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公開日:2020年03月12日


しずおか食セレクション認定者セミナー 講演録
マーケティングTips
ブランディング 名前のちから

顧問 西橋裕三



2020年1月30日、農産物とネーミングについて、静岡県の生産者らを対象に弊社顧問 西橋裕三氏が講演を行いました。このコンテンツは、その講演をまとめたものです。

 商品のネーミングとは、便利なものであり、怖いものでもあります。言葉は、使い方次第で良くも悪くもその商品に影響を及ぼします。よい名前を付けて、「名前に仕事をしてもらう」ことが理想です。

「名前に仕事をしてもらう」


ネーミングで商品が売れる

 もちろん商品が基本です。しかし、いい商品だから必ず売れるとも限りません。いい商品を生かすも殺すも、名前次第ということができます。

 例を挙げて、説明したいと思います。

 「鼻セレブ」という王子ネピアのティッシュがあります。これは1996年の発売当初、「ネピア モイスチャーティシュ」という名前で売り出していました。しかし、このジャンルの商品が確立していなかったため、目立たず、苦戦しました。

 そこで、ネーミングとパッケージのリニューアルを実施。「鼻セレブ」という名前に変更したところ、一気に売上を伸ばしました。

 もうひとつは、レッグウェアメーカー岡本(大阪市)の「まるでこたつソックス」です。冷え性対策用ソックスであるこの商品を「三陰交をあたためる」という漢方をイメージした名前で、2013年に売り出しました。しかし、ターゲットの50代60代には思ったほど響きませんでした。

 そもそもこの年代の人たちのマインドは若く、発売当初の渋い名前やパッケージが受け入れられなかったようです。そこで、名前とパッケージをリニューアルしたところ、人気商品に成長しました。

 ネーミングが商品に合っていなかったり、ターゲットの人に届いていなかったりして、消えていく商品がたくさんあります。ネーミングとは、市場の中に「商品の居場所を創る」ことなのです。





よいネーミングとは何か

 商品ブランドとは、牛に押された焼き印が始まりです。ロゴマークは、トレードマークや目印といった意味合いがあり、消費者が商品を見つけて買いやすくなるというメリットがあります。

 これらの考え方の中核にネーミングがあります。お米なら、「コシヒカリ」や「ゆめぴりか」。ジャンル名から飛躍して、消費者がその商品にたどり着けることが商品名の果たす役割です。

 ここで、商標登録について簡単に説明します。商標登録は特許庁の行政手続きで、有効期限は10年です。名前のほかにも、文字、図形、色彩、これらのものを組み合わせたものも商標になります。

 混乱やトラブル回避のためにも、権利は取られる前に取っておくことが鉄則です。

 ネーミングの基本要件は、「音感」「品性」「形容」「イメージ」「願望」などです。いいネーミングというのは、これらの条件に応えています。例えば、説明に重点が置かれ、理屈が勝っているネーミングというのは、このうちの何かがかけていたりします。


成功したネーミングは商品ジャンルをつくる

 いいネーミングというのは、商品ジャンルを創ります。

 例えば、ソニーのウォークマンです。「いつでもどこでも好きな音楽を」という発想から、1979年に誕生しました。この商品は当初、アメリカでは「サウンド・アバウツ」、イギリスでは「ストウアウェイ」という名前でした。

 しかし、来日した音楽家らが日本でウォークマンを買って持ち帰り、口コミによって「ウォークマン」の名前が世界に広まりました。これによって、「ウォークマン」の知名度が高まったことから、発売1年足らずのうちに商品名が「ウォークマン」に統一されたそうです。

 もうひとつは、伊藤園のペットボトル飲料「お~いお茶」です。ペットボトルのお茶といえば、伊藤園です。伊藤園は缶入りのお茶を出していましたが苦戦しました。そこで若者を調査し、商品や容器デザイン見直しました。そこで生まれたのが、ペットボトル入りのお茶「お~いお茶」です。

 そのほかにも、ネーミングの良さで商品ジャンルが生まれたものがあります。アサヒスーパードライ、じゃらん、Google、Facebookなどがよい例です。


いい名前は「ジャンル」を創る。

 ネーミングとは、マーケティングです。いいネーミングは、商売のガイドになります。ブランドコンセプトを表す名前と、消費者の感覚や主観とが一致したときに、商品が動きます。

 例えば、湖池屋の「カラムーチョ」。「辛い」という言葉と、ジャガイモや唐辛子の原産地である南米にちなんでスペイン語の「とても」を意味する「mucho」を組み合わせた造語です。1984年の発売以来、人気の商品となっています。


野菜のネーミングについて考える

 次に、このセミナーの参加者の皆さんの仕事に関係する野菜のネーミングについて考えたいと思います。

 成功例として、有機野菜などの食材宅配スーパー「オイシックス」が販売する「栗じゃがいも」があります。このジャガイモは、「インカのめざめ」という品種のじゃがいもです。しかし、それでは商品特徴が分からないという理由から名前を変更します。

 「ホクホク食感」ということを伝えるために、「栗」というネーミングをプラス。ほかの食べ物の名前を借りるという常識破りのネーミングではありましたが、消費者の心をつかみました。

 ネーミングを変えるということは、大規模に展開でき、コストがそれほどかからないという点からも有益だと思います。


ネーミングの悩みをどう解決するか

 このセミナーの参加者の皆さんの事前アンケートを見ると、「販売数や認知度アップのためにキャッチコピーがほしい」「特徴や独自性がひと目で分かるようにしたい」といったお悩みがあるようです。

 まず、「よそにはない」「これだけはゆずれない」。そういう思いが、言い切れているかを考えてみてください。名前がジャンル名にとどまっていないでしょうか。ネーミングに対して情熱を込めるということが重要です。

 さらに、「誰に対しての名前、表記なのか」ということも大切です。「誰が声に出して、どう呼ぶのか」ということをイメージしてください。送り出す側からの気持ちのみのネーミングは、消費者に届きにくいものです。

 また、理屈っぽい名前というのも消費者に受け入れられません。買う側も「そんなこと分かってるよ」という気持ちになるからです。


ネーミングが果たしてくれる役割

 よいネーミングとは、目的地まで商品を運んでくれる"夢の乗り物"です。

 パッケージや広告、PR、ホームページ、ブログ、SNSなど商品を広めるための方法は数多くあります。しかし、1番強力な方法は、消費者に名指しで商品名を呼んでもらうことです。

 名前を覚えてもらうことは、広告やPRなど様々な手法に資本投下するよりも、大きな効果があるからです。

 ブランド化するということは、このブランドだからという理由で売れていくシステムをつくることです。そして、ネーミングとは、「ストーリー」を創ることです。このストーリーが「行動」を生み出します。

 いろいろな人に届く独自のストーリーを展開する。ネーミングは、コマースの「母」です。

 ネーミングやキャッチコピーを考える際、こういった点に注意してみてください。


ネーミングは
コマースの
「母」である。

西橋裕三氏

当社顧問。
1958年大阪生まれ。早稲田大学法学部卒業。1982年、大手広告代理店入社。
2018年同退社。カンヌ国際広告賞金賞、ACC賞ほか多数受賞。
「トヨタ/エスティマ 天才タマゴ」「湖池屋カラムーチョ」「味の素 ちゃんとちゃんとシリーズ」など。現在フリーのコピーライターおよびイラストレーター。TCC(東京コピーライターズクラブ)会員。
著書「空想絶滅図鑑」。


「しずおか食セレクション」について

静岡県が独自の認定基準に基づいて認定した高品質な農水産品。現在、野菜や果樹、米、茶など169商品があり、当社代表取締役社長 松田久一が審査委員長を務めている。
日本一高い富士山や日本一深い駿河湾など多彩な風土に育まれた"食の都"静岡を代表する逸品を、全国や海外に売り込むために、県もサポートを行っています。





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