マーチャンダイジングとは、「ターゲットに、何を、いくらで、どのように提供するか」を決定することです。すなわち、設定したターゲットに対し、
- 提供物の品揃え(仕入・在庫)を決定する
- 価格を決定する
- 販売形態を決定する
ことです。
マーチャンダイジングは「品揃え(仕入・在庫)」という意味にのみよく使われますが、実は「価格決定」「販売形態の選択」という意味も含まれています。同じような種類の商品でも、販売形態によって売れる価格、必要な品揃えも変わるからです。
マーチャンダイジングの概念は、前述の通りですが、その中核は品揃えの決定です。品揃えがマーケティング計画とずれていれば、どんなにプロモーションをうまく行ってもターゲット顧客を攻略することはできません。
品揃えを決定する際の重要なテーマは、製品をどのように捉えるかです。
一般に、品揃えを決定する際、「深さ」「幅」「一貫性」という三次元で捉えます。深さとは、製品ライン内のアイテムすなわち、サイズ、価格、スタイル、色など外見で区別される単位の数で示し、幅は扱う製品ラインの数で示し、一貫性は各製品ライン間の使用用途・グレードなどの関連度で示します。
これらの組み合わせにおいて、品揃えには四つの基本パターンがあります。深さと幅による四つの組み合わせです。そのうえで一貫性を考えて、設定したターゲットとの整合性がとれているかどうかということになります。
近年では、コンピューターによる情報システム化が進み、品揃え、棚割り、仕入発注などが自動で行われるシステムが活用されています。
マーチャンダイジングを行うのは、消費者と直接接点を持つ小売業者です。しかし、メーカー・卸・小売りが一丸となって行うことも多く、「チーム・マーチャンダイジング」、「チームMD」などと呼ばれています。コンビニエンスストアの中食の商品開発はその典型です。
また、直接ユーザーから注文を受け、翌日に届ける仕組みを構築し、販売領域と品揃えの拡大、専門性強化と低価格化を同時に進めることで、法人向け文具通販市場で成長を維持しているアスクルは、設定したターゲット(中小企業)に対応する新たなマーチャンダイジングで成功を収めた企業と言えます(戦略ケース「アスクルがしかけた文具流通競争の行方-多様性を制するものが勝つ(2009年)」参照)。
さらに、顧客の捉え直しと独自のMD(マーチャンダイジング)によって、「オンリーアイ(現在オンリー・エムアイに呼称統一)など自社開発商品「ReStyle(リ・スタイル)」「BPQC」といった自主編集売場を強化し、「ファッションに高い関心を持ち、自ら商品を選び、コーディネートすることができる男性」という顧客に向けて「伊勢丹メンズ館」をオープン、成功させた伊勢丹(現在は三越伊勢丹)もMDに強みを持つ企業です(戦略ケース「伊勢丹の戦略~顧客の捉え直しと独自のMDで生き残ってきた伊勢丹~(2015年)」参照)。
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