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公開日:2019年10月30日

「消費社会白書2020」特別コンテンツ
団塊3代の消費物語
―中流家庭の成長と成熟、そして、豊潤生活へ
代表取締役社長 松田久一



 現代は、どれだけ最新家電を揃え、都心の高層マンションに住み、高級輸入車に乗っても、自慢できなくなった。ポスト消費社会だ。どんなスポーツイベントに行ったのか、海外旅行でどんな体験をしたのか、どんなコンサートに行ったのか、どんなパーソナルトレーナーに指導してもらっているのか。自らの固有体験が、自らを彩る財となり、ライフスタイルになっている。豊かで精神的な潤いのある生活だ。消費支出は、「必需支出」から「選択支出」へ進み、現在、成長しているのは「経験支出」である。

 この消費スタイルにどう行き着いたのか。ここでは、戦後史の歴史的主役を演じてきた団塊の世代の3代に焦点を当ててみる。


戦争が生んだ戦争を知らない世代―団塊の世代

 1945(昭和20)年、日本は「先の大戦」に敗れて、焼け野原になるとともに、戦地に出征していた大勢の独身の若者達が帰国した。彼らの多くは、ほぼ同時期に結婚し、家族を形成した。そして、1946年~1949年に多くの子供が生まれた。人口ピラミッドをみると、この4年間は人口が多く、「ひとつの塊」になっていることから、この周辺生年層が、味気ない呼称で、同世代には評判のよくない「団塊の世代」と呼ばれるようになった。戦争が生んだ団塊の世代の物語はここから始まる。


団塊の世代が中流家庭と大衆消費を生んだ

 この団塊の世代が、日本の戦後の大衆消費を創造し、中流家庭を大勢化する。現在年齢は、70~73才であり、もうすぐ「後期高齢層」となる。田舎で、寡黙で頑固な父親とやさしい母に、兄弟姉妹3人以上で育てられた。学校を卒業し、進学や就職で、東京などの都会に出て、ホワイトカラーや職人となり、親の所属階層よりもひとつ上の「中流層」に移動した。この階層移動が、社会の大勢的な変化となり、巨大な大衆消費市場が形成された。

 彼らが築いたのが、両親と子供だけの核家族の中流家庭であり、専業主婦に家事と育児を委ね、分業する暮らしである。

 世代人口数が大きな影響を与える市場は多い。彼らのライフステージが変わるごとに、様々な消費関連ブームを生んだ。赤ちゃんブーム、激しい受験競争、オーディオブーム、結婚ブーム、「ニューファミリー」などである。

 衣料ファッションでは、カジュアルの象徴としての「リーバイス」などのジーンズ、日清の「カップヌードル」、「マクドナルド」などのファーストフード、「コカ・コーラ」などのソフトドリンク、ホンダの低公害車の「シビック」を最初に受け入れ、プレハブ住宅の「ミサワホーム」などの住宅ブランドから「ナショナル(パナソニック)」、「資生堂」、「花王」、「ライオン」などのメーカーブランドを確立した。そして、彼らとともに成長した流通業態が、「主婦の店」(ダイエー)であり、流通革命を担った総合量販店(GMS)である。





団塊ジュニアは中流家庭の成熟と嫌消費への先がけ

 団塊の世代が、結婚し、24-28年後に子供をもうけて誕生するのが、1970-1974年生まれの団塊ジュニアである。やはり、人口ピラミッドに「塊」をみることができる。この団塊の世代の子供達の現在の年齢は、45-49才であり、人生の成熟期である。

 彼らは、団塊の世代の「ほとんど家にいない父親と不機嫌な母親」のもとで、中流家庭の「一人っ子」として育った。その環境は、便利家電、クルマ、持ち家で彩られた中流のライフスタイルだった。そして、成人前に、経済の「宴」である「物的財」のバブル経済を経験し、30才を過ぎて、バブル後の「清貧思想」への価値転換を経験している。

 彼らは、バブル崩壊前に職を得ているので、就職には苦労しなかったが、「普通のサラリーマン」として「社畜」になることを嫌い、自発的に「フリーター」の道を選んだ人も多い。これは、1980年代生まれの「バブル後世代」とは大きく異なる。

 この世代は、バブル経済下では女子高校生までインポートブランドの財布やアクセサリーが普及したことを経験している。従って、彼らは、ブランド信仰に疑いを持ち、嫌い、様々な市場で、マスブランド離れを志向し、メジャーブランドの選択を回避した。彼らが30代の1990年代は、メジャーブランドの崩壊期でもあった。代わりに、「ブランドではないブランド」である「無印良品」を支持し、コンビニエンスストアの成長をささえた。この団塊ジュニア世代は、消費によって欲望を解放するスタイルに疑義を持ち、それが「バブル後世代」の「嫌消費」性向に引き継がれることになった。そして、40代では、ファッションを日用品化し、機能や品質で差別化するユニクロの拡大顧客層となった。


団塊3代目はひとり家族と「豊潤生活」をめざす

 団塊ジュニアの子供達が、生まれるのが、彼らが70年代に誕生してから約30年後である。つまり、2000-2004年に「団塊の3代目」世代として生まれた現在年齢は、15-19才である。21世紀に生まれた日本の「ミレニアム世代」である。彼らの世代を、人口ピラミッドでみると、もはや顕著な「塊」はない。

 団塊ジュニアの初婚年齢は、男女とともに高学歴化し、30才を超え、未婚者も多い。ライフステージ選択も多様化し、団塊の世代ほどに、結婚、子育て、子手離れのように標準化されていない。従って、結婚も出産も集中しないので塊はなくなった。

 彼らが育った家庭は、「家族」を大切にする価値観で占められるが、実態は「ひとり家族」に近い。自由な父母に育てられ、共働きで、叔母さんや叔父さんは独身というケースも多い。

 団塊ジュニアの両親は、自分が育てられた「中流家庭」を守ることに懸命である。

 ふだんの食事は、みんなが忙しいので、バラバラの時間に、めいめいが好きな食事をとることが多い。しかし、家族とは「ネット」で結ばれている。ひとりでも家族という絆意識が強い。

 団塊3代目は、これから成人へと成長していく過程だが、団塊世代や団塊ジュニアとは違う価値観がある。それは、夢を追いかけ、あきらめずに、日々の中で実現しようとする欲望である。彼らは、経済のグローバル化が進み、アベノミクス経済で10代を経験し、社会の再階層化を熟知している。しかし、将来不安よりも、自らの夢を自分の力で開こうとする志向性が強い。

 彼らの消費は、これから開花する。その方向性は、最近の高校生の「三種の神器」に象徴される。30年前の団塊ジュニアが、10代後半の時、女子高生の「三種の神器」がもてはやされた時代があった。それは、「ポケベル、プリクラ写真、口紅」だった。1990年代前半まだポケベルだった。すべてが「物的な財」である。現在の女子高校生は、「LINE、インスタ、TikTok」である。つまり、三つとも、スマホの無料アプリであり、人と人が繋がる機能を持ち、情報コンテンツをベースとするものである。物的な財ではなく、経験をもとに繋がる、直接的な対価性のない無料の財である。高校生が支払っているのは、通信サービス代である。

 現在の彼らの消費は、情報コンテンツやネットでの多様な経験で彩られている。どれだけリッチで話題にできる情報コンテンツに出会えるが、彼らの豊かさである。このスタイルは、現在の「中の中」の人が、「中の下」に落ちることを懸念しながら、あわよくば目指そうとしている「中の上」のライフスタイルでもある。


注: 世代には、親子的な系譜的な世代と20-30年という期間での社会的なものがある。ここでの団塊3世代の定義は、社会的な世代であり、およそ20年以上の区分を想定している。従って、実際の系譜的ではない、社会的な親子関係を想定している。


参考文献

JMR生活総合研究所「消費社会白書」


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書籍イメージ

長く停滞していた日本の消費が、いま再び経済成長の牽引役として動き始めている。ようやく日本の消費は、「もはやバブル後ではない」と言える新たな局面に入った。



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