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(2009.09)
アスクルがしかけた文具流通競争の行方
-多様性を制するものが勝つ
本稿は、「週刊エコノミスト2009年9月15日号」掲載記事のオリジナル原稿です。



1.アスクルの登場と法人向け文房具通販への新規参入
図表1.紙・文房具小売業の店舗数と販売金額の推移
 文房具小売店の店舗数は減少の一途を辿っている。1982年から2007年までに約3分の1の約1万店にまで減少している。年間販売金額も1994年をピークに減少を続けている。金物屋や玩具屋のように文房具店が消え、文房具の流通構造が20年間で大きく変化している。
 流通構造変化のポイントは、1994年に誕生した文房具通販のアスクルである。メーカーが膨大な在庫を持ち、それを卸売業が文房具店へ卸し、消費者が買いに行くという従来の流れを大きく変え、アスクルが膨大な在庫を持ち、直接消費者から注文を受け、翌日に届ける仕組みを構築した。「中抜け」した物流革命を行い、低価格化を実現したことにより09年5月期の売上は1,905億円となり、10年間で約20倍に成長した。
 一方で文房具通販を巡る競争が激しくなっている。アメリカの3大文房具チェーン店のうちオフィス・デポとオフィス・マックスが1990年代後半に日本進出を果たす。大手文房具メーカーのコクヨが2000年「カウネット」で文房具通販に参入した。OA機器を販売する大塚商会が1999年に「たのめーる」を立ち上げ、異業種からの参入を果たした。大塚商会の狙いはOA機器を販売することであり、アスクルが販売の中心に置く文房具を集客の目玉として位置づけ、アスクルよりも低価格で販売した。これによって、文房具通販での低価格競争が激化した。
 アスクルも品揃えの幅や販売領域を拡大させ対抗している。2004年に医療や介護用品など販売領域を広げ、さらに文房具だけでなく椅子や机などのオフィス事務関連商品、ミネラルウォーターやお菓子などオフィス全般の商品の品揃えを行い、オフィス関連商品販売に進化した。2007年には専門商材の品揃えを強化したショップを11店に拡大させ、専門性も強化した。価格に対しても、バイイングパワーを背景に大手メーカーと組み、低価格PBを拡大させている。販売領域と品揃えの拡大、専門性強化と低価格化を同時に進めることで、縮小する市場での成長を維持してきた。

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