
水産缶詰の生産量が減少するなか、サバの缶詰が好調だ。日本びん詰レトルト食品協会によると、2017年の水産缶詰の生産量は10万6千トン(2008年比8%減)と、ここ10年間ゆるやかな減少傾向にある。
一方サバの缶詰は、2017年の生産量が3万9千トン(同53%増)と大きく伸長、ツナ缶(マグロ・カツオ類)を逆転した。業界推計では、売上高シェアで初めてサバ缶がマグロ缶を上回ったという報道も出ている(日本経済新聞 電子版 2018年5月21日付)。

背景にあるのは、消費者の健康志向だ。サバには不飽和脂肪酸の一種であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれている。これらは高血圧の予防や中性脂肪の低下に効果があるとされており、食物繊維を含む食品と合わせて食べることでダイエット効果も見込めるというのだ。「サバ缶ダイエット」としてテレビ番組で紹介されたことで人気に勢いがついた。
またサバは漁獲量が安定しており、缶詰が100-200円前後と安価で購入できる。近年マグロやカツオの漁獲量が減少し、2017年には一部のツナ缶で値上げの動きがみられたことも追い風となった。
このように、健康志向と低価格から生産量を伸ばしてきたサバ缶。日本人の魚離れも叫ばれるなか、水産業界の救世主となれるのか。今後の動向に注目したい。
参照コンテンツ
シリーズ 成長市場を探せ
おすすめ新着記事

「オールフリー」「ドライゼロ」がしのぎを削る ノンアルコール飲料の商品ランキング
ノンアルコール飲料の市場は2019年まで6年連続で拡大している。コロナ禍でビール系飲料が落ち込む中、家飲みの増加や健康志向の高まりが成長を支えているとみられる。まだ市場規模は小さいものの、今後の成長に期待がかかる商品分野だ。

市場「アップダウン」期のマーケティング戦略―コロナ後、消費の反発力はどこへ向かう?
コロナ禍で、「ワンランク上」の高級品が売れている。30年ぶりの株高も加わり、「バブル」消費の再来を思い起こさせる。「上」へ昇っていく市場だ。他方でホテルや外食など「下へ」降っていく市場もある。このめまぐるしく「アップダウン」しトレンドが読めない市場を「エレベーター市場」と規定してみる。この市場転換期に、状況を見定めて、守りと攻めを明確にしたマーケティングを展開すべきだ。

料理の強い味方 増加する加工食品の利用
コロナ禍で内食が増加し、加工食品の需要が伸びている。今回は、実際に加工食品が誰に、どのように利用されているのかを調査した。その結果、在宅時間の増加とともに増えた調理の時間や手間の短縮に、加工食品が貢献している実態がみえてきた。



