プロジェクト・チーフ 中山有希

どのようにチャネル設計をして、どう商品を店頭で売っていくか。消費者の購買意欲をどう作っていくか。今、こういった経路を考えていくことが非常に重要です。消費社会白書2019の調査では、オンライン店舗と実店舗の使い分け、食品の購入チャネル、インターネットを使ったキャンペーンの効果などについても詳しく分析しました。
まず、商品ごとの購入先について見てみます。食品購入のメジャーチャネルは、「食品スーパー」「コンビニエンスストア」「大型総合スーパー」です。そこに、四つ目のチャネルとして「ドラッグストア」が台頭してきています。
図表1.購入先選択 ―食品購入四つのメジャーチャネル
ドラッグストアの1年内利用率は、38.8%でした。特に注目したいのは、居住地域別の利用率に差がある点です。利用率のトップは北関東で47.5%、東京都(23区内)は28.7%と最も低かったです。
図表2.ドラッグストアの食品売上シェア
ではドラッグストアでは実際、なにが買われているのでしょうか。食品スーパーと比べてみると、野菜・果物はスーパーの割合が圧倒的です。一方で、菓子、飲料や酒類などでは、その差が2割を切っています。
また、コンビニとの比較では、牛乳などの乳製品、調味料、卵などはドラッグストアで買われる方が多いです。お菓子や缶詰などは差がかなり小さいです。コンビニとドラッグストアは競争が激しいということが言えると思います。実際、地方で両店が並んで出店した場合、コンビニがドラッグストアに客を取られてしまうということもあるそうです。
図表3.ドラッグストアでの食品購入の優位性
このように、都市部で重点にすべきチャネルと、地方で重点にすべきチャネルは違っているということがデータから分かると思います。そもそも、ドラッグストアとそれ以外のチャネルでは、儲けを出す構造が違います。例えば、スーパーの売場で一番お金がかかるのは生鮮食品です。人手も必要で、廃棄ロスもあります。そのため、あまり儲からない売り場でもあります。一方、缶詰やお菓子などは利益の高い商品です。陳列すれば、あまり手のかからない売場だからです。しかし、この利益を生み出している商品がドラッグストアに奪われつつあります。
ドラッグストアの市場規模は7兆円といわれています。スーパーよりも販管費が低く、従業員も少なめです。人手がないので、商品を陳列して安く売るという戦略です。一方のスーパーは、人手が多いので、コストがかかりますが、旬や季節の提案、クロス陳列などもやってもらいやすいです。
より詳細なファインディングは「消費社会白書2019」をご覧ください

ネット情報依存化する行動と消費パラドックス
- 発刊以来16年間の知見とデータから「今」を鋭く分析し、「半歩先」を提案
- オリジナルの時系列調査から現在の消費者の実像に迫る
- 中長期だけでなく、短期のマーケティング戦略を構築するための基本データが満載
第12回 ネクスト戦略ワークショップ 講演録
- Session1. 情報的マーケティングへの革新
- Session2. ストイックな規律互助の価値観と消費見通し どうなる?これからの価値観と消費
- Session3. 食生活の理想と現実の乖離
- Session4. ロングセラーブランドの長寿化
- Session5. 選択の多重化と購入意欲の経路分析
参照コンテンツ
おすすめ新着記事

星野リゾート進出が変えた「豊島区大塚」 ―官民連携で地域活性化の好事例
都心再開発の多くが完工する2030年頃にかけて、人の流れが大きく変化します。「豊島区大塚」もそのひとつで、官民一体の街づくりによって新たな観光スポットに生まれ変わりました。そもそも大塚といえば、良く言えば下町レトロ、、悪く言えばちょっといかがわしい街のイメージ。それが、2018年の星野リゾート進出によって一変しました。エリアマーケティングでは、大塚のような官民一体型の地域活性策も重要になってくるでしょう。

コロナ下でも強い「ビオレUV」、再購入意向は「スキンアクア」
2年連続で大幅縮小したサンケア市場。今年は、コロナ禍での規制緩和により外出機運も高まっており、再成長が期待されている。今回の調査も、過去同様「ビオレUV」が6項目で首位を獲得、盤石の強さをみせた。唯一首位を譲ったのが再購入意向で、「スキンアクア」が87%と圧倒的支持を獲得。各社も花粉ブロックやホワイトニングなど付加価値製品を投入しており、夏を目前にあつい戦いが予想される。

値上げの時代の生き残りマーケティング
2022年は経済の大きな転換期になりそうです。ようやく新型コロナのエンデミック化かと思えば、ウクライナ侵攻、値上げと、経済へのマイナスインパクトが続いています。これらは表面的な現象であり、根底は新たな経済、新しいグローバルな経済秩序への転換です。日本経済に大きな影響を与えるのは、利上げ、サプライチェーン寸断、コロナ、ウクライナ侵攻の四つです。これらの要因が供給と物価に影響を与え、需要をシュリンクさせ、消費市場を減少させることになります。この状況に、マーケティングとしてどう対応したらよいか、ということをお伝えします。