き、緩やかな上昇傾向にある(図表6)。

  財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2022年8月以降、財・サービスともに物価の伸びは上昇を続けている(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別では、2023年1月に家電大型専門店とホームセンターはマイナスに転じる一方、残りの4業態はプラスを保っており、業態間で好不調が分かれている(図表11図表12)。

 外食売上は、全体で14ヶ月連続のプラスであり、業態別でも3業態全てで11ヶ月連続のプラスである(図表20)。

 新車販売は、2023年2月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに2ヶ月連続のプラスである(図表13)。

 他方、家電製品出荷については、黒物家電は総じてマイナス、白物家電も概ねマイナスが続いている。情報家電はノートPCが2023年1月に再びマイナスに転じ、スマートフォンもマイナスが続いている(図表14図表15図表16)。

 新設住宅着工戸数は、全体では2023年1月に、4ヶ月ぶりにプラスに転じた。利用関係別では、分譲住宅・マンションは2ヶ月連続でプラスだが、持家と分譲住宅・一戸建てはマイナスが続いている(図表17)。分譲住宅・マンションについては、首都圏と中部圏でプラスが続き、近畿圏もプラスに転じている(図表19)。

 雇用環境については、2023年1月は失業率、有効求人倍率ともに低下しており、方向感は定まらない(図表8)。

 収入は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに13ヶ月連続のプラスである(図表9)。

 消費マインドについては2023年2月現在、景気ウォッチャー現状判断DIは4ヶ月ぶりに上昇に転じたが、消費者態度指数は3ヶ月ぶりにマイナスとなっており、依然として方向感は定まらない(図表10)。

 総合すると、消費は改善の動きが続いている。

 消費支出など支出全般の伸びは上昇を続けている。10大費目別では、名目でプラスの側の優勢が続いている。

 外食でも改善の動きが続いている。小売販売は全体でプラスが続いてはいるが、業態間で好不調が分かれている。

 耐久財では引き続き、分野間で好不調の格差がみられる。特に、家電製品出荷では、悪化の動きが鮮明だ。

 収入環境は改善傾向にあるが、雇用環境とマインドは方向感が定まらない。

 値上げの悪影響は、食料を中心に各領域へと徐々に広がってきてはいるが、そのインパクトは徐々に和らぎつつある。2023年2月から3月上旬にかけて円安基調で推移してきた円ドル為替レートも、足許では円高方向へと転じつつある。輸入物価の上昇にも徐々にブレーキがかかってきており、卸売段階にあたる企業物価の上昇もピークアウトの兆しが見える。

 だが、小売段階への価格転嫁が十分に進むまで、消費者物価上昇の動きは暫くの間は続きそうである。賃上げの動きや政府の低所得層対策などを通じて、値上げによる購買力の低下等にどこまで持ちこたえられるかが、今後の消費回復の行方を左右することとなるだろう。


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特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


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