2008年秋に入り、サブプライムローン問題が残した爪あとは、リーマン・ブラザーズなどの個別金融機関の破綻から、アイスランドなどのような一国レベルでのデフォルトといった、世界的な金融危機へと広がりを見せております。米国経済の失速傾向は鮮明となっており、好調さを保ってきた中国経済も北京オリンピックを過ぎて成長ペースは明らかにスローダウンしております。こうした海外からの逆風に加えて、90年代前半の再現を思わせる円の急騰は、悪化が進む日本の景気の下押し圧力としてのしかかってきます。 2009年度の日本経済の見通しについては、外需は堅調さを保つ中で年度末までには景気の底打ちを実現し、設備投資主導で回復していく可能性が高い、というのが主流のシナリオとなっていますが、これらの見通しには金融危機の余波や急激な円高の影響は十分に織り込まれておらず、外需に関する楽観的な見通しは大幅に下方修正される可能性が高いと目されます。悪材料が出続ける中で、消費をとりまく環境は、ますます厳しいものとなりつつあります。 今号の概要は以下のとおりです。 「Economic Outlook for Japan」では、前号が発刊された2008年6月以降の経済情勢を整理し、今後の消費の読み方を提示します。 「値上げへの対応行動の解明-強まる節約意識と先行する購入数量調整」では、2008年に入り本格化した値上げの波を受けて定着する値上げ認識と高まる節約意識に注目し、値上げへの対応行動として具体化する支出抑制の動きについて、購入数量調整と購入商品の価格・品質調整の観点から検討を加えております。 「景気認識転換のミクロ的波及構造-集団間のネットワーク分析によるアプローチ」では、今日非常に悪化しているマインドに焦点をあて、その悪化のメカニズムの一つとして情報源としてのクチコミを取りあげて、その詳細の分析を行います。 「ネットワーク分析と帰納論理プログラミングの比較と応用-関係性と属性を扱うデータ分析に向けて」では、これまでのデータ分析のように「属性」に焦点をあてるだけではなく「関係性」を扱うデータについての分析方法を概観し、同時に分析方法ごとの特徴をいかした新しい分析を試みます。 2008年師走、日本経済の底流で生起しつつある変化の予兆をとらえて、一歩先を見据えた戦略的判断と行動の一助となることを企図して、「消費経済レビュー」第10号を実務家のみなさまにお届けいたします。
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