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公開日:2025年07月03日

月例消費レポート 2025年6月号
消費は回復の動きを持続-選挙後も残る政治リスクに消費は振り回され続けるおそれも
主任研究員 菅野 守

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 支出全般の伸びは再び、名目と実質でともにプラスが続いている。

 日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が鮮明であり、特に新設住着工での落ち込みが際立っている。

 雇用環境は方向感が定まらないが、収入環境は底堅さを保っており、マインドでは改善に転じる動きがみられる。

 物価上昇による消費への悪影響は、光熱・水道で特に強く残っている。ただ、輸入物価の伸びはマイナスが続くとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びも緩やかな低下傾向が続いている。物価上昇の勢いは明らかに弱まってきている。

 マーケットは株高、円安、長期金利低下の傾向で推移し、足許では株価の急騰が目立つ。日本国債のイールドカーブは2025年4月以降、残存期間10年を境に屈折度合いが高まってきている。イールドカーブの動きは6月以降右下方への反転低下がみられ、インフレや金利上昇への期待は一旦収まりつつある。

 2025年7月20日投開票予定の参議院議員選挙の結果がどうなるにせよ、日本の景気や消費は、選挙後も残る政治リスクに振り回され続けることに、変わりはなさそうだ。

 JMR消費INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2025年4月時点で、支出関連では3指標中、消費支出と平均消費性向の2指標は2ヶ月連続で改善となったが、残りの預貯金は悪化が続いている。雇用関連の2指標のうち、月間所定外労働時間は一貫して悪化が続いているが、有効求人倍率は2023年7月以来21ヶ月ぶりに改善に転じ、その後も改善が続いている(図表2)。
 販売関連では、2025年4月は、(チェーンストア売上高を除いた)全10指標中9指標が確定しており、改善が4指標、悪化が5指標となっており、現状では悪化の側が優勢である。執筆時点では未公表の旅行業者取扱額次第で、このまま悪化が進むか拮抗状態まで戻せるかが、分かれてくる。2025年5月は、公表済みの9指標を見ると、改善が5指標、悪化が4指標となり、改善の側が優勢となっている(図表2)。

 消費支出の伸びは2025年4月時点で、名目は6ヶ月連続でプラスとなり、実質は2ヶ月連続のプラスである(図表4)。

 10大費目別では、2025年4月は名目では10費目中プラスが7費目、マイナスが3費目となっており、改善の側が優勢である。実質では、プラスが5費目、マイナスが5費目となっており、両者拮抗している(図表5)。
 名目と実質の伸びの差をみると、2024年4月は、光熱・水道で+8.3%と最も高く、食料で+6.5%と続く。特に光熱・水道は、名目がプラスで実質がマイナスとなっており、物価上昇の悪影響が引き続き強く残っている。他方、食料は、実質でもわずかながらプラスを保っている(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2025年5月に89.7%となり、4ヶ月連続のマイナスである。伸びの値も4ヶ月連続で低下している。国内企業物価の伸びは103.2%、消費者物価の伸びは103.4%であり、伸びの値はともに低下が続いている(図表6)。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2025年5月時点で、総合の伸びはわずかながらも低下が続いている。財の伸びも低下が続いているが、サービスの伸びは、わずかながら上昇している(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は2025年4月時点で、プラスが続いている。チャネル別では、百貨店は3ヶ月連続でマイナス、ホームセンターは6ヶ月ぶりのマイナスとなったが、残りの4つのチャネルは揃ってプラスが続いている(図表11図表12)。

 外食売上は、全体でも主要3業態でも、2022年3月以降は揃って、息長くプラスを保っている(図表20)。

 耐久財では、新車販売は2025年5月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びは5ヶ月連続でプラスとなった(図表13
 2025年7月1日に公表された2025年6月分については、乗用車(普通+小型)で102.9%、軽乗用車で110.9%となり、2025年6月もプラスが続いている。

 家電製品出荷について、黒物家電は2025年5月時点で、前月4月に続き総じてマイナスとなっている。他方、白物家電は、洗濯乾燥機を除きプラスとなっている。情報家電では、ノートPCは2024年7月以来プラスが続いている。スマートフォンは2025年4月に、再びマイナスとなっている(図表14図表15図表16)。

 新設住宅着工戸数は、全体では2025年4月時点でマイナスに転じ、翌月5月も2ヶ月連続のマイナスである。2025年5月時点での全体での伸びの値は65.6%となっており、2008年1月以降では2009年8月に記録した61.7%に次ぐ低さである。利用関係別でも2025年5月時点で、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションすべてで2ヶ月連続のマイナスである。特に持家の伸びは、2008年1月以降で最低の水準となっている(図表17)。

 3大都市圏別にみると、持家は2025年5月時点で、首都圏、中部圏、近畿圏、その他、の4つの地域全てで2ヶ月連続のマイナスである(図表18)。

 分譲住宅・マンションも2025年5月時点で、首都圏、中部圏、近畿圏、その他、の四つの地域全てで2ヶ月連続のマイナスである(図表19)。

 消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境について、有効求人倍率は2025年4月時点では横ばいとなったが、翌月5月時点では低下している。202失業率は2025年3月以降、横ばいが続いている(図表8)。

 収入については、現金給与総額は40ヶ月連続プラス、所定内給与額は42ヶ月連続のプラスとなった。超過給与額の伸びも100.8%と、再びプラウに転じている(図表9)。

 消費マインドについては2025年5月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに上昇に転じている(図表10)。
 2025年7月1日に公表された、消費動向調査2025年6月分については、消費者態度指数は34.8となり、前月5月に続き上昇となっている。

 マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、為替は2025年4月末頃に円安傾向に転じた後、5月中旬頃に一時円高傾向に振れた。その後、5月下旬から6月中旬にかけて再び円安傾向に戻ってが、6月下旬以降は若干円高方向に振れている。株価は2025年4月末頃に上昇傾向で推移の後、5月中旬頃に一時下落の方向に振れた。その後は、5月下旬以降は再び上昇傾向に戻っている。特に6月下旬以降は急上昇をみせ、2025年6月30日の終値では40,487円39銭を付け、1月7日以来5ヶ月ぶりに4万円台を回復している(図表21)。

 日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2025年4月30日に終値で4.167%を付けると上昇傾向に転じたが、5月21日に終値で4.595%を付けたのを境に、再び低下傾向に転じており、6月に入って以降も低下が続いている。他方、日本国債10年物金利は2025年5月2日に終値で1.283%を付けると上昇傾向に転じたが、5月22日に終値で1.573%を付けて以降、6月半ば頃にかけて低下傾向で推移してきた。6月20日に終値で1.424%を付けて以降は、わずかながら上昇傾向で推移している(図表22)。

 日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2025年3月27日には一時、2025年に入って以降で最も左上方に位置付けられた。その後も大きく上下動し、4月7日には2025年に入って以降で最も右下方に位置付けられた。更に若干の上下動を経て、5月22日には左上方へと大きくシフトし、残存期間15年以上では2025年に入って以降で最も左上方に位置付けられたが、その後は再び右下方へとシフトし6月20日の位置まで下がっている(図表23)。



 総合すると、消費は回復の動きが持続している。
 支出全般の伸びは再び、名目と実質でともにプラスが続いている。
 日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が鮮明であり、特に新設住着工での落ち込みが際立っている。
 雇用環境は方向感が定まらないが、収入環境は底堅さを保っており、マインドでは改善に転じる動きがみられる。
 物価上昇による消費への悪影響は、光熱・水道で特に強く残っている。ただ、輸入物価の伸びはマイナスが続くとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びも緩やかな低下傾向が続いている。物価上昇の勢いは明らかに弱まってきている。
 マーケットは株高、円安、長期金利低下の傾向で推移してきたが、足許では株価の急騰が目立つ。日本国債のイールドカーブは2025年4月以降、残存期間10年を境に屈折度合いが高まってきている。イールドカーブの動きは、5月は左上方へのシフトが目立っていたが、6月以降は右下方への反転低下がみられている。インフレや金利上昇への期待は一旦、収まりつつあるようだ。
 2025年7月3日公示、7月20日投開票予定の参議院議員選挙では、物価高対策が最大の争点といわれており、「給付か減税か」は最重要の焦点となりつつある。各党から出された公約は「現金給付も減税も」てんこ盛りのありさまで、実現性のない空手形の乱発にしか見えてこない。
 選挙により各党の盛衰がどうなるにせよ、日本の景気や消費は、選挙後も残る政治リスクに振り回され続けることに、変わりはなさそうだ。


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