半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2022年12月15日

月例消費レポート 2022年12月号
消費は値上げの悪影響が続く中で、底堅さを保っている
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 支出全般はプラスを保っている。10大費目別でみてもプラスの側が圧倒的に優勢である。小売販売はプラスを保ち、外食でも改善の動きが続く。耐久財では分野間で好不調の格差がみられる。値上げの悪影響は深まりつつあるが、足許では消費の健闘ぶりが光っている。
 雇用環境と収入環境は改善基調を保っている一方、マインドは悪化が鮮明となっている。
 円ドル為替相場は円高基調へと反転しており、このまま落ち着いていけば輸入物価上昇の動きも収まり国内物価上昇の見通しも和らぐと期待される。
 ただし、値上げの悪影響の深まりとともに、消費者は実質での収入の落ち込みを実感している。今後、節約姿勢が強まりトレーディング・ダウンの動きが台頭した場合、消費はマイナスに転じるおそれもある。

 JMR消費INDEXは2022年10月に80.0となり、2ヶ月連続で上昇した。近似曲線は、上昇トレンドを維持している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、10月は、支出関連では3指標中、預貯金を除く2指標で改善が続いている。販売関連では、10指標中8指標が改善となった。食料品売上と家具・インテリア売上が改善に転じる一方、新設住宅着工戸数は悪化に転じている(図表2)。

 消費支出の伸びは2022年10月時点で名目と実質ともにプラスだが、伸びの値は2ヶ月連続で低下しており、実質はかろうじてプラスを保っている(図表4)。

 10大費目別では、名目ではプラスが9費目、実質ではプラスが8費目を占めており、プラスの側が圧倒的に優勢である(図表5)。

 食料は名目ではプラスだが実質ではマイナスとなっており、光熱・水道のプラス幅が名目では17%と極めて高いが実質では2%程度に止まっている。その他の消費支出は名目の+4.5%に対し、実質では+0.1%とかろうじてプラスを保っている。家具・家事用品でも、プラス幅が名目の12%に対し実質では5%を割り込む水準へと大幅に圧縮されている。加えて住居でも、プラス幅が名目の10%に対し実質では6%へと圧縮されている。カテゴリーの広がりとそのダメージの大きさの両面で、値上げの悪影響は一層深まりつつある(図表5)。

 販売現場では、小売業全体の売上は8ヶ月連続のプラスである。

 チャネル別では、2022年10月にホームセンターが12ヶ月ぶりにプラスに転じたことで、全ての業態でプラスとなっている(図表9図表10)。

 外食売上は、全体では11ヶ月連続のプラスである。

 業態別でも、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋の3業態全てで、8ヶ月連続のプラスである(図表18)。

 新車販売では、2022年11月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに3ヶ月連続のプラスである(図表11)。

 家電製品出荷については、白物家電は概ねプラスが続いている。

 他方、黒物家電は総じてマイナスとなっている。情報家電では、ノートPCは3ヶ月連続のプラスだが、スマートフォンはマイナスに落ち込んでいる(図表12図表13図表14)。

 新設住宅着工戸数は、3ヶ月ぶりにマイナスとなった。

 利用関係別では、持家はマイナスが続いている一方、分譲住宅・一戸建てと分譲住宅・マンションはともにプラスを保っている(図表15)。

 三大都市圏別の推移をみると、持家は、全ての地域でマイナスである。マンションは、首都圏でプラスが続いており、近畿圏でもプラスに転じている(図表16図表17)。

 雇用環境は、完全失業率が横ばいとなる一方、有効求人倍率は上昇を続けており、悪化の兆しはみられない(図表6

 収入は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに10ヶ月連続のプラスであるが、実質ベースでマイナスの状況からは抜け出せていない(図表7)。

 消費マインドについては、2022年11月に景気ウォッチャー現状判断DIが低下するとともに、消費者態度指数も低下が続いており、マインドの悪化が鮮明である(図表8)。

 総合すると、消費は値上げの悪影響が続く中で、底堅さを保っている。

 消費支出など支出全般はプラスを保っている。

 10大費目別でみても、名目と実質の双方で、プラスの側が圧倒的に優勢である。

 小売販売は総じてプラスを保ち、外食でも改善の動きが続いている。

 ただし耐久財では、分野間で好不調の格差がみられる。新車販売はプラスを保ち、白物家電では改善の動きが続いているが、他方で黒物家電や情報家電の動きは冴えない。新設住宅着工では引き続き、首都圏でのマンションの改善が際立つ。

 カテゴリーの広がりとそのダメージの大きさの両面で、値上げの悪影響は深まりつつあるが、足許ではむしろ、消費の健闘ぶりが光っている。

 雇用環境と収入環境は改善基調を保っている一方、マインドは悪化が鮮明となっている。

 円ドル為替相場は円高基調へと反転しており、直近では137円前後で推移している。これまでの円安基調の下での輸入物価の上昇分がまだ国内物価に反映しきれていないのは確かだが、円ドル為替相場がこのまま落ち着いていけば、輸入物価上昇の動きも一旦収まり、国内物価上昇の見通しも徐々に和らいでくるものと期待される。

 ただし、値上げの悪影響の深まりとともに、「同じ金額で同じものを今までと同じ分量では買えなくなった」として、消費者は実質ベースでの収入の落ち込みを実感し始めている。

 今後、消費者の節約姿勢の強まりに伴い、必要最低限の量を購入単価を切り下げて購入し支出金額を絞っていくという、トレーディング・ダウンの動きが台頭してきた場合、消費はマイナスに転じるおそれもある。

 実質ベースでの収入のマイナス状況から脱却するには、一時的な物価上昇手当や短期的な賃金上昇などの施策では不十分である。企業の収益見通しと労働者の収入見通しのどちらも、将来に向けて持続的改善を見込める手立てが、重要となってくる。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺
消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺

調査結果をみると、「カップヌードル」が、ほぼ全員に認知があり、4分の3に購入経験があり、半数弱が3ヶ月以内に購入、と圧倒的な強さをみせるなど、ロングセラーブランドへの上位集中が鮮明な結果となった。背景には、昨今の値上げ続きで強まる消費者の節約志向があると考えられる。「失敗したくない」という意識が安心感のあるブランドに向かっているのだ。

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

チョコレート商品の値上げが続くなか、成分や機能を訴求したチョコレートが伸びている。今回はどのような人がどんな理由でチョコレートを食べているのか調査した。

成長市場を探せ キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。  キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)
成長市場を探せ キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。 キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)

キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

2025.04.17

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

2025.04.25

メンテナンスのお知らせ

新着記事

2025.04.25

成長市場を探せ 少子化ものともせず、拡大する学習塾市場(2025年)

 

2025.04.24

25年2月の「広告売上高」は、10ヶ月連続のプラス

2025.04.23

25年3月の「コンビニエンスストア売上高」は2ヶ月ぶりのプラスに

2025.04.22

トランプ関税の正義、賢愚、そして帰結 - ポストグロ-バル経済と自由貿易体制(上編)

 

2025.04.22

25年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2025.04.21

ポートフォリオ戦略からダイナミック・ポートフォリオ分析で統合経営へ

2025.04.21

企業活動分析 2024年12月期のアルファベット(Google)は、検索、AIとも2桁増で過去最高更新

2025.04.18

消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺

2025.04.17

25年2月の「商業動態統計調査」は11ヶ月連続のプラス

2025.04.16

25年3月の「景気の現状判断」は13ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.04.16

25年3月の「景気の先行き判断」は7ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.04.15

25年2月の「消費支出」は4ヶ月ぶりのマイナスに

2025.04.14

提言論文 ブランド価値ランキング - 価値実現率の低い選択的耐久財

2025.04.14

企業活動分析 アップルの2024年9月期は、サービス事業過去最高で増収増益

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

3位 2025.04.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

4位 2024.10.24

MNEXT 日本を揺るがす「雪崩現象」―「岩盤保守」の正体

5位 2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area