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公開日:2020年05月20日


ぶれない基軸で何度も危機を乗り越える
チョーヤの成長戦略
プロジェクト・チーフ 北口知愛





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 新型コロナウイルスの影響で外出が自粛される中、世界的に「家飲み」が盛り上がっている。数ある酒類の中でも、日本で独自の発展を遂げ、海外からの人気も高まっているのが梅酒だ。チョーヤ梅酒(大阪府、以下「チョーヤ」)は、かつて「家庭で手作り」が当たり前だった梅酒にいち早く注目し、約60年前から自社の柱として製造・販売に取り組んできた。

 発売当初はなかなか売れず、やっと売れ始めたらすぐに大手が参入して競争が激化するなど、度々苦境に陥りながらも、梅酒という基軸にこだわった拡張戦略で、何度も危機を乗り越えてきた。ここ数年、生活者の酒離れが進む中でも着実に売上を伸ばしてきている。

 チョーヤがどのように危機に立ち向かってきたのかについて考えてみたい。


1度目の危機 基軸を定め、すぐに結果が出なくても焦らない

 今でこそ売上高124億円(2018年度)、梅酒の国内シェアトップのチョーヤだが、もともとはブドウを使用したワインやブランデーの製造業として、大正3年(1914年)に創業した。敗戦後、日本が西洋化を急ぐ中で洋酒づくりは手堅い商売と思えたが、あるとき、甘口ワインを大々的に売り出して失敗。「得意な商品でトップにならなければならない」と気付いたという。柱になる事業を育てよう、そのためには他社がやっていない新しいことを始めようと、1959年頃に梅酒づくりに取り組み始めた。

 当時、梅酒は家庭で手作りするのが当たり前だった。そのため、まったく売れない苦しい時期が10年以上続いた。しかし、すぐに結果が出なくても焦らず、一度決めた成長ベクトルからぶれることなく、地道な営業活動と広告投資を続けた。

 潮目が変わったのは1975年頃。核家族や単独世帯が増え、家庭内での梅酒づくりが廃れ、「つくるより買ったほうが早い」意識が浸透した。そして、ようやく梅酒の売上が伸び始める。発売から16年の月日が経っていた。2代目社長だった金銅和夫氏が「がまん強さこそわが社の資産(2001年2月5日付、毎日新聞の紙面より)」と語っているように、まさに粘り勝ちだ。


2度目の危機 大手参入に「あえて何もしない」対応策

 1965年前後から、合同酒精、キッコーマン、宝酒造など大手が梅酒に参入し、価格競争が激化。梅酒市場が伸び始めたが、中小メーカーのチョーヤは脱落の危機に見舞われた。しかしチョーヤは「価格を下げるために品質を下げて抵抗したのでは、これまでの努力が無駄になる」「梅酒の生産コストはほとんどが原料費で、利幅が薄いので大手はいずれ力を抜くはず(1985年8月13日付、日経産業新聞の紙面より)」と、価格を据え置き「何もしない対応策」を取った。「がまん」の結果、1980年頃から他社からの圧迫感が弱くなったという。その後、1984年にはシェアが56%まで高まった。

 平成に入り、チョーヤは、梅酒メーカーとしてのプレゼンスを着々と高めていった。商品面では、食前、食中、食後と梅酒を飲むシーンを広げる開発をしていった。1987年に若年層向けに発売した炭酸割り「ウメッシュ」がヒット。また、食前酒の梅酒という提案を行い、飲用機会を増やした。さらに、食事をしながら飲む缶入りの「チョーヤ水割り梅酒」、食後に「チョーヤデザート梅酒」を発売した。

 調達では、梅酒専業メーカーとして梅の消費量拡大を経営理念に置くことを宣言し、農家との間に運命共同体意識を高め、高品質の梅を優先的に確保できるようにした。


次は「3度目の危機 シェアの落ち込み 基軸再定義でプレミアムブランド開発」
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