日常生活財は好調さを保つ一方、耐久財は商品間で好不調の格差が続き、住宅の不振が目立つ。
収入環境は良好さを持続しているが、雇用環境は悪化し、マインドは悪化が進んでいる。
輸入物価上昇の動きは波及していないが、国内物価には反転上昇の気配がみられる。
マーケットでは株高・円安・長期金利上昇の動きが続いている。イールドカーブの動きからは更なるインフレや金利上昇の圧力が強まっている。
ナフサ関連製品での供給制約や価格高騰の動きの広がりを契機とした、今後の物価上昇圧力や消費への悪影響の可能性には、今後注意を要する。
消費者のマインドをこれ以上悪化させないためにも、速やかな政策対応が望まれる。
2026年3月のJMR消費INDEXは前月と変わらず40.0となっている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標全てが悪化となっている(図表2)。販売関連では、2026年3月は、(チェーンストア売上高を除いた)全10指標中、改善が6指標、悪化が4指標となり、改善の側が若干優勢となっている(図表2)。
消費支出の伸びは2026年3月に、名目と実質でともにマイナスに転じている(図表4)。
10大費目別にみると、2026年3月は、名目と実質の双方とも、改善が5費目、悪化5費目となり両者が拮抗している。食料については、名目ではわずかながらプラスを保っているが、実質ではマイナスとなっている(図表5)。
物価の動きに着目すると、2026年3月は、国内企業物価と消費者物価の伸びは緩やかなプラスが続き、伸びの値もわずかながら上昇している。輸入物価の伸びはプラスが続き、伸びの値の上昇ペースも加速している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、総合、財、サービスのいずれも、伸びの値は2026年2月を底に上昇に転じている(図表7)。
販売現場では、小売業の売上は2026年3月に、全体では再びプラスに戻している。主なチャネル別では、六つのチャネルすべてでプラスとなっている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも揃って、息長くプラスを保っている(図表20)。
耐久財では、新車販売は2026年4月時点で、乗用車(普通+小型)はプラスだが、軽乗用車はマイナスとなっている(図表13)
家電製品出荷について、黒物家電は3品目中、4K対応薄型テレビとステレオヘッドフォンはプラスが続いているが、スピーカシステムはマイナスが続いている。白物家電は4品目中、ルームエアコンと電気掃除機はプラスだが、401L以上の電気冷蔵庫と洗濯乾燥機はマイナスである。情報家電ではノートPCはプラスだがスマートフォンはマイナスが続いている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は全体ではマイナスが続いている。利用関係別では、2026年3月時点で、持家と分譲住宅・マンションでマイナスが続き、分譲住宅・一戸建てもマイナスに転じている(図表17)。
地域別の持家の伸びは、2026年3月時点でも、すべての地域でマイナスが続いている(図表18)。
地域別の分譲住宅・マンションの伸びも、2026年3月時点で、すべての地域でマイナスである(図表19)。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境について、2026年3月時点では、失業率は上昇し、有効求人倍率は低下している(図表8)。
収入については、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに息長くプラスが続いている(図表9)。
消費マインドについては、2026年3月以降、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに低下が続いている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、為替は4月に入り概ね横ばい傾向で推移してきた。5月の連休中に行われた為替介入を契機に一旦円高方向へと触れたが、再び円安へと戻している(図表21)。5月22日時点の終値は1ドル159円19銭である。
株価は3月31日に終値で5万1,063円72銭を付けて以降、急騰を続けて6万円を突破し、5月13日には終値で6万3,272円11銭を付けた。その後一時下落の動きをみせるも、5月20日に終値で5万9,804円41銭を付けたのを底に反転上昇している(図表21)。5月25日には取引時間中に、株価は6万5,000円を突破している。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は3月27日に終値で4.440%を付けて以降低下傾向で推移してきたが、4月17日に終値で4.244%を付けたのを底に上昇傾向へと転じている(図表22)。5月21日時点の終値は4.573%となっている。
日本国債10年物金利は3月2日に終値で2.087%を付けたのを底に、上昇傾向での推移が続いてきた。5月11日には終値で2.5%を突破し、その後も更なる上昇を続けている((図表22)。5月21日時点の終値は2.748%となっている。
日米金利差は縮小傾向にあり、4月9日以降は概ね1.8%台での推移が続いている((図表22)。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2026年1月20日以降も左上方へのシフトを続け、2026年5月19日にはすべての残存期間で、2026年1月20日のカーブを上回る水準へと到達している(図表23)。
総合すると、消費は一旦足踏み状態となっている。
支出全般の伸びはマイナスとなっており、費目別では改善と悪化が拮抗した状況にある。
日常生活財は好調を保っているが、耐久財は商品間で好不調の格差が分かれ、特に住宅での不振が目立つ。
収入環境は良好さを保ち続けているが、雇用環境では若干悪化の動きがみられ、マインドで悪化の動きが進んでいる。輸入物価上昇の動きはまだ波及していないが、国内物価にはわずかながらも反転上昇の気配がみられる点は、気がかりなところである。
マーケットでは株高・円安・長期金利上昇の動きが続いている。特に株価は急上昇をみせて最高値を更新し、6万5,000円を突破している。日本国債のイールドカーブは左上方へのシフトの動きを更に強めており、全ての残存期間において最近1年内で金利は最高値の水準に到達し、更なるインフレや金利上昇も懸念される。
ナフサとその関連製品などを中心に、供給制約や価格高騰などの動きが徐々に広がってきている。国内企業物価や消費者物価への上昇圧力の波及次第で、今後の消費への悪影響がどの程度まで顕在化しそうかは、今後注意を要する。
消費者のマインドをこれ以上悪化させないためにも、速やかな政策対応が望まれる。
分析結果からは、決定係数(R二乗値)に基づくモデルの説明力は極めて高く、15個の独立変数の偏回帰係数値は全てが正で極めて有意であり、モデル全体での有意性も確認されている。ダービン・ワトソン比は2.0に極めて近いことから、残差の系列相関も認められない。VIFなどの数値をみても、独立変数に多重共線性の問題は認められない。
JMR消費インデックスと15指標それぞれの変動を標準化により調整して回帰を行った際に得られる標準偏回帰係数の値の大小に基づき、JMR消費インデックスに対する15指標それぞれの影響度の優劣を評価すると、影響度の高いもの上位3指標は「新設住宅着工戸数変化」「平均消費性向変化」「月間所定外労働時間変化」である。他方、影響度の低いもの下位3指標は「衣料品売上変化」「家電製品売上変化」「ファーストフード売上変化」である。
影響度の高いもの上位3指標に着目すると、23年余にわたる消費の変動を説明する上で、住宅に代表される大型耐久財の変動は無視できないインパクトを有してきたことが示唆される。また所定外労働時間(残業時間)の増減を通じた収入の変化が消費の変動の重要な要因となっていることは自然であるが、それ以上に、収入のうちどれだけを支出に回すかを反映した平均消費性向の変化が消費の変動の重要な要因となっている点は極めて必然である。
人口減少や少子化、単身化が更に進行しそうな中では、住宅などの大型耐久財の変動が消費の変動に及ぼす影響力は、今後弱まっていく可能性が高いであろう。収入の変動は引き続き重要だが、それ以上に、収入に占める消費のウェイトの上昇の方が今後はより重要になってくると見込まれる。
補図2Aのグラフは、消費支出とヒックス補償所得の過去12ヶ月累積値の推移である。ここ1年余りの間では、消費支出がヒックス補償所得を上回る状況が続いており、物価上昇を上回る支出の伸びを実現できていることが、最も重要な結論である。
補償所得の過去12ヶ月累積値は、消費者物価指数・総合指数の緩やかな上昇傾向を反映し、なだらかな右肩上がりで推移している。物価上昇の影響により、2023年時点の支出から得られる効用水準を維持するのに必要な最低減の支出額であるヒックス補償所得は、緩やかながら着実に上がり続けていることは確かである。
他方で、実際の消費支出は、2024年1月から2025年4月までの間はヒックス補償所得の水準を下回っていたが、2025年5月以降は一貫してヒックス補償所得の水準を上回り続けている。このことから、消費支出は現状、物価上昇を上回るペースで増加を続けていることが確認できる。
こうした消費支出の伸びの背景要因として、支出の源泉である可処分所得の伸びの存在が確認できる。
補図2Bのグラフは、可処分所得と補償可処分所得の過去12ヶ月累積値の推移である。ここ2年余りの間、可処分所得が補償可処分所得を上回る状況が続いており、物価上昇を上回る収入の伸びを実現できている点は、極めて重要である。
補償所得の過去12ヶ月累積値も、消費者物価指数・総合指数の緩やかな上昇傾向を反映し、なだらかな右肩上がりで推移している。物価上昇の影響により、2023年時点の実質購買力を維持するのに必要な可処分所得の金額は、着実に上がり続けていることは確かである。
他方で、実際の家計の可処分所得は、2024年当初は補償可処分所得の水準をわずかに下回っていたが、2024年6月以降は一貫して補償可処分所得の水準を上回り続け、両者の差も広がっていった。2024年12月をピークに可処分所得と補償可処分所得の差は一旦縮小していったが、2025年7月を底に、両者の差は再び広がっている。
2024年半ば以降、家計の消費支出と可処分所得は、物価の伸びを上回るペースで上昇を続けている。消費支出は足許で伸び悩みがみられはするものの、可処分所得は上昇のペースが再び上がりつつある。今後、物価上昇の抑止と家計の可処分所得上昇に向けた政策対応ができれば、物価上昇のペースを上回る収入の上昇は担保でき、消費支出の更なる成長に寄与するものと期待される。
円安の要因の検証を目的に、2020年1月2日以降の円ドル為替レート(円/ドル)の日次データを従属変数とし、独立変数には八つの候補変数を挙げて重回帰分析を行った。
1)米日名目長期金利差:金利平価理論に基づき、米日金利差の拡大はドル高・円安をもたらす
2)日銀コール翌日物金利:日本銀行が金融政策の誘導目標とする政策金利である。日銀の政策金利の引き上げは日本の金利上昇を通じ、円高・ドル安をもたらす ※前値補間で日次化
3)米国10年物ブレークイーブン・インフレ率:市場参加者が予想する「米国の今後10年間の平均インフレ率」。米国のインフレ期待上昇は米国の金利上昇を通じドル高・円安をもたらす
4)VIX指数(恐怖指数):米国株式市場(S&P500)の今後30日間の予想変動率(ボラティリティ)を示す指数。投資家の不安や恐怖の大きさを数値化したもので、「恐怖指数」とも呼ばれる。VIX指数の上昇は投資家の安全資産への逃避(「リスクオフ」)行動による円買い・ドル売りを促し、円高・ドル安をもたらす
5)WTI原油価格:米国テキサス産原油の先物価格で、世界の原油価格の基準指標の一つである。原油高は日本の輸入コスト増大を通じ円安圧力となる
6)日本の経常収支:日本が外国との間で行ったモノ・サービス・投資などすべての取引の収支であり、貿易収支・サービス収支・第一次所得収支・第二次所得収支の合計。経常収支黒字は日本への外貨(主にドル)流入を通じ円高圧力となり、逆に経常収支赤字は日本からの外貨(主にドル)流出を通じ円安圧力となる ※前値補間で日次化
7)サービス収支:経常収支の内訳の一つで、旅行・輸送・金融・知的財産使用料・デジタルサービスなど「モノ以外」の取引の収支。サービス収支のプラスは日本からのサービス輸出超過を意味し円高要因となり、サービス収支のマイナスならサービス輸入超過を意味し円安要因となる ※前値補間で日次化
8)IMM円先物 非商業部門ネットポジション:シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)における円の通貨先物市場で、投機筋(ヘッジファンド等の非商業部門)がどれだけ円を「買い越しているか・売り越しているか」を示す指標。ネットポジションがマイナス(円売り超過)の場合には投機筋が大量に円を売り建てていることを意味し、円安圧力が高まっている状態を示す。逆にネットポジションがプラス(円買い超過)の場合には投機筋が大量に円を買い建てていることを意味し、円高圧力が高まっている状態を示す ※前値補間で日次化
単位根検定により、従属変数の円ドル為替レートと上述の八つの独立変数候補はいずれも1階の差分(つまり前日差)をとることで定常性を確保できることを踏まえて、今回の重回帰では従属変数の前日差から八つの独立変数の前日差への回帰を行った上で、独立変数として有意なものを残し最終的に採用するモデルを確定した(補図3A)。
分析結果からは、最終的に残ったのは、米日名目長期金利差の1階差分、VIX指数の1階差分、IMM円先物非商業部門ネットポジションの1階差分の3変数を独立変数とするモデルである。この3変数のモデルは、米日名目長期金利差1変数のみのモデルや八つの独立変数すべてを含んだモデルよりも、修正済みR2乗値とAICのいずれからみてもモデルの適合度は高い。
最終的に採用された3変数のモデルでは、いずれの独立変数でも偏回帰係数は1%有意である。米日名目長期金利差の1階差分の偏回帰係数の値は正であり、金利平価理論と整合的である。VIX指数の1階差分の偏回帰係数の値は負であり、「VIX指数の上昇が円高・ドル安をもたらす」という前述の理論的想定と合致している。IMM円先物非商業部門ネットポジションの1階差分の偏回帰係数の値は負であり、「ネットポジションのプラス(円買い超過)で円高圧力が高まる」という前述の理論的想定と合致している。よって、このモデルでは、適切な推計結果が得られていることが確認できる。
採用された3変数のモデルでの含意を踏まえて、円安トレンドが顕著な2026年2月13日以降の円ドル為替レート、米日名目長期金利差、VIX指数、IMM円先物非商業部門ネットポジションの実データの推移を対比したのが、補図3Bである。
三つの独立変数のうち、米日名目長期金利差は3月26日を境に低下傾向に転じている。モデルの含意からは、米日名目長期金利差の低下は円高をもたらすはずだが、円ドル為替レートの実際の変化とは整合的でない。このことからは少なくとも、米日名目長期金利差以外の要因が、円ドル為替レートの円安トレンドに寄与していると考えるのが自然であろう。残りのふたつの独立変数の動きに着目すると、VIX指数は3月26日を境に低下傾向に転じている。モデルの含意からは、VIX指数の低下は円安をもたらすこととなるので、円ドル為替レートの実際の変化と整合的である。IMM円先物非商業部門ネットポジションは2026年3月3日以降マイナスの時期が大勢であり、特に直近では大きくマイナスとなっている。「ネットポジションのマイナス(円売り超過)で円安圧力が高まる」ことから、こうした動きは円ドル為替レートの実際の変化とも整合的である。
以上を踏まえると、最近の円安トレンドの有力要因は、米日間の金利差ではなく、むしろVIX指数の低下を受けた投資家のリスクオン行動や、IMM円先物非商業部門ネットポジションのマイナスにみられる円安への投機的な動きの方にあると考えられる。足許の円ドル為替レートは、日米の経済の先行きへの期待やイラン情勢等の地政学リスクなどに対する投資家の思惑に左右され、相場の方向性としては円安に振れやすい状況にさらされていると目される。








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