スターバックスは、コーヒー豆販売の専門店として、1971年シアトルにオープンした。
当初、飲食サービスは提供していなかったが、1982年に現在のCEOであるハワード・シュルツが、小売・マーケティング担当役員として入社して以降、カフェ業態に転換した。
飲食サービスに反対していた創業陣に反発し、シュルツは一度独立し、イル・ジョルナーレというイタリアン・エスプレッソ・バーを開業した。その後、イル・ジョルナーレがスターバックスを買収することで、カフェとして新生スターバックスが誕生した。
全世界に21,366店舗(2014年度末)を展開する外食の巨人となった同社を分析した。
90年代半ばまでのアメリカには、自宅以外で、友人との歓談や、読書をするような場所が少なかった。コーヒーショップはあったが、安物のコーヒーを飲む場所で、あまり文化的な場所ではなかった。自宅でも職場でもなく、歓談やリラックスができるような生活空間を、スターバックスは「サードプレイス」と呼び、スターバックスが顧客にとっての「サードプレイス」になることを目指してきた。スターバックスは、高品質なコーヒーと「サードプレイス」を提供することで成長してきた。
差別的な「サードプレイス」を提供するために、スターバックスは四つの点に注力した。
一点目は、いうまでもなくコーヒーへのこだわりだ。
それまで安い飲み物というイメージだったコーヒーを、豆の種類や原産地、煎り方までこだわった。
二点目は、店の内装へのこだわりだ。
土地や一戸建ての店舗を自己所有していなかった初期のスターバックスは、一軒ずつ店舗デザイン設計を考え直していた。それでいてどの店もスターバックスだと分かるよう、ごく初期の段階から専属のデザイナーと建築家のチームを持ち、カップ、ナプキン、壁など、あらゆるデザインを統一した。
三点目が、バリスタの育成だ。
ハワード・シュルツは、入社初期にミラノで知ったエスプレッソ・バーに衝撃を受けた。コーヒーがおいしく、バーが人々の生活に溶け込み、知識豊富なバリスタが顧客から敬意を持たれていたからだ。
彼はこの経験から、店舗での顧客満足のためには、バリスタと顧客の良好な関係が重要であると考えた。そこで、バリスタの多くを占めるパートタイマーに対しても健康保険制度を設け、充実した研修を受けさせるなど、店舗従業員を大切にする方針を、ごく初期から堅持した。
これにより、スターバックスのバリスタは、十把一絡げに語られるような飲食店のパートタイム従業員とは異なり、質が高いという評判を得た。
四点目が、直営にこだわったことだ。
店舗イメージやコーヒー品質を高水準に保つため、基本的にFCは受け付けず、直営店舗として運営した。直営で店舗を開けない場所については、有名ホテルや百貨店など、スターバックスのブランドを損なわない場所でのみ許可した。その場合も、スターバックスのバリスタと同じ研修を受けてもらい、厳しい品質保持契約を結んだ。
上記により、スターバックスは、それまでのアメリカになかった、特別な雰囲気の中で高品質なコーヒーが飲める「サードプレイス」として、店舗数と売上を急拡大していった。92年の上場からシュルツ退任の2000年まで、スターバックスの年平均成長率は実に49%に達した。
参照コンテンツ
- 戦略ケース コーヒーチェーン競争の行方 進む異業種とのボーダレス化(2018年)
- 消費者調査データ コーヒーチェーン(2018年3月版) スターバックス独走に陰りか?ドトールとサードウェーブの追撃
- 戦略ケース なぜ今"昭和型"コーヒーチェーンが増えているのか(2015年)
- 戦略ケース スターバックスの復活と新たな時代への挑戦(2015年)
- 企業活動分析 スターバックスコーヒージャパン
- 企業活動分析 ドトール日レスホールディングス
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