消費経済レビュー Vol.13 |
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市場衰退期における生き残り戦略の研究 -151品目23年間のプロダクトライフサイクル分析
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製品のプロダクトライフサイクル(以下PLC)とは、ある製品の売上が導入から成長、 成熟、衰退にいたるプロセスをモデル化したものであり、マーケティングなどの戦略を考えるうえで重要な要素となっている。一般にS字型を形成するとされているが、それ以外にも多くのタイプがある。ただし、このようなPLCのタイプはこれまで任意に抽出されていたほか、その原因や背景要因などの特定もなされていなかった。またPLCの各段階における戦略、特に衰退期における戦略についてもあまり豊富ではなかった。 そこで本研究では特に国内の様々な製品の生産数量のデータに対して、PLCの自動抽出を行う新たな手法を提案し、これを用いて分類し、これらの背景要因も特定した。さらに事例をもとにPLCの衰退期における企業の戦略の抽出を行った。 結果、八つのタイプのPLCを抽出することができた。特に多くのタイプがみられたのが製品の衰退期に関連したサイクルであった。またこれらの製品が衰退した主な原因として、代替品の登場、輸入代替が伸びていること、長期的なニーズが乏しいことなどがわかった。 続いて、多くの企業が直面している商品の衰退期における戦略について、事例をもとに分類した。結果、撤退しない場合には、大きくわけて三つの戦略があることがわかった。投資を維持しシェアの拡大をはかる「投資拡大戦略」、高いシェアを差別性により維持する「シェア維持戦略」、そして再度サイクルを作り出す「再成長戦略」である。このうち、「再成長戦略」については、事例を豊富化させ、イノベーションという観点も加えたうえで六つのタイプに分類しなおした。結果として、製品に新技術を利用して既存顧客に提案することや、 製品を改良して新規顧客に対しても新たに展開すること、既存製品を利用して既存顧客に提案することなどが多くの企業でとられていることがわかった。 これらの結果をふまえることで、企業にとってその商品が現在どのようなPLCにあるのか、その原因は何かがわかるほか、こうした背景をもとに企業が今後利益を得るためにどのような戦略をとればいいのかということへの示唆へとつながると考えられる。 (2010.02)
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