半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2021年01月06日

月例消費レポート 2021年1月号
消費は改善に転じるも、足許では勢いにブレーキ
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

消費に関する各種経済指標では、改善に転じる動きがみられたが、足許では、その勢いに一旦ブレーキがかかっている。雇用・収入環境では、改善の動きが認められるものの、消費マインドでは悪化の気配がみられる。

 JMR消費INDEXは13ヶ月ぶりに50超の水準へ戻している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出と平均消費性向は2019年9月以来13ヶ月ぶりに改善となった。(チェーンストア売上高を除いた)販売関連10指標のうち、改善となったものは、2020年9月時点では2指標であったが、10月には6指標へと増加した。11月については、現段階で判明している9指標のうち、5指標が改善となっている(図表2)。

 2020年10月の消費支出の伸びは、名目と実質ともにプラスに転じた。名目と実質の両方がプラスとなったのは、2019年9月以来13ヶ月ぶりである(図表4)。

 10大費目別では、2020年10月の名目増減率は10費目中7費目がプラス、実質増減率は10費目中8費目がプラスとなった。前月9月は、名目と実質ともにマイナスの費目が10費目中9費目であり、マイナスの側が圧倒的優勢となっていた。10月は、プラスの側が優勢へと転じている(図表5)。

 販売現場では、日常財のうち、小売業全体の売上は2020年10月以降、プラスに転じている。スーパーは10月以降プラスを保っているが、コンビニエンスストアと百貨店はマイナスが続いている。伸び率は、小売業全体、スーパー、百貨店で、10月をピークに11月は低下に転じている(図表9)。

 外食の売上は、全体ではマイナスが続いている。ファーストフードは2020年10月以降プラスを保っているが、ファミリーレストランとパブ・居酒屋はマイナスが続いている。伸び率は、これまで全体でも業態別でも上昇傾向にあったが、10月をピークに11月は低下に転じている(図表13)。

 耐久財のうち、新設住宅着工戸数は、全体ではマイナスが続いているが、持家と分譲住宅・マンションでは2020年11月にプラスに転じている。伸び率は、全体でもカテゴリー別でも、11月時点で上昇している(図表12)。

 家電製品出荷は、2020年10月以降、概ねプラスを保っている。ただし、伸び率は11月時点で、一部を除き低下に転じている(図表11)。

 新車販売の伸びは2020年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、プラスに転じている。ただし伸び率は、2020年10月をピークに11月は低下している(図表10)。

 雇用環境は、改善に転じている。有効求人倍率は2020年9月を底に上昇を続けている。完全失業率は10月をピークに11月は低下に転じている(図表6)。

 収入環境では、所定内給与額の伸びは2020年9月以降プラスとなっている。しかし、現金給与総額は2020年4月以降、超過給与の伸びは2019年9月以降、マイナスが続いている。伸び率は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与のいずれも、上昇傾向にある(図表7)。

 消費マインドについては、消費者態度指数は改善の動きが続いているが、景気ウォッチャー現状判断DIは2020年10月をピークに11月は低下に転じている(図表8)。

 総合すると、消費は、2020年10月を境に改善に転じる動きが目立っているが、直近の11月時点ではその勢いに一旦ブレーキがかかっている。

 日常財でも耐久財でも、2020年10月以降、総じて改善の動きがみられる。ただし伸び率は、直近の11月時点で低下の動きが目立っている。

 雇用環境と収入環境はともに、改善の動きが認められる。消費マインドはこれまで、改善の動きがほぼ一貫して続いてきたが、足許では一旦、改善の勢いの鈍化やマインドの悪化が顕在化している。

 内閣府が2020年12月22日に公表した2020年12月分の月例経済報告によると、景気の現状判断は据え置きとなったが、個人消費については3か月ぶりに判断が下方修正された。個人消費の下方修正は、その前後で公表されている2020年11月時点での消費関連指標の伸び悩みを先取りした格好となっている。

 2020年12月に入って以降、コロナウイルス新規陽性者数の上昇が続いてきた。飲食店への営業時間短縮の要請も、東京都や大阪府での期間延長にとどまらず、全国各地へと広がった。GoToトラベルなどの各種キャンペーンも、一時停止となった。

 2020年12月31日に新規陽性者数が東京都で初の1,000人超え、全国でも初の4,000人超えとなったことを受けて、2021年1月2日には首都圏1都3県の知事から政府に対し緊急事態宣言再発出の要請が行われた。一部報道では、早ければ1月7日にも、政府より緊急事態宣言が発出される見通しといわれている。

 各種経済指標で悪化の動きが顕著になるとすれば、恐らく2020年12月分あたりからと見込まれ、公表数値として明らかとなるのは概ね2021年1月後半以降となるだろう。1月前半で明らかとなる消費マインド関連指標で、どの程度のダメージが出ているかによって、景気や消費の先行き展望も、大きく変わってくることとなりそうだ。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

特集:コロナ禍の消費を読む


参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

新着記事

2025.03.18

25年2月の「景気の先行き判断」は6ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.03.18

25年2月の「景気の現状判断」は12ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.03.17

なぜ、「外国人」社長が大手企業で多くなるのか - コーポレートガバナンスの罠

2025.03.17

企業活動分析 ファーストリテイリング24年8月期は売上・営業利益ともに4期連続で過去最高を達成

2025.03.14

日本のブランド危機と再生戦略 - トライアドマーケティング

2025.03.13

25年1月の「消費支出」は3ヶ月連続のプラスに

2025.03.12

25年1月の「家計収入」は4ヶ月ぶりのマイナス

2025.03.11

25年1月の「現金給与総額」は37ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.03.10

値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機

2025.03.10

企業活動分析 ソニーグループの24年3月期は主力のゲーム&ネットワークサービスが大幅な増収に寄与するも金融部門の減益が響き増収減益に

2025.03.07

消費者調査データ RTD(2025年3月版) 「氷結」、「ほろよい」の競り合い続く アサヒの新顔は高いリピート意向

2025.03.06

25年1月は「完全失業率」は横ばい、「有効求人倍率」は改善

2025.03.05

25年2月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2025.03.04

関税政策に日本企業はどう対応すべきか

2025.03.04

25年1月の「新設住宅着工戸数」は9ヶ月連続のマイナス

2025.03.03

企業活動分析 NECの24年3月期は国内がけん引し増収増益

2025.02.28

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 清貧・ゆとり世代が消費を牽引!賞与の使い道は?

 

2025.02.28

消費からみた景気指標 24年12月は7項目が改善

2025.02.28

25年1月の「ファミリーレストラン売上高」は35ヶ月連続プラス

 

2025.02.28

25年1月の「ファーストフード売上高」は47ヶ月連続のプラスに

2025.02.27

トランプを支えるネット世論 - 正体は「ルサンチマン」

  

2025.02.27

減税政策は人気とりのバラマキ政策か

2025.02.27

月例消費レポート 2025年2月号 消費は改善の動きが続いている - 物価や金利の上昇ペース次第で消費回復のブレーキとなるおそれも

2025.02.26

25年1月の「全国百貨店売上高」は3ヶ月連続のプラスに

  

週間アクセスランキング

1位 2025.03.04

関税政策に日本企業はどう対応すべきか

2位 2025.02.27

減税政策は人気とりのバラマキ政策か

3位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

4位 2025.03.10

値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area