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公開日:2020年05月13日


月例消費レポート 2020年4月号
消費の低迷は続いている
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2018年9月頃より、低下の勢いに拍車がかかっている。直近では、2019年10月以降、数値は50を大きく割り込み、過去最低水準近傍での低迷が続いている(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2020年1月に続き2月も、外食関連の2項目以外のすべての項目で、悪化となっている(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、2020年2月に、実質の伸びが引き続きマイナスとなり、名目の伸びはわずかながらプラスとなっている(図表5)。2020年5月8日公表の2020年3月時点での伸びは、名目で‐7.6%、実質では‐8.1%となり、ともにマイナスへと大きく落ち込んでいる。

 2020年2月時点で、10大費目別は名目と実質の双方で、プラスの費目数とマイナスの費目数が5個ずつと拮抗していた。1月までのマイナスの側が優勢な状況から、2月は中立的な状況まで引き戻された(図表6)。2020年5月8日公表の2020年3月時点での数値は、名目と実質の双方で、プラスの費目が住居(前年同月比変化率・名目:+4.5%)と保健医療(+1.1%)の2個に対し、マイナスの費目が被服及び履物(‐25.1%)、教育(‐23.9%)、教養娯楽(‐19.4%)、その他の消費支出(‐7.8%)、食料(‐1.0%)、光熱・水道(‐0.4%)、家具・家事用品(‐0.2%)の7個である。3月は再び、マイナスの側が優勢の状況となっている。

 2020年3月時点での各費目の内訳として、月あたりの支出金額が1,000円以上、変化率の値が+20%以上の項目には、食料では麺類(月当たり支出金額:1,825円/前年同月比変化率・名目:+27.6%)、家具・家事用品では家事用消耗品(3,510円/+23.7%)などが挙がる。

 販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、外食全体の売上の伸びは2019年11月以降、プラスが続いていた。2020年2月は、一部の業態を除き伸びはプラスを保ち続けており、伸び率の値も更に上昇していた(図表15)。だが、2020年4月27日公表の2020年3月時点での伸びは、全体では前月比‐22.1%の82.7%、業態別ではファーストフードで前月比‐16.7%の93.1%、ファミリーレストランで前月比‐23.2%の78.8%、パブ・居酒屋で前月比‐37.8%の56.7%へと、大きく急落している。

 小売業全体の売上の伸びは2020年2月に、再びプラスに戻した。主要な業態別では、百貨店は2019年10月以降、マイナスが続いた。スーパーは3ヶ月ぶりにプラスに転じた。コンビニエンスストアは2019年10月以降、プラスであった(図表11)。2020年4月30日公表の2020年3月分速報での伸びは、小売業全体では前月比95.4%、主要な業態別では百貨店で67.3%、スーパーで102.5%、コンビニエンスストアで94.6%となっている。

 耐久財のうち、新設住宅着工戸数の全体の伸びは、2019年7月以降マイナスが続いている。カテゴリー別では、分譲住宅・マンションは2020年2月に4ヶ月ぶりにプラスに転じた。持家は2019年8月以降、分譲住宅・一戸建ては2019年12月以降、マイナスが続いている(図表14)。2020年4月30日公表の2020年3月時点での数値は、全体の伸びも、カテゴリー別の伸びも、ともにマイナスとなっている。

 家電製品出荷の伸びは、2020年2月時点で、白物家電がマイナスとなった。黒物家電は製品により好不調が分かれた(図表13)。2020年4月22日に電子情報技術産業協会(JEITA)から公表された、2020年3月時点での黒物家電の伸びは、マイナスとなっている。2020年4月20日に日本電機工業会(JEMA)から公表された、2020年3月時点での白物家電の伸びも、2月に続きマイナスとなっている。

 新車販売の伸びは、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている(図表12)。2020年5月1日公表の2020年4月分速報での伸びは、乗用車(普通+小型)では前月比‐17.6%の72.5%、軽乗用車では前月比‐28.6%の64.6%へと、更に落ち込んでいる。

 2020年2月時点の雇用環境は、完全失業率が横ばいとなり、有効求人倍率は悪化した(図表8)。2020年4月28日公表の2020年3月時点での数値は、有効求人倍率は前月比‐0.06ポイントの1.39倍へと急落し、完全失業率は前月比+0.1%の2.5%へと上昇している。

 収入環境について、現金給与総額と所定内給与額の伸びは、2020年1月以降プラスが続いている。超過給与の伸びは2019年9月以降、マイナスが続いている(図表9)。

 消費マインドは、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、2020年2月以降低下が続いている。特に、景気ウォッチャー現状判断DIは、2020年2月以降の2か月間の合計で、2011年3月の東日本大震災の時を上回る、過去最大の落ち込みをみせている(図表10)。2020年4月30日公表の、2020年3月時点での消費者態度指数の値は、前月比‐9.8ポイントの21.3へと急落した。この数値は、月次での調査が始まった2004年3月以降で、過去最低の水準となっている。

 経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。

 生産について、鉱工業全体の指数は、2019年11月を底に上昇を続けてきたが、2020年2月以降は再び低下に転じている(図表18)。

 マーケットは、2020年4月に入って以降、株高、円高、長期金利高の基調で推移してきた(図表21)(図表22)。

 直近では、株価は5月に入ってようやく2万円台に乗せた。円ドル為替レートは、5月に入り106円台で推移している。長期金利は0%を挟んでの推移が続いている。

 総合すると、消費は2019年10月以降、低迷が続いている。特に耐久財を中心に、消費悪化の動きが鮮明となっている。2020年3月に入り、外食での大幅な落ち込みも顕在化している。

 ただし、食品や日用品などの日常的支出は、底堅さを保っている。日常的支出の品目を品揃えの主力としている、スーパーの販売実績がプラスを保っている点も注目される。

 雇用環境と消費マインドでは、悪化の動きに拍車がかかっている。特に消費マインドの落ち込みは、過去最大の規模にまで広がっている。輸出の悪化は持続し、生産の悪化も顕在化している。

 3月に入ってからの株安、債券安、円安のトリプル安の状況から、マーケットは徐々に回復しつつある。

 ただし、株価の天井は重い。3月下旬にかけての底割れの状況からみれば、その後の株価の動きは立ち直りというには程遠い。それまで長らくマイナスに沈んできた長期金利が、3月半ば頃以降わずかながらもプラスへと転じる動きがみられたことは、注意すべきであろう。

 2020年3月分の各種統計指標には、日本国内での新型コロナウィルスの感染拡大を契機とした、一斉休校、休業や営業自粛、外出自粛などの影響が出てきている。一説には、リーマン・ショックを超え、1929年大恐慌に匹敵するとさえ言われ始めている「コロナ危機」の経済的ダメージの甚大さが、今後鮮明化してくるはずだ。


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