半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2023年04月24日

月例消費レポート 2023年4月号
消費は引き続き改善基調を保っている
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 支出全般の伸びは上昇を続けている。耐久財では好不調の格差がみられるが、小売販売や外食を中心に、消費は改善の動きが続いている。
 雇用環境は悪化の動きがみられるが、収入環境とマインドでは改善の動きがみられる。
 値上げの悪影響は食料を中心に根強いが、そのインパクトは和らぎつつある。
 輸入物価の上昇の勢いは鈍化し、企業物価の上昇の勢いも弱まり始めている。財を中心に消費者物価の上昇はピークアウトしつつあるが、サービスでの物価上昇傾向は続く。
 賃上げや政府の低所得層対策などで、値上げの悪影響を吸収しきれるのかが、今後の消費回復の行方を左右するだろう。

 JMR消費INDEXは2023年2月に80.0へと、わずかに低下している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2月は、支出関連3指標のうち、消費支出と平均消費性向の2指標は2ヶ月連続で改善している。販売関連では、改善が10指標中8指標と前月よりも1指標分(具体的には新設住宅着工戸数)だけ減っている(図表2)。

 消費支出の伸びは、名目と実質ともにプラスが続いている(図表4)。

 10大費目別では、2月は名目ではプラスが8費目、実質では6費目であり、名目でも実質でもプラスの側が優勢となっている(図表5)。

 家具・家事用品と食料の2費目では、名目の伸びはプラスだが実質の伸びはマイナスである。この2費目は名目と実質の伸びの差が顕著であり、値上げの悪影響が目立っている(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2022年9月以降、一貫して低下が続いている。国内企業物価の伸びも低下が続いている。消費者物価の伸びは2023年2月に低下に転じている(図表6)。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、サービスでは2022年8月以降、物価の伸びは上昇を続けている。他方、財では2023年2月に伸びは低下に転じている(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別でも、2023年2月は、主な6業態全てでプラスとなっている(図表11図表12)。

 外食売上は、全体で15ヶ月連続のプラスであり、業態別でも3業態全てで12ヶ月連続のプラスである(図表20)。

 新車販売は、2023年2月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに3ヶ月連続のプラスである(図表13)。

 他方、家電製品出荷については、黒物家電は総じてマイナスである。白物家電と情報家電は、製品により好不調が分かれている(図表14図表15図表16)。

 新設住宅着工戸数は、全体では2023年2月に再びマイナスへと落ち込んだ。利用関係別では、分譲住宅・マンションは3ヶ月連続でプラスだが、持家と分譲住宅・一戸建てはマイナスが続いている(図表17)。

 分譲住宅・マンションについては、近畿圏でプラスが続いているが、首都圏は7ヶ月ぶりに、中部圏は3ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表19)。

 雇用環境について、2023年2月は、有効求人倍率は低下し、失業率は上昇するなど、悪化の動きがみられる(図表8)。

 収入は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに14ヶ月連続のプラスである(図表9)。

 消費マインドについて、2023年3月は、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに上昇し、改善の動きが認められる(図表10)。

 総合すると、消費は引き続き改善基調を保っている。

 消費支出など支出全般の伸びは続いている。10大費目別でも、名目と実質ともにプラスの側の優勢である。

 小売販売は全体でも業態別でもプラスとなっている。外食でも改善の動きが続いている。

 耐久財では引き続き、分野間で好不調の格差がみられる。これまで息長く好調を保ってきた首都圏のマンション需要にも、陰りが見えつつある。

 雇用環境では悪化の動きがみられるが、収入環境は改善基調を保ち、マインドにも改善の動きが認められる。

 値上げの悪影響は、食料を中心に根強いが、そのインパクトは徐々に和らぎつつある。輸入物価の上昇の勢いは鈍化してきており、卸売段階にあたる企業物価の上昇の勢いも弱まり始めている。財を中心に消費者物価の上昇にもピークアウトの兆しが見えつつあるが、サービスでの物価上昇傾向は続いたままだ。

 賃上げや政府の低所得層対策などで、値上げの悪影響を吸収しきれるのかが、今後の消費回復の行方を左右することとなるだろう。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


   

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

新着記事

2025.03.18

25年2月の「景気の先行き判断」は6ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.03.18

25年2月の「景気の現状判断」は12ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.03.17

なぜ、「外国人」社長が大手企業で多くなるのか - コーポレートガバナンスの罠

2025.03.17

企業活動分析 ファーストリテイリング24年8月期は売上・営業利益ともに4期連続で過去最高を達成

2025.03.14

日本のブランド危機と再生戦略 - トライアドマーケティング

2025.03.13

25年1月の「消費支出」は3ヶ月連続のプラスに

2025.03.12

25年1月の「家計収入」は4ヶ月ぶりのマイナス

2025.03.11

25年1月の「現金給与総額」は37ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.03.10

値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機

2025.03.10

企業活動分析 ソニーグループの24年3月期は主力のゲーム&ネットワークサービスが大幅な増収に寄与するも金融部門の減益が響き増収減益に

2025.03.07

消費者調査データ RTD(2025年3月版) 「氷結」、「ほろよい」の競り合い続く アサヒの新顔は高いリピート意向

2025.03.06

25年1月は「完全失業率」は横ばい、「有効求人倍率」は改善

2025.03.05

25年2月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2025.03.04

関税政策に日本企業はどう対応すべきか

2025.03.04

25年1月の「新設住宅着工戸数」は9ヶ月連続のマイナス

2025.03.03

企業活動分析 NECの24年3月期は国内がけん引し増収増益

2025.02.28

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 清貧・ゆとり世代が消費を牽引!賞与の使い道は?

 

2025.02.28

消費からみた景気指標 24年12月は7項目が改善

2025.02.28

25年1月の「ファミリーレストラン売上高」は35ヶ月連続プラス

 

2025.02.28

25年1月の「ファーストフード売上高」は47ヶ月連続のプラスに

2025.02.27

トランプを支えるネット世論 - 正体は「ルサンチマン」

  

2025.02.27

減税政策は人気とりのバラマキ政策か

2025.02.27

月例消費レポート 2025年2月号 消費は改善の動きが続いている - 物価や金利の上昇ペース次第で消費回復のブレーキとなるおそれも

2025.02.26

25年1月の「全国百貨店売上高」は3ヶ月連続のプラスに

  

週間アクセスランキング

1位 2025.03.04

関税政策に日本企業はどう対応すべきか

2位 2025.02.27

減税政策は人気とりのバラマキ政策か

3位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

4位 2025.03.10

値上げ安堵に潜む日本ブランドの危機

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area