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公開日:2020年12月03日

西橋裕三氏による「コロナな時代のココロ」の解釈
ネクスト戦略ワークショップ アナザーストーリー
当社顧問で、コピーライターの西橋裕三氏に「消費社会白書2021 コロナな時代のココロ」をテーマとして、変化する社会と消費者について独自の視点で解釈してもらいました。
顧問 西橋裕三




 コロナというものをどうとらえ、どのように向き合っていくべきか。「銃・病原菌・鉄」(草思社文庫)の著者で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校地理学科教授のジャレド・ダイアモンドは、次のように述べています。

「コロナは真の危機ではない。この経験を通して人類が一致団結できるかどうかが試されている。真の危機はその先にある」

 歴史を振り返ると、パンデミックへの人間の向き合い方は、今も昔も大差がないことがわかります。「ロビンソン・クルーソー」の著者としても知られる、ダニエル・デフォーは「ペストの記憶」の中で、次のように記述しています。

「ロンドン市民は軽はずみな勇気を発揮してもはや自分の身も疫病も一切気にしなくなったので、誰もペストのことを普通の発熱と同じくらい、いや事実はそれ以上に警戒しなくなった」

「思い上がった者たちは最初の喜びにどっぷり浸かっていて死亡週報の数字がどんどん減るのを見る嬉しさに圧倒されていたので、新たな恐怖を語る声が決して届くことはなく、死の苦しみが去ったと信じるばかりで、なにも聞く耳を持たなかった」

 このように、1665年当時のロンドンの状況は、今の日本と酷似しています。注目すべきは、コロナに感染することによる生命への危機感が、生存本能を目覚めさせたことです。このような状況下で、種としてとるべき行動は「stay & watch」です。これが、種を絶やさない内知でもあります。また、個としては「study & adaptation」です。これによって、新局面へ対応していきます。

 今回のコロナウイルスの感染拡大によって、我々は何を学び、そこからどう行動するかが問われています。それは、ゼロベースで考え直すことです。「我々は何で生きているのか」ということを自分自身に問い、さらに突き詰めようとします。





 こういった認識の上で、今生まれつつある状況を整理したいと思います。

 「間違った情報は生存を脅かす」ことから、信頼できる情報ソースへの希求が強まっています。さらに、我々自身の情報リテラシーの向上も必要です。ネットの肥大化、SNS情報依存はどんどん進んでいます。ポスト・トゥルースをめぐって議論が起こる一方で、フェイク・ニュースの拡散には歯止めがかかりません。

 この両方の動きが同時に進行し、せめぎ合いが続いています。そのことによって、我々は「自分にとって何が正しいか」を問い直す姿勢、自分なりの判断基準の軸への希求が強まっています。





 さらに、今までにない行動様式が生まれています。

 ひとつは、「リアル&ネット。デジタル&アナログの併用、使い分け」です。

  • リモートワークとリアル出勤の使い分け
  • ネット情報を確認するための来店&購入
  • オンラインライブとリアルライブの併存
  • ひとりキャンプの動画視聴とリアルキャンプ

 具体的には、以上のようなことが挙げられます。別の言い方をすれば、「リアルとネットの入れ子行動」「リアルとバーチャルの行き来」といったところでしょう。これらの動きは、すでに「一過性ではないニューノーマル」といえそうです。

 次に、「バーチャルとリアルの関係性の逆転」です。

  • リアル店舗で確認してからネットで購入
  • 人の話をネットで見て信用 → 行動
  • 漫画、ゲームキャラクターがリアルに反映
  • 思考パターン、行動が漫画化、短絡化

 などが挙げられます。

 また、「一億総『通』」といった、初歩的な情報では気が済まない消費者が増えてきています。なかには、付加価値を自分で付ける「Customizing Customer」というべき消費者も登場しています。

 さらに、「自分で作る」という消費者も現れています。いわゆるDIY女子やワークマン女子などです。

 こうした動きは、自分のアイデンティティの発露に繋がるものです。その意味では、「i.d化」と呼ぶことができるでしょう。

 時間経過とともに、コロナへの対応方法も変化が起こっています。当初の人との接触自体を断つソーシャルディスタンスから、物理的に適切な距離をとるフィジカルディスタンスへと変わっています。また、スーパーコンピューターによる飛沫拡散パターンの解析など、目に見えない脅威に対する可視化や科学的態度も出てきています。

 ここで大事なのは、正しい恐れ方をわきまえることです。状況に合わせた臨機応変な対応、ローカルルールの確立が求められます。

 このような対応方法の変化は、日々の経験や行動の積み重ねの上に成り立っています。客と店が互いに経験値を蓄積していくことが、必要となります。

 その意味で、「裏付けや自覚のある自分ルールの確立」が、大切になります。

 さらに、コロナの経験は、我々の死生観にも影響していると考えられます。コロナの感染拡大で、世界中で多くの感染者や死者が出ました。そのことで、人の死が顕在化し、より意識されるようになりました。

 そのことは、「モータル(死すべき)な存在としての人間」を再認識させ、さらには「有限性の認識」に思いを至らせました。「限りない発展」「終わりなき成長」という近代資本主義に、限界を突きつけたといえるでしょう。





 今後は、「共生」と「成熟」の哲学がより重要となるはずです。「直線(リニア)から円環(サイクル)へ」の発想の転換が求められます。

 今問われていることは、マクロからミクロに渡る生存知とその共有です。


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著者プロフィール

西橋裕三

当社顧問。
1958年大阪生まれ。早稲田大学法学部卒業。1982年、大手広告代理店入社。
2018年同退社。カンヌ国際広告賞金賞、ACC賞ほか多数受賞。
「トヨタ/エスティマ 天才タマゴ」「湖池屋カラムーチョ」「味の素 ちゃんとちゃんとシリーズ」など。現在フリーのコピーライターおよびイラストレーター。TCC(東京コピーライターズクラブ)会員。
著書「空想絶滅図鑑」。


ネクスト戦略ワークショップ講演録


特集:コロナ禍の消費を読む


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