消費経済レビュー Vol.13 |
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不況下の節約生活 | |
消費をとりまく環境の悪化は2010年の年明け後も払拭されず、消費の沈滞はなおも続いている。不況が深化し実際の所得の減少に加え将来所得の見通しも悪化する中で、消費者は低下していく所得の範囲でのやりくりを迫られ、節約姿勢をより一層強めつつある。消費者の節約姿勢は漠然とした意識レベルにとどまらず、具体的な節約行動として量的にも大きく質的にも幅広いものとなっている。 節約の姿勢と行動を左右する第一の要因は、節約消費の意識である。節約消費意識は、消費を含めた人生経験を通じ人々が時間をかけて形成してきた、倫理観や信念に裏打ちされたものである。人生経験の違いが節約消費意識の強弱を生むが、その違いは世代に色濃く現れる。経済状況認識は節約の姿勢と行動を左右する副次的要因であり、悪化の場合には節約姿勢と支出意欲減退をより強める方向に作用し、好転の場合にはより弱める方向に作用するが、節約消費意識の影響が経済状況認識の影響よりも優勢なために、経済状況認識が好転しても節約姿勢と支出意欲減退が強く出てくることもある。 節約の姿勢と行動が強まり支出意欲の減退が進む中で、消費者の支出抑制行動は本格化している。購入金額だけでなく購入頻度でも減少傾向が鮮明となっており、支出抑制がデフレに起因した価格水準の低下にとどまらず、購入数量の下方調整の段階にまで波及してきている。更に、低価格帯シフトや購入商品の品質切り下げといったトレーディングダウンの動きが広範化しつつあり、販売数量の減少にとどまらず商品自体が淘汰・選別の危機にさらされ続けている。この状態が続けば、消費支出は品質や価格帯の切り下げによる価格水準の更なる低下と数量調整の双方に同時にさらされ、名目と実質の両方でのマイナスが加速することになりかねない。商品の消滅は、そのために必要とされた生産設備と労働力を遊休化させ、家計にとっては雇用機会と所得の喪失をもたらす。 消費者による支出抑制行動の帰結として、経済は消費と雇用、収入がパラレルに縮小し続けていく「デフレスパイラル」状況に陥りかねず、消費は今、低迷本格化の入り口に立たされている。 (2010.02)
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