カスタマージャーニーとは、顧客が自社サービスと接点を持った時のカスタマーエクスペリエンス(どのような感情を抱き、どのような行動に出るのか)を推測し、体系立てたものを指す。顧客の感情を推測しながら、一連の行動を思い描くことを旅に例え、「Customer(顧客)Journey(旅)」と名付けられた。
カスタマーエクスペリエンスを重視し、交通手段に革新をもたらしたオンデマンドタクシー配車サービスが、2009年に設立された「Uber」だ。スマホアプリで近辺にいるタクシーを呼び、アプリ経由で料金を支払うこともできる。タクシー業界のサービスの質がよくなかった米国では、画期的なサービスとなった。
カスタマージャーニーにおける「空車を探す」→「行き先を指示する」→「目的地へ移動する」→「支払いをする」という一連の顧客体験の段階で、従来のタクシーにはなかった新しい価値を提供している。
例えば、顧客はスマホのGPS機能によって、自分の居場所までタクシーを呼び寄せることができる。寒空の下、大通りで手を挙げて流しのタクシーを奪い合う必要はない。アプリ上でタクシーを呼んだら、あとは暖かい室内でコーヒーでも飲みながらドライバーからの電話を待つだけだ。
同社の新しい体験価値が世界中で人気を集め、米国31都市からスタートしたサービスは現在、世界60ヶ国300都市にまで広がっている。
カスタマーエクスペリエンスが、サービス設計やマーケティング戦略において重視されている。カスタマーエクスペリエンス向上の実践に向けて、顧客理解を深め、具体的な施策へと落とし込むために活用されているのが、「カスタマージャーニーマップ」だ。
マップ設計の際に顧客の感情・行動文脈を旅(ジャーニー)のプロセスに見立てて可視化し、把握する手法や、そのために描いた図である。プロセス全体の機能や顧客接点を示し、その上を顧客がサービスを利用したり商品を購入したりする行動を描いたものである。
カスタマージャーニーマップは、まさに「顧客の旅行地図」といえる。
当社ではカスタマージャーニーに替わるフレームとして、「ピンボールモデル」を提案している。
顧客は商品購入までに、テレビ、新聞、店頭、キュレーションサイト、メーカーの公式ホームページなど、いろいろな情報を行き来して、最終決定をする。ネットとリアルの融合下における購買意思決定はピンボールモデルのように、きっかけや信頼形成、購買の決め手となる経路間を行き来し、購入意思決定の閾値を一気に超える経路が存在する。
プロモーションのポイントは、リアルとネットの経路の特性を把握し、相乗効果を創出することで意思決定エネルギーを上昇させることだ。相乗効果のある最適な経路の組み合わせからプロモーション計画を策定することが重要である。
参照コンテンツ
おすすめ新着記事
消費者調査データ 紅茶飲料(2024年10月版) 首位「午後の紅茶」、「紅茶花伝」に水をあける
2023年、数量金額ともにプラスとなった紅茶飲料。調査結果を見ると、キリンの「午後の紅茶」が再購入意向以外の5項目で首位を獲得した。認知率は9割、購入経験も5割を超え、再購入意向では2位以下に10ポイント余の差をつけ、リーディングブランドらしい強さをみせた。
消費者調査データ ミネラルウォーター(2024年9月版) 全項目首位「サントリー 天然水」、リピート意向の高いPB
2023年、2年連続で2桁増を達成したミネラルウォーターについての調査結果をみると、全項目で5ポイント以上の差をつけて「サントリー天然水」が首位に。2位は「い・ろ・は・す天然水」。再購入意向ではベスト10内に5ブランドのPBという結果となった。
成長市場を探せ V字回復で2年連続過去最高更新の炭酸飲料(2024年)
炭酸飲料が伸びている。2020年はコロナ禍で前年割れとなったが、翌21年にはコロナ前の水準に迫り、22年、23年と2年連続で過去最高を更新した。