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公開日:2023年07月26日

月例消費レポート 2023年7月号
消費は持ち直しの動きがみられる-値上げの悪影響にも目処、夏の消費の盛り上がりへの期待も大きい
主任研究員 菅野 守

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 JMR消費INDEXの悪化の動きにも、ようやく歯止めがかかった。

 支出全般の伸びはマイナスが続いているが、マイナス幅は縮小に転じている。

 日常生活財では改善の動きが続いている。耐久財でも新車販売の好調が際立ち、新設住宅着工戸数もマンション需要を支えに改善に転じている。

 雇用環境では悪化寄りの動きがみられ、マインドは方向感が定まらないが、収入環境は息長く改善の動きが続いている。

 値上げの悪影響は家事・家具用品や食料を中心に根強く残るが、物価の伸びは総じて低下基調にある。

 2023年6月の間続いてきた円安傾向も反転し、7月以降は円高の動きが進んでいる。円安の加速に伴う値上げの可能性とその悪影響も、限定的で、比較的軽微なものに止まりそうである。

 円高基調を再反転させるような金融政策のショックが無い限りは、値上げの動きにもようやく完了の目処が立ち、値上げによる消費への悪影響も徐々に弱まっていくと見込まれる。

 旅行・レジャー関連を中心に、この夏は消費の盛り上がりが期待できる。

 JMR消費INDEXは2023年5月に80.0へと、4ヶ月ぶりに上昇に転じた(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、5月は、支出関連3指標中、平均消費性向と預貯金の2指標で、消費の改善を示す動きがみられた。販売関連では、改善が10指標中8指標となり、前月よりも改善の動きが進んでいる(図表2)。

 消費支出の伸びは、名目と実質ともに3ヶ月連続でマイナスとなっているが、5月はマイナス幅が縮小している(図表4)。

 10大費目別では、5月は名目ではマイナスが6費目、実質ではマイナスが7費目となり、いずれもマイナスの側が優勢である(図表5)。

 家具・家事用品と食料の2費目は、名目と実質の伸びの差がどちらも+8%台となっており、値上げの悪影響が続いている。特に家具・家事用品では、名目の伸びがマイナスに転じている(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2022年9月以降、一貫して低下が続いており、2023年4月以降はマイナスに転じている。国内企業物価の伸びも2022年12月以降低下が続いている。消費者物価の伸びも、2023年5月には再び低下に転じている(図表6)。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、サービスでは2023年5月に、物価の伸びは横ばいとなった。財では2023年5月に、伸びは再び低下に転じている(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別では2023年5月に、業態間で好不調の格差がみられる。スーパーは9ヶ月連続、百貨店は15ヶ月連続、コンビニエンスストアは18か月連続、ドラッグストアは25ヶ月連続のプラスである。他方で、ホームセンターは4ヶ月ぶりにマイナスに転じ、家電大型専門店は3ヶ月連続のマイナスである(図表11図表12)。

 外食売上は、全体で18ヶ月連続のプラスであり、業態別でも3業態全てで15ヶ月連続のプラスである(図表20)。

 新車販売は、2023年5月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに6ヶ月連続のプラスである(図表13)。

 他方、家電製品出荷については、黒物家電と情報家電は総じてマイナスである。白物家電は、カテゴリー間で好不調が分かれている図表14図表15図表16)。

 新設住宅着工戸数は、全体では2023年5月は、4ヶ月ぶりにプラスに転じた。利用関係別では、持家と分譲住宅・一戸建てでマイナスが続いているが、分譲住宅・マンションは2023年5月に再びプラスに戻している(図表17)。

 3大都市圏別にみると、持家では全ての地域でマイナスが続いている(図表18)。分譲住宅・マンションでは、首都圏、中部圏、近畿圏の3大都市圏全てでプラスに転じている(図表19)。

 雇用環境について、失業率は5月に横ばいとなっており、有効求人倍率は再び低下するなど、悪化寄りの動きがみられる(図表8)。

 収入は、現金給与総額17ヶ月連続のプラス、所定内給与額は19ヶ月連続のプラスであり、超過給与額も2023年5月はプラスに転じている(図表9)。

 消費マインドについて、消費者態度指数は上昇を続けているが、景気ウォッチャー現状判断DIは低下が続いており、方向感が定まらない(図表10)。

 総合すると、消費は持ち直しの動きがみられる。

 JMR消費INDEXの悪化の動きにも、ようやく歯止めがかかった。

 消費支出など支出全般の伸びはマイナスが続いているが、マイナス幅は縮小に転じている。

 小売販売や外食などの日常生活財では改善が続いており、耐久財では唯一新車販売の好調が際立つ。新設住宅着工戸数は足許で、3大都市圏を中心としたマンション需要を支えに、改善に転じる動きもみられる。

 雇用環境では悪化寄りの動きがみられ、マインドは方向感が定まらない状況にあるが、収入環境は息長く改善の動きが続いている。

 値上げの悪影響は、家事・家具用品や食料を中心に根強く残ってはいるが、輸入物価、国内企業物価、消費者物価のいずれにおいても、物価の伸びは低下基調にある。

 円ドル為替レートの推移をみると、2023年6月の間続いてきた円安傾向も6月29日の終値で144円77銭を付けたのを境に反転し、7月に入って以降も円高傾向は続いている。これまでの円安の加速に伴う値上げの可能性とその悪影響も、限定的で、比較的軽微なものに止まりそうである。

 今後、現状の円高基調を再反転させるような金融政策のショックが無い限りは、各企業でこれまで積み残しとなっていた値上げの動きにも、ようやく完了の目処が立ってくることになろう。そうなれば、値上げによる消費への悪影響も徐々に弱まっていくと見込まれる。

 一部報道によると、民間企業の2023年夏のボーナス支給額は過去最高を記録したといわれており、公務員でも3年ぶりの増加となっている。

 今夏の旅行についても、国内旅行でコロナ前の水準に回復する見込みも一部で示されている。旅行・レジャー関連を中心に、この夏は消費の盛り上がりが期待できそうである。


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特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


   

参照コンテンツ


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