日本経済は経済対策による下支え効果で、今のところ二番底を回避していますが、先行きに対する不安を払拭しきれずにいます。 現状では、設備投資の回復の遅れや厳しい雇用・所得情勢、デフレ懸念などの景気下押し要因が残り続ける中で、官民ともに「景気は自律的な回復に至っていない」との見方が大勢を占め、二番底へのリスクも含め景気の先行きについて楽観視できない状況です。 2010年度の日本経済の見通しについては、2010年度後半を目処に、消費の低迷は続くが外需の堅調さと設備投資の回復に支えられ景気の悪化は回避されるシナリオや、内外需ともに堅調に推移し景気は本格回復をみせるシナリオなどの楽観シナリオが主流であり、内外需ともに低迷し景気の失速が本格化するといった悲観シナリオはむしろ少数派です。 2010年入り後も、デフレと家計の収入減少は続いており、消費者のマインド悪化にも歯止めがかかる気配は未だみられません。不安定な株価の動きが事態を先取りしているかのように、もたつきと不手際を続ける鳩山内閣の存在は今後の景気と消費にとってのリスク要因として無視できず、夏の参議院議員選挙までは経済政策運営は波乱含みの展開が続きそうです。消費をとりまく環境はますます厳しいものとなりつつあり、「デフレスパイラル」により景気の二番底へ突入する可能性は、今もなお排除されてはおりません。 今号の概要は以下のとおりです。 「Economic Outlook for Japan」では、前号が発刊された2009年11月以降の経済情勢を整理し、二番底とデフレスパイラルの危機から脱しきれない日本経済の見通しと今後の消費の読み方を提示します。 「不況下の節約生活」では、進行する不況の下で強まる節約姿勢と支出意欲減退の背景を示すとともに、広範な領域で購入数量の下方調整に加え低価格帯シフトや購入商品の品質切り下げの形で本格化する消費者の支出抑制行動を明らかにします。 「消費者による新政権の政策評価」では、鳩山新政権誕生を挟んで生じた消費者の政策スタンスの変化を確認し、マニフェストに掲げた政策の目玉となる子ども手当と配偶者控除・扶養控除廃止の消費へのインパクトを試算するとともに、鳩山内閣の提示した新成長戦略の消費者への説得力を検討します。 「市場衰退期における生き残り戦略の研究」では、実データをもとにして様々な商品のプロダクトライフサイクルのタイプわけを行い、さらに多くの商品において該当していた衰退期における企業の戦略のパターンを、事例をもとに抽出して明らかにします。 2010年早春、日本経済の底流で生起しつつある変化の予兆を捉えて、一歩先を見据えた戦略的判断と行動の一助となることを企図して、「消費経済レビュー」第13号を実務家のみなさまにお届けいたします。
|
|||