支出全般の伸びは名目と実質でマイナスの状態が続いている。
好不調の格差は耐久財では目立っており、日常生活財でも時折見受けられる。
収入環境は底堅さを保っており、雇用環境やマインドの悪化にも歯止めがかかりつつある。
物価上昇の動きは落ち着いており、消費への悪影響も軽微になってきている。ただし、円安トレンドはまだ崩れておらず、食品の一部では価格の急騰も足許で目立ってきている。国内外からの物価上昇圧力による消費への悪影響には、引き続き注意が必要だ。
JMR消費INDEXは2024年10月時点で26.7となっており、前月9月よりも低下している近似曲線も2023年1月頃をピークに、低下トレンドを描いている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標全てが2024年5月以降、6ヶ月連続で悪化となった。雇用関連の2指標も2023年8月以降、悪化が続いている(図表2)。販売関連では、2024年10月は10指標中、改善が4指標に対し悪化が6指標となっており、悪化の側が優勢となった。2024年11月については、(2024年12月25日時点で)図中に示された(チェーンストア売上高を除く)8指標中、改善が4指標、悪化が4指標と、拮抗している(図表2)。その後、12月27日に公表された2024年11月分の新設住宅着工戸数は、前年同月比で98.2%である。よって、執筆時点で判明している9指標中、改善が4指標、悪化が5指標となり、2024年11月も若干悪化の側が優勢となりそうだ。
消費支出の伸びは2ヶ月連続で名目と実質ともにマイナスとなっているが、伸び率の値は両者とも前月よりもわずかながら上昇している(図表4)。
10大費目別では、2024年9月は名目ではプラスが7費目、実質ではプラスが3費目となっていた。10月は名目ではプラスとマイナスがともに5費目となり、プラスの側の優勢から拮抗状態へと転じている。他方、実質では、プラスが2費目、マイナスが7費目なっており、マイナスの側の優勢が続いている(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、家具・家事用品で+4.2%、教養娯楽では+4.1%と、縮小が続いている。前月9月時点で名目と実質の伸びの差が+9.6%と突出して高かった光熱・水道でも、10月は+3.5%と大きく低下している。名目がプラスで実質がマイナスなのは食料だけであり、名目と実質の伸びの差は+3.5%、実質の伸びのマイナス幅も-0.8%と微少であることから、物価上昇の悪影響も軽微なものとなっている(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2024年11月に98.8%となり、3ヶ月連続でマイナスとなった。国内企業物価の伸びは103.7%、消費者物価の伸びは102.9%と、わずかに上昇している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2024年11月時点で、財では伸びは若干上昇したが、財では伸びはわずかながら低下しており、両者を合わせた総合では伸びはわずかながら上昇にとどまっている(図表7)。物価上昇の動きは、足許で落ち着いている。
販売現場では、小売業全体の売上は2024年10月時点で、プラスが続いている。チャネル別では、コンビニエンスストアやドラッグストアでプラスを保ち続ける一方、百貨店やスーパー、家電大型専門店やホームセンターではマイナスに転じており、好不調の格差がみられる(図表11、図表12)。11月27日に経済産業省から公表された2024年11月分の数値によると、小売業全体では102.8%のプラスであり、チャネル別でも全ての業態でプラスを保っている。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
耐久財では、新車販売は2024年11月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びはマイナスとなっている(図表13)。2025年1月6日に公表された2024年12月分の数値によると、乗用車(普通+小型)で92.0%、軽乗用車では94.9%と、ともに2ヶ月連続でのマイナスである。
家電製品出荷については2024年11月現在、黒物家電は総じてマイナスである。白物家電では、洗濯乾燥機とルームエアコンはプラスだが、401L以上の電気冷蔵庫と電気掃除機はマイナスである。情報家電ではノートPCは5ヶ月連続のプラスだが、スマートフォンは2ヶ月連続のマイナスである。家電は各カテゴリー内やカテゴリー間で好不調が分かれている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は2024年10月現在、全体では2024年5月以降マイナスが続いている(図表17)。12月27日に公表された2024年11月分の数値でも、全体のマイナスは続いている。
利用関係別では、持家はプラスに転じたが、分譲住宅・一戸建てと分譲住宅・マンションはマイナスが続いている。持家の伸びがプラスとなったのは、35ヶ月ぶりのこととなる(図表17)。12月27日に公表された2024年11月分の数値によると、持家は2ヶ月連続でプラスとなり、分譲住宅・マンションは4ヶ月ぶりにプラスに転じる一方、分譲住宅・一戸建ては引き続きマイナスとなっている。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは2024年10月時点で、全ての地域でマイナスとなった(図表19)。12月27日に公表された2024年11月分の数値によると、近畿圏ではプラスだが、残りの三つの地域(関東圏、中部圏、その他の地域)ではマイナスとなっている。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2024年10月時点で、有効求人倍率は改善したが、失業率は悪化している(図表8)。12月27日に公表された2024年11月分の数値によると、有効求人倍率と失業率はともに横ばいとなっている。
収入については、現金給与総額は34ヶ月連続プラス、所定内給与額は36ヶ月連続のプラスである。超過給与額の伸びもプラスに戻している(図表9)。2024年10月時点での実質賃金指数の伸びは、3ヶ月連続でマイナスとなっている。
消費マインドについては2024年11月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは上昇したが、消費者態度指数は低下した(図表10)。2月27日に公表された消費動向調査2024年12月分の数値によると、消費者態度指数は35.1へと、わずかながら上昇している。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年11月上旬ごろから12月初頭頃にかけて円高・株安で推移してきた。12月に入ってからは、為替は円安へと反転し加速する一方、株価は乱高下が続いてきた(図表21)。その後、株価は12月27日に終値で4万円台へ乗せ、年明け以降も4万円前後での推移が続いている。為替は12月26日に158円00銭を付けて以降、一時円高方向への揺り戻しが若干見られたが、年明け後は再び円安の動きが進み、再び158円台へと戻している。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は、2024年11月13日頃をピークに低下傾向に転じたが、11月29日頃を底に再び上昇傾向に転じた。他方、日本国債10年物金利は、11月13日頃以降概ね横ばい傾向で推移してきた(図表22)。年末から年明け後は、米国債10年物金利と日本国債10年物金利はともに、極めて緩やかながら上昇傾向を保っている。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年7月2日をピークに下方シフトが進んだが、9月24日を底に再び上昇シフトに転じた。その後は若干の上下動を伴いつつ、12月19日には2024年4月以降で最も左上方に位置付けられている。特に、残存期間2年~5年のところで、12月19日時点のイールドカーブと7月2日時点のイールドカーブとの高低差が際立っている(図表23)。
総合すると、消費は足踏み状態が続いている。
支出全般の伸びは名目と実質でマイナスの状態が続いている。
好不調の格差は耐久財では目立っており、日常生活財でも時折見受けられる。
収入環境は底堅さを保っており、雇用環境やマインドの悪化にも歯止めがかかりつつある。
物価上昇の動きは落ち着いており、消費への悪影響も軽微なものに止まっている。
ただし、為替の円安トレンドはまだ崩れていない。2025年入り後も、生鮮野菜など食品の一部では価格の急騰も足許で目立ってきている。国内外からの物価上昇圧力が今後の消費にどう影響するのか、引き続き注意が必要となるだろう。