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消費マインドの悪化が加速する中で、消費の低迷は耐久財から、外食や日常生活財などへと広がる可能性が懸念される。
この動きに歯止めをかけるには、コロナ感染第6波の早期収束が鍵となる。
JMR消費INDEXは、2021年12月時点で60.0となり、再び50を超えた。近似曲線は、上昇トレンドを維持している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数をみると、2021年12月時点で、支出関連3指標のうち消費支出は改善となったが、平均消費性向と預貯金は悪化が続いている。
販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)のうち、改善が6指標、悪化が4指標となり、前月と比べ改善の側がわずかに優勢となっている(図表2)。
支出関連と販売関連の双方で改善が認められるが、その動きは力強さに欠ける。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、プラスに戻った(図表4)。
10大費目別では、2021年12月は、名目ではプラスの側が優勢であるが、実質ではマイナスの側が優勢である(図表5)。カテゴリーレベルでは、物価上昇の悪影響が徐々に表れつつあるようだ。
販売現場では、小売業全体の売上は3ヶ月連続で改善している。チャネル別では、ドラッグストアは8か月連続のプラス、百貨店は3ヶ月連続のプラスとなった。コンビニエンスストアは3ヶ月ぶりにプラスに戻った。他方、スーパー、家電大型専門店、ホームセンターは2か月連続でマイナスである(図表9、図表10)。
前月同様、チャネル間で好不調の格差は残ったままだ。
外食売上は、全体では5ヶ月ぶりプラスに転じ、プラス幅も二桁近い。業態別では、2021年12月時点で、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋の全ての業態でプラスとなっている。特に、パブ・居酒屋とファミリーレストランは7ヶ月ぶりのプラスである。前年同月比伸び率も、パブ・居酒屋で144.3%、ファミリーレストラン112.9%と、極めて高い値を記録した(図表18)。
これは、コロナ感染第3波〔2020年11月~2021年2月頃〕における落ち込みの反動や、第5波〔2021年7月~9月頃〕以降の営業自粛解除を受けた客足の回復の動きなどを反映したものとみられる。
だが、2022年の年明け後のオミクロン株の感染再拡大の動きや、それを受けて出されたまん延防止等重点措置は、外食回復の機運に水を差した格好だ。
新車販売では、乗用車(普通+小型)は5ヶ月連続のマイナス、軽乗用車も8ヶ月連続のマイナスである。伸び率もともに低下に転じている(図表11)。
家電製品出荷は、総じて不振が続いている。
白物家電では、401L以上の電気冷蔵庫と洗濯乾燥機はプラスだが、電気掃除機とルームエアコンはマイナスであり、財ごとに好不調が分かれている。
AV機器では、4K対応薄型テレビ、BDレコーダ、スピーカシステムの3品目全てでマイナスとなった。情報家電でも、スマートフォンとノートPCともに、マイナスが続いている(図表12、図表13、図表14)。
新設住宅着工戸数は、全体では10ヶ月連続でプラスとなった。利用関係別では、分譲住宅・一戸建ては8ヶ月連続のプラス、分譲住宅・マンションは2ヶ月連続のプラスである。他方、持家は14ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家は、首都圏は14か月連続でプラスとなっているが、
近畿圏では12ヶ月ぶりにマイナスに転じ、中部圏とその他の地域でも9ヶ月ぶりにマイナスに転じている。他方、マンションでは、中部圏とその他の地域は2ヶ月連続でプラスとなり、首都圏でも5ヶ月ぶりにプラスとなったが、近畿圏では3ヶ月連続でマイナスとなっている(図表16、図表17)。
持家はこれまで息長く改善が続いてきたが、足許で回復の動きに一服感が出ている。
雇用環境は2022年12月時点で、完全失業率が低下し、有効求人倍率は上昇するなど、改善の動きがみられる(図表6)。
収入環境については2021年12月時点で、横ばい傾向にある。現金給与総額はわずかにマイナス、所定内給与額はわずかにプラスである。超過給与の伸びは前月同様、プラスを保っている(図表7)。
消費マインドはピークアウトの動きが鮮明となっている。2022年1月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは大きく急落した。低下幅は1ヶ月間で-22.7を記録し、東日本大震災が起きた2011年3月時点(-20.7)を超えている。
消費者態度指数は、2ヶ月連続のマイナスである(図表8)。
際立つ消費マインドの不振、特に景気ウォッチャー現状判断DIの極めて大幅な落ち込みは、年明け後のオミクロン株の感染拡大が引き金となっている可能性が濃厚だ。
総合すると、消費マインドの悪化が加速する中で、これまで耐久財で目立っていた消費の低迷は、今後、外食や日常生活財などへと広がる可能性が懸念される。
外食では、2021年の秋以降回復の兆しが見えてきていたが、オミクロン株の感染拡大の悪影響を受けて、年明け後の急落は避けがたい。
日常生活財における物価上昇の悪影響は今後、一層強まる可能性が高い。
耐久財でも、これまで息長く好調を続けてきた新設住宅着工の一部で悪化の兆しが出始めていることにも、あわせて注意を要する。
GoToトラベルの再開も先送りとなっていることから、旅行・レジャーを始めとする選択的サービスの復活も当分先の話となるだろう。
雇用環境では改善がみられ、収入環境も横ばい傾向にあるなど、ともに堅調さを保っていることから、購買力の面での懸念材料はほぼない。
消費マインド悪化の動きに歯止めをかけられるか否かは、現在のコロナ感染第6波の収束にいかに早くこぎ着けられるかにかかっている。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ 凍結した消費マインドを溶解させるマーケティング―解除後の消費増加シナリオ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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