小売業態の進展を説明する理論仮説のひとつで、O.Nielsenによって提唱された理論です。小売業の進展や市場変化に伴い、既存の小売業態ではカバーできない「真空地帯」が生まれ、そこを埋める形で新たな小売業態が出現するという考え方です。
これは、同じく小売の業態進化を説明する「小売の輪の理論」(M.P. McNair)を発展させたものです。小売の輪の理論では、新たな業態は、低価格訴求による低マージン・高回転ビジネスとして市場に現れ、同業態間での競争で差別化するために、提供する商品の数やサービスの引き上げが行われるとされています。
これに対し、真空地帯理論は、消費者の評価を取り入れ、例えば、消費者が最も評価している業態の品揃え価格・サービス水準へ接近しようとする動きが現れると仮定します。消費者が最も評価している価格・サービス水準より高価格・高サービスの小売業では、低価格・低サービスへの移行を志向し、逆に、低価格・低サービスの小売業では、高価格・高サービスへの移行を志向することになります。こうして、高・低のいずれからも転換が行われるため、革新的な業態が出現する可能性(真空地帯が生まれる可能性)も、低サービス・低価格と高サービス・高価格の両極にあると主張するものです。新規業態は、消費者が最も評価している品揃えやサービス水準を提供している業態、すなわち、競争の厳しいところではなく、真空となった地帯に現れるというものです。
真空地帯理論では、小売の輪の理論と異なり、高価格・高サービスで参入する小売業態の出現についての論拠を与えた点は評価できます。
業態の進展について、価格と提供サービス水準だけで説明することができるのか(この点は小売の輪の理論も同じ)といった問題や、真空地帯が生まれる論拠としている価格・サービス水準の転換についても、例えば、高価格・高サービス水準で参入した小売が、低価格・低サービス水準の業態へと簡単に転換できるのかという小売業経営のリアリティの面からの問題も指摘することができます。
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