
コロナ禍で、消費動向が変化しています。その変化をいち早く把握し、ビジネスに役立てるために、官公庁などが発表する統計データから気になる動向をご紹介します。
1.旅行、イベント、外食関連への支出は不振を極める
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年3月以降下落の動きに拍車がかかった選択的支出の中で、特に落ち込みが顕著だった品目が、外国パック旅行費、宿泊料、映画・演劇等入場料などだ。
選択的支出の品目のうち、2019年3月から5月の間の月あたり支出金額が500円以上のものについて、2020年3月から5月にかけての前年同月比伸び率の値が3ヶ月連続で-30%以下のものを選び出し、2020年5月時点での前年同月比伸び率のマイナス幅の大きい順に列挙した(図表1)。
図表1.最近3か月間で支出減少が顕著な選択的支出の品目
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選別された計14項目のうち、「外国パック旅行費」「宿泊料」「映画・演劇等入場料」「国内パック旅行費」「飲酒代」「鉄道運賃」「幼児教育費用」の7項目は、3ヶ月連続で-50%以下となっている。特に、前年同月比減少率の上位5項目は、2020年4月と5月に、-90%近く、またはそれ以上のマイナス幅を記録している。
旅行、イベント、外食など外出を伴う余暇への支出の激減ぶりは、コロナ禍で、まさに「需要蒸発」ともいうべき状況だ。
2.選択的支出でも宅内余暇と住環境の充実のための支出は好調
悪化が進む選択的支出の中で、2020年3月から5月の間に、逆に支出が伸び続けている品目もある。
2020年3月から5月の前年同月比伸び率が3ヶ月連続で+15%以上のものを選び出し、2020年5月時点の前年同月比伸び率の絶対値のプラス幅の大きい順に列挙した(図表2)。
図表2.最近3か月間で支出増加が顕著な選択的支出の品目ログインして図表をみる
選別された計11項目のうち、「ゲームソフト等」は3ヶ月連続で+100%以上となっている。「家事代行料」「ビデオレコーダー・プレイヤー」「テレビゲーム機」「植木・庭手入れ代」の4項目は、2020年3月からの3か月中2か月間、+70%以上のプラス幅を記録している。
「家事代行料」とは、「炊事,洗濯,室内,庭の掃除など通常の家事を世帯員以外の者に行わせ,そのサービスの対価として支払った賃金及び料金」を指し、ホームヘルパー、ハウスキーパー、ベビーシッター、ハウスクリーニングなども含まれる。「植木・庭手入れ代」とは、「植木や庭の維持,管理に必要なサービスに関するもの」を指す。具体的には、庭木のせん定代、庭木薬剤散布代、造園代金などだ。
選択的支出の中で特に伸びているこれら5項目のうち、「ゲームソフト等」「ビデオレコーダー・プレイヤー」「テレビゲーム機」の3項目は、コンテンツ関連のソフトやハードであり、家で過ごす時間を充実させるためのものといえる。「家事代行料」と「植木・庭手入れ代」は、家事を外部化するための支出であり、自宅の住環境の整備に関心を持つ人が増えているということができるだろう。
コロナ禍で、不振が続くと予想される選択的支出の中でも、宅内余暇と住環境の充実のための支出は、高い伸びを続けている。コロナウイルス感染再拡大の動きが出てきている中でも、こうした財・サービスへの需要は、「必需支出」として、引き続き底堅さを保つと予想される。
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