国内の新車登録台数は97年の4月以来、前年同月を割り続け98年は前年度比84.8%、434万台に終わった。99年も低迷を続け1月から5月の累計でも前年対比90.3%と厳しい状況となっている。
一方、トヨタの国内販売台数(以下全て単体実績)は97年193万が98年は169万台(前年度比9%減)にまで落ち込んだ。しかしながら、シェアは回復基調にあり、4年ぶりに40%を達成した。99年5月は45.7%を記録している。この回復は直接的には新型リッターカー「ヴィッツ」の販売好調があるが、いくつかの新しい試みの成果が出ていると考えられる。
しかしながら本質的な問題としてかつての強みが構造的な弱みとなってきていることが指摘できる。
これまでのトヨタは「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「旧オート店(現ネッツ)」「ビスタ店」からなる5チャネル体制のもと、全国販売会社308社(9割が現地資本)約5,000店舗の巨大流通網を構築し、営業担当地域制(テリトリー制)、販売奨励金、訪問販売を基軸とした販売システムでシェアを拡大してきた。市場が右肩上がりに成長し、均質的なライフスタイルで顧客のアクセスも均質であった時代はこの仕組みはうまく機能し、トヨタの最大の強みであった。
しかし、消費低迷のもと顧客側のアクセスニーズが変化してくるとこの流通システムは顧客アクセスの機能を果たさなくなったのである。
1) 訪問販売機能の低下
ユーザーのアクセスニーズが変化している。ユーザーの車選びは自分の都合のいい時間に豊富な選択情報と品揃えから実際に車に乗って触って選択する方向に変化している。自分の望まない時間にやってきて(夜討朝駆け)、乏しい情報で選択させる訪問販売はユーザーのアクセスニーズと全くずれてしまっている。
2) 5チャネル制の形骸化
五つのチャネルの取り扱い車種は同じクルマを複数チャネルで売る併売車やブランド名は異なるが実質的には同じ兄弟車が多数あり、品揃えの違いがみえなくなっている。5つのアクセスの機能の差異がなくなっている。
以上のように顧客へのアクセス機能そのものが低下したことと、五つのアクセス機能に差異がなくなったために各販売会社は同一商圏内での過当競争となり、トヨタディーラ同士の激しい価格競争に陥ってしまった。その原資となったのは年間1,000億円(97年度)にも及ぶ販売奨励金である。
またトヨタがは96年に制定した経営計画「トヨタの2005年経営ビジョン」で「国内販売250万台、輸出100万台、海外生産250万代」という21世紀初頭の姿を描きだした。これは単なる数字目標ではなく雇用確保のためのラインとして提示された。これに基づき販売会社各社は従業員と販売拠点の拡充に動いた。90年に5,178拠点11万9千人だった拠点数と人員を97年には5,627拠点、12万2,239人まで拡大した。
価格競争の激化と固定費の増加のために販売会社は軒並み収益が悪化している。販売奨励金がなければ事実上赤字に転落するディーラーが多数であるといわれている。トヨタは輸出で稼いだ利益を国内の販売奨励金に投入しているとみられ、93年度に500億円だった販売奨励金は96年度は1,300億円と2倍以上に拡大。97年度は減少したとはいえ1,000億円を計上している。
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