半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2020年03月26日


月例消費レポート 2020年3月号
消費の悪化に拍車がかかりつつある
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2018年9月頃より、低下の勢いに拍車がかかっている。直近では、2019年10月以降、数値は50を大きく割り込み、過去最低水準近傍での低迷が続いている(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2020年1月は、外食関連の2項目以外のすべての項目で、悪化となっている(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、2019年12月以降、名目と実質ともにマイナスが続いている(図表5)。10大費目別では、2020年1月時点で、名目と実質の双方でマイナスが大勢となっている。マイナスの側が優勢な状況は、2019年12月よりも強まっている(図表6)。

 販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、外食全体の売上の伸びは2019年11月以降、プラスが続いている。2020年1月には、主要な業態全てで伸びがプラスとなっている(図表15)。

 小売業全体の売上の伸びは2019年10月以降、マイナスが続いている。主要な業態別では、コンビニエンスストアはプラスを保っているが、百貨店とスーパーは前月と同様にマイナスとなっている(図表11)。

 耐久財のうち、家電製品出荷の伸びは、黒物家電では2019年11月以降プラスが続いている。一方、白物家電では製品により好不調が分かれている(図表13)。

 新設住宅着工戸数の全体の伸びは、2019年7月以降マイナスが続いている。カテゴリー別では、2019年12月以降、持家、分譲住宅・マンション、分譲住宅・一戸建ての全てで、伸びはマイナスとなっている(図表14)。

 新車販売の伸びは、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている(図表12)。

 雇用環境について2020年1月時点では、完全失業率、有効求人倍率ともに、悪化となっている(図表8)。

 収入環境について、現金給与総額と所定内給与額の伸びは、2020年1月時点でプラスに戻した。超過給与の伸びは2019年9月以降、マイナスが続いている(図表9)。

 消費マインドについて、2020年2月時点では、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに、前月よりも低下している。特に、景気ウォッチャー現状判断DIでは、2011年3月の東日本大震災や2014年4月消費税増税に次ぐ、近年に類例のない大幅な落ち込みをみせている(図表10)。

 経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。

 生産について、鉱工業全体の指数は、2019年11月を底に上昇を続けているが、その戻りは鈍い(図表18)。

 マーケットは、株安、債券安、円安のトリプル安に見舞われている。

 株価は2020年2月下旬以降、下落の動きに拍車がかかった。2月上旬から3月中旬までの間に、株価の水準は、23,600円台から16,500円台まで落ち込んだ。1ヶ月余りの間で-30%強という落ち込みは、リーマン・ショック前後の時期に匹敵する(図表21)。

 円ドル為替レートは、3月上旬以降、円安基調に転じている。

 長期金利は2020年2月末頃を境に上昇へと転じ、3月13日以降はプラスに復帰している(図表22)。

 総合すると、消費は2019年10月からの消費税増税以降、年明け後も低迷を続けている。大型耐久財を筆頭に、消費の落ち込みが目立っている。

 雇用環境と消費マインドは悪化に転じており、特に消費マインドの落ち込みは、近年類例のない大きさだ。株安、債券安、円安のトリプル安のマーケットは、特に株価の落ち込みが、リーマン・ショック前後の時期に匹敵する規模となっている。

 消費マインドやマーケットなどが先取りしている日本の景気や消費を取り巻く状況の厳しさは、今後公表される2020年2月の各種統計指標からも、一層はっきりとしてくるはずだ。

 日本の景気や消費に、想定外の大ダメージを与えることとなった最大の要因が、新型コロナウィルスの感染拡大である。

 感染拡大による経済へのマイナス・インパクトは、グローバルにみても、リーマン・ショックに匹敵するものとなりつつある。

 旅行やレジャー、イベントなどへの外出の自粛要請には、終焉の兆しが一向に見えない。外食を自粛する動きも根強く、飲食店への客足も途絶えたままとなっている。

 2020年夏に開催を予定していた東京五輪も、1年程度の延期が決まった。

 政府による新たな経済対策の議論が本格化するのも、これからだ。

 日本国内での感染拡大の動きに、収束の目途が立たない限りは、この先、消費の悪化に一層拍車がかかることは避けられないだろう。


図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.01.22

24年11月の「家計収入」は2ヶ月連続のプラスに

2025.01.22

24年11月の「消費支出」は7ヶ月ぶりのプラスに

2025.01.21

企業活動分析 株式会社サイゼリヤ 24年8月期は引き続きアジアがけん引し増収増益

2025.01.20

MNEXT 新たな成長戦略で日本再生へ―トランプ2.0を契機に転換

2025.01.17

消費者調査データ No.419 キャッシュレス決済(2025年1月版) 利用経験ついに5割超え 「PayPay」独走態勢なるか

2025.01.16

24年11月の「現金給与総額」は35ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.01.16

24年11月は「有効求人倍率」、「完全失業率」とも横ばい

2025.01.15

月例消費レポート 2024年12月号 消費は足踏み状態が続いている-国内外からの物価上昇圧力は消費にマイナスの恐れ

2025.01.14

企業活動分析 マンダムの24年3月期は2期連続の増収増益、女性事業が好調

2025.01.10

24年11月の「新設住宅着工戸数」は7ヶ月連続のマイナス

2025.01.09

24年12月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のマイナス

2025.01.08

企業活動分析 富士フイルムHDの24年3月期は増収増益、過去最高を更新

2024.12.27

24年11月の「ファーストフード売上高」は45ヶ月連続のプラスに

2024.12.27

24年11月の「ファミリーレストラン売上高」は33ヶ月連続プラス

2024.12.27

消費からみた景気指標 24年10月は4項目が改善

2024.12.26

提言論文 消費者が示すサービスブランドの価値実現率-価値伝達なしの生存はない

2024.12.25

24年11月の「全国百貨店売上高」はふたたびプラスに インバウンドや冬物衣料が好調

2024.12.25

24年11月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月ぶりのプラスに

2024.12.24

24年11月の「コンビニエンスストア売上高」は12ヶ月連続のプラスに

2024.12.23

MNEXT 価値と欲望の充当関係とは何か-市民社会の基本原理

週間アクセスランキング

1位 2025.01.20

MNEXT 新たな成長戦略で日本再生へ―トランプ2.0を契機に転換

2位 2025.01.15

月例消費レポート 2024年12月号 消費は足踏み状態が続いている-国内外からの物価上昇圧力は消費にマイナスの恐れ

3位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.06.21

消費者調査データ ビール系飲料(2024年6月版) 首位「スーパードライ」、キリンの新ビール「晴れ風」にも注目

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area