半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

各部門に分散していたリサーチを統括するリサーチ部門ができました。商品開発のプロセスと必要なリサーチについて教えてください。(食品メーカー、調査部スタッフ)

 商品サービスの開発のプロセスを大きく捉えると、次の三つの段階に分けて捉える必要があります。

  1. 商品戦略の策定、コンセプト開発
  2. 商品設計(仕様)の決定
  3. 生産・販売計画の策定

 商品開発のテーマが、新規商品開発でも、既存品リニューアルの場合でも、このプロセスは同様です。

 主に消費財メーカーを想定して各段階ごとに意志決定すべき項目とそのためのリサーチについて整理したのが下表です。参考にしてください。実際の商品開発の現場では、開発予算やスケジュールによって、一回のリサーチに複数の要素が組み合わされ、リサーチのステップを短縮化することもあります。

 リサーチを実施する上での経験原則を三つあげます。


(1) ターゲットとコンセプトの一貫性を貫くこと

 商品開発の出発点は、顧客をどう捉えるか市場セグメントをどうするかをその会社独自の視点で定めることです。そのためのリサーチが「生活研究」です。これは全社戦略、事業戦略の中核をなすものとして個別商品開発のプロセスとは別に実施されトップまたは事業部トップが意志決定に関与し全体に共有されていることが前提となります。その上で当該商品についてターゲットを決定しコンセプト開発を行います。ブランドマネージャー型の組織であればブランドマネージャーが全体のプロセスを通して管理していきますが、そうでない場合には特にリサーチ部門が各リサーチのプロセスを通じて一貫性を維持していく必要があります。


(2) リサーチの目的と開発プロセスの意志決定の対応関係が明確であること

 コンセプト開発から商品仕様の決定までの間に何度かリサーチを実施するわけですが、それぞれのリサーチの目的と意志決定事項が明確でないと混乱を招きます。おおよそふたつの混乱があり、ひとつはパッケージデザインチェックのリサーチ段階で、商品の中身仕様の不適切さが指摘されるというような場合です。これは前段のリサーチの調査項目のもれや後段の調査設計が不適切であるといった調査設計の問題と、中身仕様がたびたび変更されるような場合に起こります。ふたつめは、リサーチの結果からの判断があいまいな場合に起こります。改良して再度調査にかける、といった場合に何がいいのか悪いのかを明確にしておかないと、同じ商品について同じテーマでリサーチを繰り返すことになります。


(3) NOT&GOの判断基準をもつこと

 上記(2)と表裏一体ですが、商品仕様を決定する段階ではリサーチを実施した結果について、開発ステップを先に進めるか否か、廃棄するか、についての判断基準を持つ必要があります。自社の既存品との比較、競合品との比較による相対的な優位性の基準と、ターゲット層のプラス評価が70%以上といった絶対基準と両面の基準が必要です。御社ではリサーチ部門ができたばかりということですから、判断基準の設定と全体に共有していくことをご検討ください。


 商品開発のスタイルはひとつではありません。先にスケジュールが決まっていて、スケジュール優先で開発がすすめられることがあります。商品を多発して市場占拠を狙う場合や、先駆的商品を先発して市場導入することが使命の場合などです。商品の位置付けによっても変わります。下図は標準的な商品開発とリサーチのステップです。目的に応じて実施するリサーチも変わります。しかし、上記三つの経験原則については、リサーチ部門がその役割を果たすための必須要件と考えられます。


図表 標準的な商品開発とリサーチのステップ
図表


関連用語


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

新着記事

2024.09.12

24年7月の「消費支出」は3ヶ月連続のマイナスに

2024.09.12

24年7月の「家計収入」は3ヶ月連続のプラス

2024.09.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 「紅麹サプリ問題」認知率は86%! 消費者の健康食品選びに変化

2024.09.11

24年6月の「現金給与総額」は30ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.09.10

24年7月は「完全失業率」は悪化、「有効求人倍率」は改善

2024.09.09

企業活動分析 ヤクルト本社の24年3月期は国内好調維持するもアジアの不振で増収減益に

2024.09.09

日本マクドナルドHD23年12月期は全店売上高、利益が過去最高を更新し増収増益へ

2024.09.06

企業活動分析 エスティローダーの23年6月期は、トラベルリテールの不調やドル高、インフレなどが響き減収減益に

2024.09.06

消費者調査データ 茶飲料(2024年9月版) 抜群の強さ「お~いお茶」、大手3ブランドが熾烈な2位争い

2024.09.05

24年8月の「乗用車販売台数」はふたたびマイナスに

2024.09.04

企業活動分析 ロイヤルホールディングス株式会社 23年12月期は人流増加で需要回復、増収増益に

2024.09.03

24年7月の「新設住宅着工戸数」は3ヶ月連続のマイナス

2024.09.02

企業活動分析 株式会社サイゼリヤ 23年8月期はアジア新規出店がけん引し増収増益

2024.08.30

月例消費レポート 2024年8月号 消費は緩やかながらも改善の動きが続いている-内需主導での景気回復への期待感

2024.08.30

消費からみた景気指標 24年6月は6項目が改善

2024.08.30

24年7月の「ファーストフード売上高」は41ヶ月連続のプラスに

2024.08.30

24年7月の「ファミリーレストラン売上高」は29ヶ月連続プラス

2024.08.29

24年6月の「旅行業者取扱高」は19年比で73%に

2024.08.29

24年6月の「広告売上高」は、2ヶ月連続のプラス

2024.08.29

24年7月の「全国百貨店売上高」は29ヶ月連続のプラス、猛暑で盛夏商材が好調

2024.08.29

24年7月の「チェーンストア売上高」は既存店で17ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2023.10.06

消費者調査データ No.393ミネラルウォーター(2023年10月版)全項目首位 一歩抜ける「サントリー天然水」、追う「い・ろ・は・す」

3位 2024.08.30

月例消費レポート 2024年8月号 消費は緩やかながらも改善の動きが続いている-内需主導での景気回復への期待感

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area