半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2020年05月27日


月例消費レポート 2020年5月号
消費の不振は深刻なものとなっている
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2018年9月頃より、低下の勢いに拍車がかかっている。直近では、2019年10月以降、数値は50を大きく割り込み、過去最低水準近傍での低迷が続いている(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2020年3月は、預貯金と食料品売上の2項目以外のすべての項目で、悪化となっている。2020年3月時点での前年同月比で特に悪化が深刻なのは、旅行業者取扱額が28.6%、百貨店売上高が66.1%となっており、マイナス幅は過去に類例のないものとなっている(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは2020年3月時点で、名目と実質ともに、再びマイナスへと大きく落ち込んでいる(図表5)。

 10大費目別では2020年3月に、名目と実質の双方で、マイナスの費目数がプラスの費目数を大きく上回り、マイナスの側が優勢の状況となっている(図表6)。

 販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、小売業全体の売上の伸びは、2020年3月に再びマイナスへと落ち込んだ。主要な業態別では、百貨店とコンビニエンスストアで、マイナスとなっている。スーパーはプラスを保っているが、伸び率は低下している(図表11)。

 外食全体の売上の伸びは2020年3月に、大きく急落した。業態別でも、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋の全てで、過去に類例のない規模の大幅なマイナスを記録した(図表15)。2020年5月25日公表の2020年4月時点での伸びは、全体では前月比‐39.6%の60.4%、業態別ではファーストフードで前月比‐16.7%の84.4%、ファミリーレストランで前月比‐59.1%の40.9%、パブ・居酒屋で前月比‐91.4%の8.6%となった。いずれもマイナス幅は、前月3月よりも一層広がっている。

 耐久財のうち、新設住宅着工戸数の全体の伸びは、2019年7月以降マイナスが続いている。カテゴリー別でも、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションの全てで、伸びはマイナスとなっている(図表14)。

 家電製品出荷の伸びは、2020年3月時点で、黒物家電も白物家電もともにマイナスである(図表13)。

 新車販売の伸びも、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。2020年4月には、乗用車(普通+小型)では、消費増税が行われた2019年10月に匹敵するほどの、軽乗用車では2019年10月を上回るほどの、大幅な落ち込みを示している(図表12)。

 2020年3月時点の雇用環境は、完全失業率と有効求人倍率ともに、悪化している(図表8)。

 収入環境について、現金給与総額と所定内給与額の伸びは、2020年1月以降プラスが続いている。超過給与の伸びは2019年9月以降、マイナスが続いている。ただし伸び率の値は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与のいずれも、2020年1月をピークに低下が続いている(図表9)。

 消費マインドは、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、2020年2月以降低下が続いている。2020年4月時点での数値は、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIのいずれも、過去最低の水準となっている(図表10)。

 経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。2020年5月21日に公表された2020年4月分速報では、輸出の前年同月比伸び率の値は78.1%となった。伸び率の値の低下幅も、2ヶ月連続で‐10%を超えている。

 生産について、鉱工業全体の指数は、2020年2月以降、低下が続いている(図表18)。

 マーケットは、2020年5月に入って、株価は上昇傾向を保っている。為替は5月上旬頃に円高傾向から若干円安へと転じ、その後は107円台での推移が続いている。長期金利は上昇傾向の下で、5月上旬頃にはプラスに転じ、その後はゼロ近傍での推移が続いている(図表21)(図表22)。

 総合すると、消費は2020年3月に大幅な落ち込みをみせており、消費の不振は深刻なものとなっている。

 日常財と耐久財のいずれにおいても、消費は総じてマイナスである。プラスが認められるのはスーパーの販売実績ぐらいである。だが、伸び率の値は低下しており、その勢いは鈍化気味だ。

 雇用環境と消費マインドでは、悪化の動きに拍車がかかっている。特に消費マインドのレベルは、過去最低の水準だ。

 収入の伸びも鈍化が続いており、収入環境も逆風にさらされつつある。

 輸出と生産の双方とも悪化の動きが進んでおり、景気の悪化ぶりも鮮明だ。

 マーケットの状況は、2020年5月に入って以降、株価が2万円台に乗り、緩やかな上昇傾向を保っている。為替と長期金利は、落ち着いた推移をみせている。ただ、この動きが、今後の景気回復を先取りしたものなのか、日銀による資産の積極的な買い入れによるものなのかは、判断の分かれるところだ。

 2020年4月分の各種統計指標も、3月時点並みに厳しい結果となるのは、ほぼ必定だ。

 4月7日に発令された緊急事態宣言は、5月25日には全都道府県で解除されることとなった。

 だが、一旦止まっていた経済活動が動き始めるのは、6月に入ってからである。休業や営業自粛等の解除も段階的に進められることから、日本全体で経済活動が本格化するのは、更に数ヶ月程度先だろう。

 2020年4-6月期の実質GDP成長率の予想として、日本の場合は年率‐20%超、米国の場合は年率‐40%、といった数値が既に報道されている。

 エコノミストやマーケット関係者の間では、経済活動制限解除後の、グローバル経済のV字回復への期待感は既にしぼみつつある。今後の経済シナリオの焦点は、回復の時期がどの程度後ろずれするか、感染の第二波の到来前までに回復できるのかへと移りつつある。

 こうした事情を踏まえると、2020年5月以降の数値も、決して楽観視はできない。


図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺
消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺

調査結果をみると、「カップヌードル」が、ほぼ全員に認知があり、4分の3に購入経験があり、半数弱が3ヶ月以内に購入、と圧倒的な強さをみせるなど、ロングセラーブランドへの上位集中が鮮明な結果となった。背景には、昨今の値上げ続きで強まる消費者の節約志向があると考えられる。「失敗したくない」という意識が安心感のあるブランドに向かっているのだ。

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

チョコレート商品の値上げが続くなか、成分や機能を訴求したチョコレートが伸びている。今回はどのような人がどんな理由でチョコレートを食べているのか調査した。

成長市場を探せ キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。  キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)
成長市場を探せ キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。 キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)

キャッシュレス決済のなかでも圧倒的なボリュームを誇るクレジットカード決済は、2024年、3年連続の2桁成長で過去最高を連続更新するとともに、初の100兆円台にのせた。ネットショッピングの浸透も拡大に拍車をかけている。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

2025.04.17

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

2025.04.25

メンテナンスのお知らせ

新着記事

2025.04.25

成長市場を探せ 少子化ものともせず、拡大する学習塾市場(2025年)

 

2025.04.24

25年2月の「広告売上高」は、10ヶ月連続のプラス

2025.04.23

25年3月の「コンビニエンスストア売上高」は2ヶ月ぶりのプラスに

2025.04.22

トランプ関税の正義、賢愚、そして帰結 - ポストグロ-バル経済と自由貿易体制(上編)

 

2025.04.22

25年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2025.04.21

ポートフォリオ戦略からダイナミック・ポートフォリオ分析で統合経営へ

2025.04.21

企業活動分析 2024年12月期のアルファベット(Google)は、検索、AIとも2桁増で過去最高更新

2025.04.18

消費者調査データ カップめん(2025年4月版)別次元の強さ「カップヌードル」、2位争いは和風麺

2025.04.17

25年2月の「商業動態統計調査」は11ヶ月連続のプラス

2025.04.16

25年3月の「景気の現状判断」は13ヶ月連続で50ポイント割れに

2025.04.16

25年3月の「景気の先行き判断」は7ヶ月連続の50ポイント割れに

2025.04.15

25年2月の「消費支出」は4ヶ月ぶりのマイナスに

2025.04.14

提言論文 ブランド価値ランキング - 価値実現率の低い選択的耐久財

2025.04.14

企業活動分析 アップルの2024年9月期は、サービス事業過去最高で増収増益

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

3位 2025.04.11

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター チョコレートの今後購入意向は80%以上! 意外にも男性20~30代と管理職が市場を牽引

4位 2024.10.24

MNEXT 日本を揺るがす「雪崩現象」―「岩盤保守」の正体

5位 2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area