半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2020年11月02日

新規陽性者報道の消費へのインパクトは消滅
JMRモデルで推計(11月2日続報)
社会経済研究チーム 松田久一、菅野守


本コンテンツは、陽性者報道の消費インパクトは低下 消費支出への影響は1人3円から1円への続編である。新たに公表された8月の消費支出データを追加し、再推計を行った。8月までで、陽性者報道が日々の消費支出に与える影響はなくなったといえる。そのため、J-marketingトップページで公開していた、日々の消費支出の予測については掲載終了とする。

新規陽性者報道の消費へのインパクトは消滅

 新型コロナウイルスの新規陽性確認者報道はこれまで、日々の消費支出に大きな影響を与えてきた。しかしその影響は次第に薄れ、8月までにほぼ消滅した。

 まず、前回モデルで推定された消費支出の予測の有効性を検証するために、8月の消費支出の日別支出金額実測値と予測値の比較を行った。実測値は19.4万円、予測値は18.3万円である。前年同月比でみると、実測値は-9.6%、予測値は-14.8%の減少であり、5.6%の乖離がある。8月の消費支出は予測ほど減少しなかった。

 上記の結果を踏まえ、8月の消費支出の日別データを追加し、前回と同様のモデルで再推定をおこなった。詳しい推計方法はこちらを参照してもらいたい。

 これまでに行ってきた、JMRモデルでの前日の新規陽性確認者数の係数推定値の変遷を図表1に示した。


図表1.JMRモデル 陽性確認者数の消費へのインパクトの変遷



 5月までと6月までの係数推定値はそれぞれ-2.99(p = 0.005)、-2.87(p = 0.005)であり、前日の新規陽性確認者数が1人増加で消費支出は約3円減少の影響があった。7月までの係数推定値は-0.92(p = 0.08)であり、1人増えると消費支出は約1円減少と陽性者数インパクトは小さくなった。今回推計した8月までの係数推定値は-0.42(p = 0.30)であり、さらにインパクトは小さくなっている。

 消費支出の予測に、新規陽性者数変数を投入したモデルが妥当であるかを確認するために、新規陽性者数変数を投入した場合と、しない場合のモデル比較を行った(図表2)。


図表2.消費支出に対するコロナ新規陽性者数の影響



 それぞれのモデルにおける各変数の係数推定値の違いは、ほとんどみられない。また、各変数の標準偏差は、新規陽性確認者数変数を投入したモデルのほうが、大きくなっている。つまり、予測の精度は悪化しているといえる。

 モデルのあてはまりのよさを表すAICをみると、新規陽性確認者数を変数として投入したモデル(AIC = 3170.26)のほうが、投入しないモデル(AIC = 3169.36)よりも高い。つまり、新規陽性確認者数変数を投入したモデルは、支持されない。8月までで、報道が消費支出に与える影響はなくなったといえる。

 人々の陽性者報道への関心の低下や、Go Toキャンペーンなどの政府の経済政策が、陽性者報道のインパクト低下の要因とみられる。

 この結果から、今後の新規陽性確認者数に基づく日々の消費支出金額の予測は妥当ではなくなった。



特集:コロナ禍の消費を読む


参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.09.12

24年7月の「消費支出」は3ヶ月連続のマイナスに

2024.09.12

24年7月の「家計収入」は3ヶ月連続のプラス

2024.09.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 「紅麹サプリ問題」認知率は86%! 消費者の健康食品選びに変化

2024.09.11

24年6月の「現金給与総額」は30ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.09.10

24年7月は「完全失業率」は悪化、「有効求人倍率」は改善

2024.09.09

企業活動分析 ヤクルト本社の24年3月期は国内好調維持するもアジアの不振で増収減益に

2024.09.09

日本マクドナルドHD23年12月期は全店売上高、利益が過去最高を更新し増収増益へ

2024.09.06

企業活動分析 エスティローダーの23年6月期は、トラベルリテールの不調やドル高、インフレなどが響き減収減益に

2024.09.06

消費者調査データ 茶飲料(2024年9月版) 抜群の強さ「お~いお茶」、大手3ブランドが熾烈な2位争い

2024.09.05

24年8月の「乗用車販売台数」はふたたびマイナスに

2024.09.04

企業活動分析 ロイヤルホールディングス株式会社 23年12月期は人流増加で需要回復、増収増益に

2024.09.03

24年7月の「新設住宅着工戸数」は3ヶ月連続のマイナス

2024.09.02

企業活動分析 株式会社サイゼリヤ 23年8月期はアジア新規出店がけん引し増収増益

2024.08.30

月例消費レポート 2024年8月号 消費は緩やかながらも改善の動きが続いている-内需主導での景気回復への期待感

2024.08.30

消費からみた景気指標 24年6月は6項目が改善

2024.08.30

24年7月の「ファーストフード売上高」は41ヶ月連続のプラスに

2024.08.30

24年7月の「ファミリーレストラン売上高」は29ヶ月連続プラス

2024.08.29

24年6月の「旅行業者取扱高」は19年比で73%に

2024.08.29

24年6月の「広告売上高」は、2ヶ月連続のプラス

2024.08.29

24年7月の「全国百貨店売上高」は29ヶ月連続のプラス、猛暑で盛夏商材が好調

2024.08.29

24年7月の「チェーンストア売上高」は既存店で17ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2023.10.06

消費者調査データ No.393ミネラルウォーター(2023年10月版)全項目首位 一歩抜ける「サントリー天然水」、追う「い・ろ・は・す」

3位 2024.08.30

月例消費レポート 2024年8月号 消費は緩やかながらも改善の動きが続いている-内需主導での景気回復への期待感

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area