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消費経済レビュー Vol.10
Economic Outlook for Japan

 日本経済は、2008年第2四半期に大幅なマイナスに落ち込んで以降、マイナス成長から抜け出せずにいる。2008年第2四半期には輸出、設備投資、個人消費のいずれもマイナス成長を記録、2008年第3四半期には輸出と個人消費がプラスに転じるも寄与度はわずかなプラスにとどまり、本格回復には程遠い。設備投資の寄与度のマイナス幅は、2008年第3四半期にもわずかながら更に広がっており、投資の低迷状況が鮮明化している。
 輸出については、米国の景気後退の本格化や、中国経済の成長鈍化傾向、更に急激な円高の進行はいずれも、日本の輸出にマイナスの材料である。特に米国向け輸出は今後、大幅な落ち込みが懸念される。設備投資の動向を見ると、設備投資金額は2007年第2四半期以降、マイナス成長が続いている。設備投資計画をみると、大企業の製造業を除き、2008年度は2007年度より伸び率が下回る見込みである。在庫循環については、2008年第2四半期に投資財は在庫調整局面入り後、生産財は在庫積み上がり局面入り後、在庫調整過程が加速している。雇用・収入環境については、雇用環境は堅調さを保っているが伸び率は緩やかながら低下しつつある。収入環境は2008年に入り悪化しつつあり、現金給与総額の伸び率は低下し続け、最近ではぎりぎりプラスを保っている。他方、超過給与支払額も伸びは低下を続けた末にマイナスにまで落ち込んでいる。消費動向については、消費支出は2008年に入り伸び率は低下を続け、最近では大幅なマイナスが続いている。消費マインドも悪化傾向が続き、金融危機と円高が悪化に拍車をかける可能性が懸念される。
 日本経済に関するシンクタンク各社の想定シナリオを総合すると、2008年度は外需依存の状況が続くが、2009年度には更に設備投資も回復する可能性が高く、場合によっては消費も回復し好景気の時代を再び迎える可能性もある、というのが主流である。ただしこれらの予測には金融危機の余波や急激な円高の影響は十分に織り込まれておらず、外需に関する楽観的な見通しは大幅に下方修正される可能性が高い。
 弊社の独自調査によれば、景気の現状認識と見通し、雇用環境の変化認識と見通しはいずれも、悪化方向への動きが加速している。収入は実態・見通しともに横ばい傾向、支出実態は現状維持の状況だが、支出意向は顕著な悪化を見せている。支出の減少意向をもたらす要因として、暮らし向きの悪化見通しに備えた生活防衛意識や貯蓄意欲の高まりが、支出抑制を促す可能性が考えられる。
 以上の議論より、2009年度の日本経済の先行きを占うと、雇用・収入環境については収入環境が悪化するものの雇用調整は回避されることで堅調さを保ち、個人消費については支出の伸びの鈍化と消費マインドの悪化基調の定着で消費低迷が顕在化すると見込まれる。在庫・生産調整については、投資財や生産財でダブつき感が残るとともに消費の数量調整の本格化で在庫調整ならびに生産調整も本格化する、というのが基本的な判断である。
 弊社としては、「消費低迷・景気調整シナリオ」を2008年度の日本経済の先行きに対する基本シナリオとして採用したい。次善のシナリオとしては、楽観的な「内需主導型景気回復シナリオ」と、悲観的な「雇用・生産調整進行・不況本格化シナリオ」のふたつを挙げておきたい。
(2008.12)


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