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公開日:2025年05月09日

月例消費レポート 2025年4月号
消費は堅調に推移している - 波乱要因への政治的対応の巧拙が日本の消費の行方を左右
主任研究員 菅野 守

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 支出全般の伸びは名目で引き続きプラスを保っている。

 日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が残っているが、自動車やノートPCなど一部のカテゴリーでは、改善の動きが続いている。

 収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境とマインドは方向感が定まらない状況にある。

 物価上昇による消費への悪影響は、食料で特に強く残っている。ただ、輸入物価の伸びはマイナスが続くとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びも横ばい傾向にある。物価上昇の動きは徐々に沈静化しつつある。

 日本国債のイールドカーブは2025年4月以降、残存期間10年を境に、屈折度合いが高まりつつある。「極めて緩やかな景気回復」のシナリオは、大きく変わりそうだ。

 国内外の波乱要因に対する政治的対応の巧拙が、日本の景気や消費の行方を大きく左右することとなるだろう。

 JMR消費INDEXは2025年2月時点で33.3となっており、前月1月と比べ若干低下している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、平均消費性向は4ヶ月連続で改善となったが、残りの2項目は悪化となっている。他方で、雇用関連の2指標は一貫して悪化が続いている(図表2)。
 販売関連では、2025年2月は、既に公表済みの9指標中、改善が4指標、悪化が5指標となっており、悪化の側が優勢である。ただ公表済みの9指標を見る限り、改善と悪化の優劣状況は前月1月と変わりはない(図表2)。

 消費支出の伸びは2025年2月時点で、名目は4ヶ月連続でプラスとなったが、実質は4ヶ月ぶりにマイナスに転じた(図表4)。

 10大費目別では、2025年2月は名目では10費目中プラスとマイナスが5費目ずつとなり、両者は拮抗している。実質では、10費目中マイナスの側が6費目と優勢である(図表5)。
 名目と実質の伸びの差をみると、2024年2月は、食料で+7.3%と最も高く、光熱・水道が+6.8%と続く。特に食料は、名目がプラスで実質がマイナスとなっており、物価上昇の悪影響が相変わらず強く残っている(図表5)。

 物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2025年3月に97.8%となり、2ヶ月連続のマイナスである。国内企業物価の伸びは104.2%、消費者物価の伸びは103.6%となっており、伸びの値は横ばいが続いている(図表6)。

 財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2025年3月時点で、総合の伸びは横ばい、財の伸びは低下している。サービスの伸びは上昇しているが、その大きさは+0.1%と微々たるものである(図表7)。

 販売現場では、小売業全体の売上は2025年1月時点で、プラスが続いている。チャネル別では、百貨店を除く5つのチャネルで揃って3ヶ月連続のプラスである(図表11図表12)。

 外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。

 耐久財では、新車販売は2025年3月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びは3ヶ月連続でプラスとなった(図表13
 2025年5月1日に公表された2025年4月分速報値でも、伸びは乗用車(普通+小型)で105.2%、軽乗用車で124.5%となっており、ともに4ヶ月連続のプラスである。

 家電製品出荷について、黒物家電は2025年3月時点で、BDレコーダはプラスとなったが、4K対応薄型テレビとスピーカシステムはともに2024年11月以降、マイナスが続いている。白物家電は2025年3月時点で、洗濯乾燥機はプラスとなったが、ルームエアコンはマイナスに転じ、401L以上の電気冷蔵庫と電気掃除機はともに2024年11月以降、マイナスが続いている。情報家電ではノートPCは2024年7月以来プラスが続いている。スマートフォンは2024年12月以降、マイナスが続いている(図表14図表15図表16)。


 新設住宅着工戸数は2025年3月時点で、全体では2ヶ月連続のプラスである。直近の2025年3月の全体の伸びは139.1%を記録し、2008年9月の154.2%、2008年8月の153.6%に次ぐ、ここ最近では類例のない高さとなっている。利用関係別では2025年3月時点で、持家は2ヶ月ぶり、分譲住宅・一戸建ては29か月ぶりにプラスに転じ、分譲住宅・マンションは3ヶ月連続のプラスである(図表17)。

 3大都市圏別にみると、持家は2025年3月時点で、首都圏と中部圏は3ヶ月ぶりにプラスに転じ、近畿圏とその他は2ヶ月連続のプラスである。持家の伸びの値は、最も高い「その他」で146.2%、最も低い「近畿圏」で122.5%であり、総じて高めである(図表18)。

 分譲住宅・マンションは2025年3月時点で、首都圏とその他はプラスに転じ、近畿圏は2ヶ月連続のプラスだが、中部圏は10ヶ月連続のマイナスである(図表19)。

 消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2025年3月時点で、有効求人倍率は前月2月よりも上昇しているが、失業率も前月2月よりも上昇している(図表8)。

 収入については、現金給与総額は38ヶ月連続プラス、所定内給与額は40ヶ月連続のプラスとなった。超過給与額も5ヶ月連続のプラスである(図表9)。

 消費マインドについては2025年3月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月ぶりに上昇に転じたが、消費者態度指数は3ヶ月連続で低下している(図表10)。
 2025年5月1日に公表された、2025年4月分の消費者態度指数の値は31.3であり、4ヶ月連続の低下となっている。

 マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、為替は2025年3月末頃から2025年4月末頃にかけて円高傾向で推移してきたが、4月28日に終値で142円01銭を付けたのを境に、円安傾向に転じている。株価は2025年3月末頃から2025年4月上旬にかけて大きく急落した後、4月7日に終値で31,136円58銭を付けたのを境に、株高傾向に転じている。4月末以降は、円安・株高のトレンドにある(図表21)。

 日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2025年1月14日頃から4月4日頃にかけて低下傾向で推移してきた。4月4日に終値で3.999%を付けた後、4月下旬にかけて急上昇をみせたが、4月21日に4.416%を付けたのを境に低下傾向に転じている。他方、日本国債10年物金利は2025年に入って以降、概ね上昇傾向での推移を続けてきた。3月27日に終値で1.588%を付けた後、金利は急落したが、4月7日に終値で1.129%を付けたのを境に反転急騰した。4月10日に終値で1.379%を付けて以降は、金利は緩やかな低下傾向にある(図表22)。

 日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2025年に入り若干の上下動を伴いつつ、2025年3月27日には一時、2025年に入って以降で最も左上方に位置付けられた。その後も大きく上下動し、4月7日には2025年に入って以降で最も右下方に位置付けられた。その後、再び右上方シフトし、4月10日には3月27日に次いで左上方に位置付けられ、特に残存期間20年以上では3月27日よりも高い位置にあった。更に5月2日は、(残存期間20年以下では4月10日よりも低い位置にあるが)残存期間25年以上では4月10日よりも高い位置に存在している(図表23)。



 総合すると、消費は堅調に推移している。
 支出全般の伸びは名目で引き続きプラスを保っている。
 日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が残っているが、自動車やノートPCなど一部のカテゴリーでは、改善の動きが続いている。
 収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境とマインドは方向感が定まらない状況にある。
 物価上昇による消費への悪影響は、食料で特に強く残っている。値上げの動きになかなか歯止めがかからないことも、悪影響を長引かせている要因になっている。ただ、輸入物価の伸びはマイナスが続くとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びも横ばい傾向にある。物価上昇の動きは徐々に沈静化しつつあるようだ。
 日本国債のイールドカーブは2025年4月以降、残存期間10年を境に、それ以下の期間では下方シフトの圧力が働く一方、15年以上の期間では上方シフトの圧力が働くことで、イールドカーブの屈折度合いが高まりつつある。2025年3月以前に想定されていた、「極めて緩やかな景気回復」のシナリオは、大きく変わりそうな気配だ。
 日米金利差はここ1ヶ月間、+3.0%前後の横ばい傾向で推移している。マーケットは足許で円安・株高のトレンドへと転じつつあるが、先行きの方向感は定まらない。国内外の波乱要因に対する政治的対応の巧拙が、日本の景気や消費の行方を大きく左右することとなるだろう。


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