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公開日:2023年11月30日

月例消費レポート 2023年11月号
消費は足踏み状態が長引きつつある-年末・年始の活況を契機としたマインド改善が消費復調への足がかりに
主任研究員 菅野 守

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 支出全般の伸びはマイナスが長期化しつある。

 日常生活財は好調を保っているが、耐久財は概ね不調である。

 雇用環境には悪化の気配は見えず、収入環境は改善が続くが、マインドは方向感が定まらない。

 値上げの悪影響は根強く残っているが、輸入物価の伸びはマイナスが続き、国内企業物価の伸びも低下基調にある。価格転嫁の圧力が弱まるにつれて、値上げの動きも沈静化するとみられる。

 今後日米での金融政策の転換で、円安から円高へと反転する可能性は高まり、値上げの悪影響も徐々に和らいでいくだろう。

 上方シフトを続けてきた日本のイールドカーブは一旦下方シフトに転じたが、足許では再び上方へシフトバックしつつあり、中長期的に緩やかなインフレ見通しは堅持されている模様だ。

 冬ボーナスの3年連続前年越え見通しなど、今後の消費に向けて明るい材料も出てきている。年末・年始の消費の活況を契機とするマインド改善が、消費復調への足がかりとなるだろう。

 JMR消費INDEXは2023年9月に53.3となっており、5月以降は低下傾向にある(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、平均消費性向は改善となっている。預貯金は5ヶ月連続で消費の増加に寄与する動きを示している。雇用関連の2指標のうち、有効求人倍率は2ヶ月連続、月間所定外労働時間は3ヶ月連続で悪化となっている。販売関連では、10指標中改善が6指標となり、前月8月よりも減少している(図表2)。

 消費支出の伸びは、名目と実質ともに7ヶ月連続でマイナスとなっている(図表4)。

 10大費目別では、9月は名目ではマイナスが6費目、実質ではマイナスが8費目となっており、ともにマイナスの側が優勢である(図表5)。

 名目と実質の伸びの差は、唯一食料で+8.7%と際立っており、値上げの悪影響は食料で根強く残っている(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2023年4月以降マイナスが続いている。消費者物価の伸びは2023年10月にわずかながら上昇している。国内企業物価の伸びは2022年12月以降低下が続いている。特に2023年9月以降は、国内企業物価の伸びが消費者物価の伸びを下回り続けている(図表6)。こうした動きが今後も続いていけば、卸段階から小売段階への価格転嫁の圧力は弱まっていくものとみられる。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、財では4ヶ月ぶりに伸びは上昇し、サービスでは2023年7月以降、伸びは極めて緩やかながら上昇傾向にある(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別では業態間で好不調が分かれており、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアでは息長くプラスが続いている一方、家電大型専門店とホームセンターは2023年9月に再びマイナスに転じている(図表11図表12)。

 外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。11月27日に公表された2023年10月分でも、売上の伸びは全体と主要3業態でともにプラスである。

 新車販売は2023年10月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにプラスとなっている(図表13)。

 家電製品出荷については2023年9月時点で、黒物家電は総じてマイナスである。白物家電では、401L以上の電気冷蔵庫とルームエアコンはプラスだが洗濯乾燥機と電気掃除機はマイナス、情報家電ではノートPCはプラスだがスマートフォンはマイナスと、好不調が分かれている(図表14図表15図表16)。白物家電については、11月22日に公表された2023年10月分で、ルームエアコン以外の3品目はマイナスとなり、黒物家電については10月分も総じてマイナスである。情報家電についても、ノートPCはマイナスに転じている。

 新設住宅着工戸数は、全体では4ヶ月連続のマイナスである。利用関係別でも、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションの全てが揃って3ヶ月連続のマイナスである(図表17)。3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、中部圏で5ヶ月連続のプラス、近畿圏とその他の地域で3ヶ月ぶりのプラスだが、首都圏は4ヶ月連続のマイナスである(図表19)。

 雇用環境については、2023年9月時点で、失業率は3ヶ月ぶりに低下し、有効求人倍率は2ヶ月連続で横ばいとなっている(図表8)。

 収入については、現金給与総額は21ヶ月連続、所定内給与額は23ヶ月連続、超過給与額は5ヶ月連続のプラスである(図表9)。

 消費マインドについては2023年10月時点で、消費者態度指数は3ヶ月ぶりに上昇に転じる一方、景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月連続で低下している(図表10)。

 マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、株価は9月半ば以降低下傾向にあったが、10月末頃を底に上昇傾向に転じている。円ドル為替レートは7月半ば頃以降円安傾向が続いてきたが、11月半ば頃を底に円高傾向に転じている(図表21)。2023年10月下旬には終値で148円台まで戻している。

 日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は10月19日に終値で4.98%を、日本国債10年物金利は11月1日に終値で0.959%を付けたのをピークに、低下傾向に転じている(図表22)。2023年11月27日時点での終値は、米国債10年物金利で4.39%、日本国債10年物金利で0.787%である。

 日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2022年3月初から直近の2023年11月初にかけて、若干の上下動を伴いつつも、イールドカーブは少しずつ上方へのシフトを続けてきた。11月1日をピークにイールドカーブは下方シフトに転じ、11月21日時点では8月23日時点の位置まで下がってきている(図表23)。その後は11月27日時点にかけて、わずかながらも再び上方へシフトバックしつつある。



 総合すると、消費は足踏み状態が長引きつつある。
 消費支出など支出全般の伸びはマイナスが長期化しつある。
 日常生活財は好調を保っている。耐久財は、新車販売など一部で改善の動きがみられはするが、概ね不調である。
 雇用環境では少なくとも悪化の気配はみられず、収入環境は息長く改善の動きが続いている。ただし、マインドは方向感が定まっていない。
 値上げの悪影響は食料で根強く残っている。輸入物価の伸びはマイナスが続いており、国内企業物価は低下基調にある。消費者物価の伸びは足許でわずかに上昇しているが、今後(も)価格転嫁の圧力は弱まっていくにつれて、値上げの動きも徐々に沈静化していくものとみられる。
 米国FOMC(連邦公開市場委員会)について、利上げはあっても年内あと1回、場合によっては利上げ終了の観測もマーケットからは出てきており、来年2024年には利下げに転じる可能性すらもささやかれつつある。日銀金融政策会合についても、2024年4月頃とみられるマイナス金利政策解除が、マーケット関係者の間でも徐々に現実味を帯びつつあるようだ。
 日米の中央銀行当局による今後の金融政策の転換で、円ドル為替相場は円安局面から円高局面へと反転する可能性は高く、ここ数年続いてきた値上げの悪影響も徐々に和らいでいくこととなろう。
 上方シフトを続けてきた日本のイールドカーブは一旦下方シフトに転じたが、足許では再び上方へシフトバックしつつあり、中長期的に緩やかなインフレ見通しは堅持されている模様だ。

 冬ボーナスは3年連続で前年越えの見通しが示されるなど、今後の消費に向けて明るい材料も出てきている。来るべき年末・年始の消費の盛り上がりがマインド改善へとつながっていけば、消費復調への足がかりとなるだろう。


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特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


   

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