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公開日:2022年11月17日

月例消費レポート 2022年11月号
消費は改善の動きが続く反面、値上げの悪影響は徐々に広がりつつある
主任研究員 菅野 守

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 消費は改善の動きが続いているが、値上げの悪影響は徐々に広がりつつある。
 支出全般はプラスを保っている。小売販売もプラスが続き、外食でも改善の動きが続いている。耐久財でも改善の動きが目立ってきている。
 ただし、10大費目別では、名目でプラス側が優勢の反面、実質ではプラス側とマイナス側が拮抗しており、値上げの悪影響を受けるカテゴリーも徐々に広がりつつある。
 収入環境は改善基調を保っているが、雇用環境とマインドは方向感が定まっていない。
 一時150円台まで加速した円安の動きは一旦落ち着きを見せているが、円安による輸入物価上昇の影響はまだ国内物価には反映しきれていない。2023年には2,000を超える品目で値上げが予定されており、値上げの悪影響は来年も引きずりそうな気配だ。

 JMR消費INDEXは2022年9月に73.3へと上昇した。近似曲線は、上昇トレンドを維持している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、9月は、支出関連では前月同様、3指標中2指標が改善となり、預貯金は悪化が続いている。販売関連では10指標中7指標が改善となっており、新車販売台数が改善に転じている(図表2)。

 消費支出の伸びは2022年9月時点で、名目と実質ともにプラスである(図表4)。

 10大費目別では、名目ではプラスが7費目を占めており、プラスの側が優勢である。他方、実質では、プラスとマイナスがそれぞれ5費目ずつと拮抗している(図表5)。

 光熱・水道は名目ではプラスだが実質ではマイナスとなっている点や、食料のプラス幅が名目では5%を超えるが実質では1%程度に止まる点は前月と同様であるが、新たに、その他の消費支出は名目では+3%とプラスに対し実質では-05%とマイナスに転じている。加えて、家具・家事用品でも、プラス幅が名目では20%を超えるのに対し実質では15%を割り込む水準へと圧縮されている。値上げの悪影響を受けるカテゴリーは、徐々に広がりつつあるようだ(図表5)。

 販売現場では、小売業全体の売上は7ヶ月連続のプラスである。

 チャネル別では、2022年9月にスーパーがプラスに転じたことで、11ヶ月連続マイナスのホームセンターを除いた、残りの業態でプラスとなっている(図表9図表10)。

 外食売上は、全体では10ヶ月連続のプラスである。

 業態別でも、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋の3業態全てで、7ヶ月連続のプラスである。特に、パブ・居酒屋では、2021年9月の大幅な落ち込みからの反動増の影響が色濃く現れている(図表18)。

 新車販売では、2022年10月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに2ヶ月連続のプラスである(図表11)。

 家電製品出荷については、白物家電は一部の財を除き概ねプラスが続いている。情報家電では、スマートフォンは再びプラスに戻し、ノートPCは2ヶ月連続のプラスである。

 他方、黒物家電では、2ヶ月連続プラスの4K対応薄型テレビを除いた、残りの業態でマイナスが続いている(図表12図表13図表14)。

 新設住宅着工戸数は、2ヶ月連続のプラスである。

 利用関係別では、持家はマイナスが続いている一方、分譲住宅・一戸建てはプラスが続いており、分譲住宅・マンションも2ヶ月連続のプラスである(図表15)。

 三大都市圏別の推移をみると、持家は、全ての地域でマイナスである。マンションは、首都圏とその他の地域でプラスが続いている(図表16図表17)。

 雇用環境は、有効求人倍率は上昇を続ける一方、完全失業率は上昇しており、方向感が定まっていない(図表6)。

 他方、収入は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに9ヶ月連続のプラスである(図表7)。

 消費マインドについては2022年10月も、景気ウォッチャー現状判断DIは上昇を続ける一方、消費者態度指数は低下が続いており、依然方向感は定まらないままだ(図表8)。

 総合すると、消費は改善の動きが続いているが、値上げの悪影響は徐々に広がりつつある。

 消費支出など支出全般はプラスを保っている。

 日常生活財のうち、小売販売全体の売上はプラスが続き、外食でも改善の動きが続いている。

 耐久財でも改善の動きが目立ってきている。新車販売はプラスを保ち、白物家電や情報家電では、改善の動きが続いている。新設住宅着工では首都圏でマンションの改善が際立っている。

 ただし、消費支出の10大費目別では、名目でプラスの側が優勢である反面、実質ではプラスの側とマイナスの側とが拮抗している。値上げの悪影響を受けるカテゴリーも、これまでの光熱・水道や食料だけでなく、その他の消費支出や家具・家事用品などへも、徐々に広がりつつある。

 収入環境は改善基調を保っているが、雇用環境とマインドについては足許で方向感が定まっていない。

 一時は終値で150円台まで加速した円安の動きも反転し、円ドル為替相場は直近では140円を割る水準にまで戻している。それでも、9月から10月にかけて140円台の円安基調で推移してきたことによる輸入物価上昇の影響は、国内物価へはまだ十分に反映しきれていない。

 一部報道では、2023年の値上げ予定品目は既に2,000品目を超えており、値上げの悪影響は来年も引きずりそうな気配だ。


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特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


参照コンテンツ


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