近年、データベース・マーケティングが注目されている。たんに顧客データベースを基に、それを活用し、駆使するマーケティングと理解する人が少なくないが、それは間違いだ。リレーションシップ・マーケティングとも、ワン・トゥ・ワン・マーケティングとも呼ばれ、顧客一人一人に十分な満足を与えることを目指すものである。
データベース・マーケティングは新しい概念ということもあって海外でも失敗例の方が多く、日本ではまだ成功例はないといわれる。だが、クレディセゾンはその先駆者となる可能性を秘めている。ここでは、データベース・マーケティングについてその概要を説明するとともに、クレディセゾンの現状の取り組みについて紹介してみたい。
データベース・マーケティングとは、コンピュータに蓄積された膨大な顧客情報を駆使して、的確で精度の高いマーケティングを行う手法である。「適切な商品を、適切な客に、適切な時に、適切なオファーで、適切な場所で、適切な量を作る/売る」といったマーケティングの基本を、コンピュータネットワークの助けを借りて、以前より忠実に実現するための手段や方法を考え、何が適切なのかを割り出そうというものである。コンピュータに蓄積された膨大なデータを分析・活用することによって、顕在化していないニーズを掘り出し、そのニーズに合致する商品やサービスを開発・提供したり、顧客関係の維持に役立てようというのである。
R.ジャクソンらによれば、データベースの用途として表にあげた15が紹介されている。
それでは、データベース・マーケティングとはいつ頃から提唱されているのだろうか。
マーケティングの代表的なテキストであるP・コトラーの『マーケティング・マネジメント』にデータベース・マーケティングの概念が紹介されたのは、1994年発刊の第8版である。
また、米『ビジネス・ウィーク』に「潜在力を秘めた一つの新しい販売手段、データベース・マーケティング」という特集記事が掲載されたのが1994年(9月5日号)である。この特集で、データベース・マーケティングはマス・マーケティング、ターゲット・マーケティングに次ぐ第三段階と位置づけられ、「個人の顧客を対象に、一人一人の顧客の欲求にこたえる商品を、各個人の要望に適合した方法で提供しようとする販売の仕組み」と定義されている。また、GM、クラフト・ゼネラルフーズ、フィリップ・モリスなどの大手企業での導入が紹介されている。
近年になって、データベース・マーケティングが注目されている背景には、企業の顧客志向、顧客満足を追究する姿勢が強まる一方で、市場が極めて分裂化し、多様化していることがある。顧客を個人として捉える必要性が高まっているのだ。さらに、ここへきて、ハード・ソフトともに技術的に数年前と比べて高いレベルのものがでてきており、コンピュータを使ったマーケティングがより実際的になってきたためといえる。
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