首都圏を中心に店舗展開する食品スーパー、ヤオコーの2016年3月期の決算説明会が5月に行われた。売上は当初予測を大幅に超え3,254億円、前年比110.0%となり、営業利益は138億円、前年比112.1%と2桁成長となった。27期連続で増収増益を達成している。この業績は出店拡大によるものだけではない。2015年度の既存店売上は105.3%、既存店客数は102.5%、客単価は102.2%といずれの数字も伸ばした結果だ。1店1店しっかりとした店づくりを行っていることが、持続的成長につながっている。
図表.ヤオコーの業績

成長を続けるヤオコーも初期のころは失敗の連続だった。精肉・鮮魚の集中前処理を行ったことで生鮮食品の売上が低迷した。他にも食品宅配事業に参入したり、移動バス販売を行ったり、不振店をディスカウント店に転換したりと様々な取り組みを行うが、どれも失敗した。当時は、埼玉にある普通のSM(スーパーマーケット)という存在でしかなかった。
同社は、94年に「食生活提案型食品スーパー」を目指すという経営方針を掲げた。97年には「食生活ニーズは地域により微妙に異なる。それを把握できるのは現場の店長とパート店員だ」という川野幸夫会長のもと、「個店経営」を打ち出して、店舗運営権限を現場に与えた。
転換となったのが98年にリニューアルオープンした狭山店の実験展開だ。地場産野菜売場と総菜売場を拡充し、今ではヤオコーの名物になっているクッキングサポート(売場の中にあり、食や料理の相談や料理を実際につくりレシピなどを教える場所)を初めて展開した。さらに、ミールソリューション(「食事問題の解決」のこと。家庭で料理を一から作る代わりに、惣菜、カット野菜などの下ごしらえされた食材を買って、手早く食事を作ること)の強化を図った。同時にパート店員が考案した料理をお客様に試食してもらうことも始めた。手作りのレシピを配布し、地域に合った主婦感覚のメニュー提案を行った。現在、ヤオコーに行けば、売場の至るところにメニューが提案され、総菜売場は非常に充実している。ヤオコーの原型がこの狭山店であり、この狭山店をモデルに出店を拡大し、急成長を遂げている。
参照コンテンツ
業界の業績と戦略を比較分析する
おすすめ新着記事

「出前館」「Uber Eats」、コロナ下で認知拡大
長引くコロナ禍で市場が拡大しているフードデリバリー。新規参入が相次ぐ一方で撤退もみられ、競争も激化している。今回の調査では、大手の「出前館」と「Uber Eats」が昨年に比べ、認知が大幅に拡大。しかし再利用意向では両者には大きな差がついた。

今治.夢スポーツ 「スポーツが日本の未来にできること」を求めて、岡田武史氏の挑戦
元サッカー日本代表監督 岡田武史氏がオーナーを務める「今治.夢スポーツ」は、サッカーJ3のFC今治の運営を中心に、教育や地域貢献などさまざまな事業を手がけている。本稿では、電通でFIFAワールドカップなどの国際大会に携わった経歴をもつ筆者が、岡田氏や関係者に直接取材。単なる地域創生にとどまらない壮大な「今治モデル」構想のエッセンスを紹介する。

コロナ下でも堅調続く「マクドナルド」
コロナで外食全体が不振に陥っている中、ファーストフード業態は前年比96.3%と減少幅が小さい。今回の調査で印象的なのが「マクドナルド」の盤石さだ。主要な項目で2位以下を15~20ポイント引き離している。逆に順位を落としたのが、繁華街などに立地するファストカジュアルのチェーンだ。



