支出全般の伸びは再び、名目と実質でともにプラスとなっている。
日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が残っているが、自動車やルームエアコン、ノートPCなど、改善の動きを示すカテゴリーは徐々に増えつつある。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きがみられる。
物価上昇による消費への悪影響は、食料で特に強く残っている。ただ、輸入物価の伸びはマイナスが続くとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びも横ばい傾向にある。物価上昇の動きは徐々に沈静化しつつある。
日本国債のイールドカーブは2025年4月以降、残存期間10年を境に屈折度合いが高まってきている。直近では左上方へのシフトの動きも目立っており、インフレや金利上昇への期待も織り込まれつつある。
2025年7月下旬の参議院議員選挙に向けて、日本の景気や消費は、政治リスク、特に目先の政局等の動向に振り回されやすい状況が続きそうだ。
JMR消費INDEXは2025年3月時点で40.0となっており、前月2月と比べ若干上昇している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、消費支出と平均消費性向の2指標は改善となったが、残りの預貯金は悪化となっている。他方で、雇用関連の2指標は一貫して悪化が続いている(図表2)。販売関連では、2025年3月は、(チェーンストア売上高を除いた)全10指標中、改善が4指標、悪化が6指標となっており、悪化の側が優勢である。2025年4月は、公表済みの8指標を見る限り、改善が4指標、悪化が4指標となり、両者は拮抗している(図表2)。
消費支出の伸びは2025年3月時点で、名目は5ヶ月連続でプラスとなり、実質は再びプラスに戻した(図表4)。
10大費目別では、2025年3月は名目では10費目中プラスが7費目、マイナスが2費目となっており、改善の側が優勢である。実質でも、10費目中プラスの側が6費目と優勢である(図表5)。
名目と実質の伸びの差をみると、2024年3月は、食料で+7.4%と最も高く、光熱・水道が+6.1%と続く。特に食料は、名目がプラスで実質がマイナスとなっており、物価上昇の悪影響が引き続き強く残っている(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2025年4月に92.8%となり、3ヶ月連続のマイナスである。伸びの値も3ヶ月連続で低下している。国内企業物価の伸びは104.0%、消費者物価の伸びは103.5%であり、伸びの値はともに前月よりも低下している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2025年4月時点で、総合の伸びはわずかながら低下した。財とサービスの伸びもともに、わずかに低下している(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上は2025年3月時点で、プラスが続いている。チャネル別では、百貨店を除く五つのチャネルで揃ってプラスである(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
耐久財では、新車販売は2025年4月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びは4ヶ月連続でプラスとなった(図表13)
家電製品出荷について、黒物家電は2025年4月時点で総じてマイナスとなっている。白物家電では、401L以上の電気冷蔵庫とルームエアコンはプラスとなったが、洗濯乾燥機と電気掃除機はマイナスとなっている。特に電気掃除機は、9ヶ月連続でマイナスが続いている。情報家電では、ノートPCは2024年7月以来プラスが続いている。スマートフォンは2025年3月に、4ヶ月ぶりにプラスに転じている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は2025年3月時点で、全体では2ヶ月連続のプラスである。利用関係別では2025年3月時点で、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションすべてがプラスである(図表17)。
3大都市圏別にみると、持家は2025年3月時点で、首都圏、中部圏、近畿圏、その他、の4つの地域全てでプラスとなっている(図表18)。
分譲住宅・マンションは2025年3月時点で、中部圏は10ヶ月連続のマイナスだが、首都圏、近畿圏、その他、の3つの地域はプラスである(図表19)。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2025年3月時点で、有効求人倍率は前月2月よりも上昇しているが、失業率も前月2月よりも上昇している(図表8)。
収入については、現金給与総額は39ヶ月連続プラス、所定内給与額は41ヶ月連続のプラスとなった。ただし、超過給与額の伸びは98.9%と、わずかながらマイナスとなっている(図表9)。
消費マインドについては2025年4月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに低下している(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、為替は2025年4月末頃に円安傾向に転じた後、5月中旬頃に一時円高傾向に振れたが、5月下旬以降は再び円安傾向に戻っている。為替の動きに呼応する形で、株価は2025年4月末頃に上昇傾向で推移の後、5月中旬頃に一時下落の方向に振れたが、5月下旬以降は再び上昇傾向に戻っている。5月末頃の時点では、円安・株高のトレンドにある(図表21)。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2025年4月4日に終値で3.999%を付けた後急上昇をみせ、4月11日に4.495%を付けたが、その後は4月末頃にかけて低下傾向で推移してきた。4月30日に終値で4.167%を付けると上昇傾向に転じたが、5月21日に終値で4.595%を付けたのを境に、再び低下傾向に転じている。他方、日本国債10年物金利は2025年4月10日に終値で1.379%を付けた後、金利は緩やかな低下傾向にあった。5月2日に終値で1.283%を付けると上昇傾向に転じたが、5月22日に終値で1.573%を付けて以降は、再び低下傾向で推移している(図表22)。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2025年3月27日には一時、2025年に入って以降で最も左上方に位置付けられた。その後も大きく上下動し、4月7日には2025年に入って以降で最も右下方に位置付けられた。その後、再び左上方シフトし、4月10日には3月27日に次いで左上方に位置付けられ、特に残存期間20年以上では3月27日よりも高い位置にあった。5月2日は、(残存期間20年以下では4月10日よりも低い位置にあるが)残存期間25年以上では4月10日よりも高い位置となった。5月22日は5月2日から更に左上方へシフトし、残存期間15年以上では2025年に入って以降で最も左上方に位置付けられている(図表23)。
総合すると、消費は回復の動きが持続している。
支出全般の伸びは再び、名目と実質でともにプラスとなっている。
日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が残っているが、自動車やルームエアコン、ノートPCなど、改善の動きを示すカテゴリーは徐々に増えつつある。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きがみられる。
物価上昇による消費への悪影響は、食料で特に強く残っている。ただ、輸入物価の伸びはマイナスが続くとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びも緩やかながら低下傾向にある。物価上昇の動きは沈静化しつつある。
日本国債のイールドカーブは2025年4月以降、残存期間10年を境に、それ以下の期間では下方シフトの圧力が働く一方、15年以上の期間では上方シフトの圧力が働くことで、イールドカーブの屈折度合いが高まってきている。ただし、5月に入ってからは、左上方へのシフトの動きも目立っており、インフレや金利上昇への期待も織り込まれつつあるようだ。
2025年7月下旬の参議院議員選挙に向けて、日本の景気や消費は、政治リスク、特に目先の政局等の動向に振り回されやすい状況が続くこととなりそうだ。