半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2022年10月28日

月例消費レポート 2022年10月号
消費は改善基調を保っている-円安のメリットとデメリットとの綱引きが消費の行方を左右
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 消費は改善基調を保っている。
 支出全般はプラスを保っている。小売販売もプラスが続き、外食でも改善の動きが続いている。耐久財でも改善の動きが徐々にみられつつある。
 雇用環境と収入環境は改善基調を保っているが、マインドは方向感が定まっていない。
 コロナの水際対策緩和と「全国旅行支援」のスタートを機に、インバウンド含め、観光需要は急激な盛り上がりをみせている。
急速に進んだ円安はインバウンド需要喚起のメリットと、値上げインパクト持続のデメリットの両面をはらんでいる。両者の綱引きが、今後の景気と消費の行方を左右しそうだ。

 JMR消費INDEXは2022年7月も前月同様66.7であり、横ばいとなっている。近似曲線は、上昇トレンドを維持している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、7月は、支出関連では3指標中2指標が改善し、預貯金は悪化に転じた。販売関連では10指標中6指標が改善し、新設住宅着工戸数が改善に転じている(図表2)。

 消費支出の伸びは名目と実質ともにプラスであり、伸び率の値も上昇している(図表4)。

 10大費目別では、2022年7月は、名目ではプラスが8費目、実質ではプラスが7費目を占め、いずれもプラスの側が優勢である。光熱・水道は名目ではプラスだが実質ではマイナス、食料のプラス幅は名目では5%を超えるが実質では1%を割り込み、値上げの悪影響が続いている(図表5)。

 販売現場では、小売業全体の売上は6ヶ月連続のプラスである。

 チャネル別では、業態間での好不調の格差が続いている(図表9図表10)。

 外食売上は、全体では9ヶ月連続のプラスである。

 業態別でも、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋の3業態全てで、6ヶ月連続のプラスである(図表18)。

 新車販売では、2022年9月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにプラスに転じている(図表11)。

 家電製品出荷については、白物家電は総じて2ヶ月連続でプラスが続いている。黒物家電は一部の財を除き概ねマイナスが続いている。情報家電は、ノートPCは17ヶ月ぶりにプラスに戻したが、スマートフォンは3ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表12図表13図表14)。

 新設住宅着工戸数は、全体では4ヶ月ぶりにプラスに転じた。

 利用関係別では、持家はマイナスが続いている一方、分譲住宅・一戸建てはプラスが続いており、分譲住宅・マンションも2022年8月には再びプラスに戻している(図表15)。

 三大都市圏別の推移をみると、持家は、全ての地域でマイナスである。マンションは、中部圏でマイナスが続いている一方、首都圏と近畿圏は2022年8月に大きくプラスへと戻しており、その他の地域もプラスが続いている(図表16図表17)。

 雇用は改善が続いている。完全失業率は低下し、有効求人倍率は上昇を続けている(図表6)。

 収入も、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに8ヶ月連続のプラスである(図表7)。

 消費マインドについて2022年9月には、景気ウォッチャー現状判断DIは上昇を続ける一方、消費者態度指数は再び低下に転じており、方向感が定まっていない(図表8)。

 総合すると、消費は引き続き改善基調を保っている。

 消費支出など支出全般はプラスを保っており、10大費目別でもプラスの側が優勢である。

 日常生活財のうち、小売販売全体の売上はプラスが続き、外食でも改善の動きが続いている。

 耐久財でも改善の動きが徐々にみられつつある。新車販売が総じてプラスに転じ、白物家電では改善の動きが続いている。新設住宅着工では首都圏や近畿圏でマンションの改善が際立つ。

 雇用環境と収入環境は改善基調を保っている。ただし、マインドについては足許で方向感が定まっていない。

 10月11日より、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策が緩和されるとともに、東京都を除く46道府県で旅行需要喚起策「全国旅行支援」もスタートしている。

 両施策実施後初の週末には、東京都心の繁華街や全国各地の観光地で、外国人観光客も含めて、コロナ禍前のにぎわいを取り戻しつつある、との報道も目立っている。

 9月下旬以降急速に進んでいる円安は、インバウンド需要喚起のメリットと、値上げインパクト持続のデメリットの両面をはらんでいる。

 米国側の金融引き締めと日本側の金融緩和のスタンスがともに崩れない限り、円安基調は当分続くと見込まれる。円安のメリットとデメリットとの綱引きが、今後の景気と消費の行方を左右しそうだ。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

特集:2022年、値上げをどう乗り切るか

特集1.値上げの価格戦略

特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析

特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?


参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.01.09

24年12月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のマイナス

2025.01.08

企業活動分析 富士フイルムHDの24年3月期は増収増益、過去最高を更新

2024.12.27

24年11月の「ファーストフード売上高」は45ヶ月連続のプラスに

2024.12.27

24年11月の「ファミリーレストラン売上高」は33ヶ月連続プラス

2024.12.27

消費からみた景気指標 24年10月は4項目が改善

2024.12.26

提言論文 消費者が示すサービスブランドの価値実現率-価値伝達なしの生存はない

2024.12.25

24年11月の「全国百貨店売上高」はふたたびプラスに インバウンドや冬物衣料が好調

2024.12.25

24年11月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月ぶりのプラスに

2024.12.24

24年11月の「コンビニエンスストア売上高」は12ヶ月連続のプラスに

2024.12.23

MNEXT 価値と欲望の充当関係とは何か-市民社会の基本原理

2024.12.23

企業活動分析 BYDの23年12月期はEV・PHV好調で大幅な増収増益を達成

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

週間アクセスランキング

1位 2024.12.23

MNEXT 価値と欲望の充当関係とは何か-市民社会の基本原理

2位 2024.06.21

消費者調査データ ビール系飲料(2024年6月版) 首位「スーパードライ」、キリンの新ビール「晴れ風」にも注目

3位 2024.12.26

提言論文 消費者が示すサービスブランドの価値実現率-価値伝達なしの生存はない

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area