プラットフォーマーとは、市場プラットフォームを提供する企業や組織を指します。市場プラットフォームとは、市場に参加する売り手、買い手や関与者を結びつける役割や機能のことです(J.ティロール)(参照:MNEXT 眼のつけどころ「高収益な市場プラットフォームをどうつくるか」)。
プラットフォームによって形成された市場は、「二面市場(two-sided market)」あるいは、一般化して、「多面市場(multi-sided markets)」とも呼ばれます。売り手と買い手がプラットフォームを介して結びつくので、売り手とプラットフォーマーが取引する市場と、買い手とプラットフォーマーが取引する市場というように、複数に分かれるからです。
市場プラットフォームでは、参加者間に相互作用が働きます。同じ側の参加者、例えば売り手であれば売り手同士との間で働く場合には「直接的ネットワーク外部性(direct network externality)」、異なる側の参加者、例えば売り手と買い手との間で働く場合には「間接的ネットワーク外部性(indirect network externality)」と言われます。こうしたネットワーク外部性が強く働くため、特定のプラットフォームが独占的になりやすく、その結果、プラットフォーマーが「超過利潤」を得やすくなります。ものづくりなどとは異なるビジネスモデルとして、ネットの領域だけでなくリアルの世界でも注目されています。
遡るとJCBなどのクレジットカード会社は、売り手である加盟店と買い手である消費者の双方に対して、決済システムという機能(=市場プラットフォーム)を提供するプラットフォーマーです。カード会社の決済システムによって加盟店とカード会社、カード会社と消費者という二面が結びつく二面市場を形成しています。
パソコンやスマホのOSは、ユーザーと、パソコンなどのハードメーカー、アプリケーションソフト開発者(企業)やコンテンツの提供者といった複数の関与者を結びつける役割をもった市場プラットフォームといえます。マイクロソフトやアップル社はOSを提供するプラットフォーマーです。
配車ビジネスを展開するウーバーもプラットフォーマーであり、個人の運転手と利用者を結びつける配車システムと決済システムを、市場プラットフォームとして提供しています。創業からわずか数年で世界の主要都市に進出し、従来のタクシー業界を脅かす存在になっています。
GAFAと呼ばれるGoogle, Amazon, Facebook, Appleの4社はプラットフォーマーの代表的な存在で、膨大な個人データを蓄積し活用することで、さらに市場支配力を強めています。同時に情報操作や、データ流出、第三者への提供などによるリスクも広く認識されるようになりました(参照:MNEXT 眼のつけどころ「世界情報寡占企業からデータ提供代がもらえる日-『グーグル後の生活』と等価交換」)。
昨今は市場の独占とデータ独占に対する批判的な立場から、2018年4月にEUが先駆けてプラットフォーマーに対して規制を強化(GDRP:一般データ保護規則など)しています。プラットフォーマーの影響力が大きくなるほど、その社会的責任も大きくなっているといえます。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ 高収益な市場プラットフォームをどうつくるか(2018年)
- MNEXT 眼のつけどころ 世界情報寡占企業からデータ提供代がもらえる日-「グーグル後の生活」と等価交換(2018年)
- MNEXT 市場成熟を乗り越えるビジネスモデルをどうつくるか ―市場プラットフォーム戦略の論理と事例(2013年)
- MNEXT 顧客志向の高収益ビジネスモデルをどうつくるか? ―市場プラットフォーム戦略の論理と事例(2013年)
- MNEXT デジタルコンバージェンス時代の新しい競争優位づくり ─プラットフォーム戦略(2005年)
- 戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ(2019年)
- 戦略ケース 自動車メーカーの生き残り戦略 ―移動システム産業で成功するためには(2018年)
- JMRからの提案 キャッシュレス競争の勝者は?―プラットフォーム視点で分析(2019年)
- JMRからの提案 流通業と2サイドプラットフォーム(2007年)
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