半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

マーケティング用語集
敵対的TOB


敵対的TOBとは

 敵対的TOBとは、買収対象会社の経営陣や関連会社の同意を得ずに行われるTOB(株式公開買い付け)のことをいいます。反対に、買収対象会社が買収に協力的な場合を、友好的TOBといいます


敵対的TOBへの防衛策

 70~80年代にかけて企業買収が激化したアメリカでは、敵対的TOBに対するさまざまな防衛策が考案されました。以下にその予防策・対抗策の主要なものを挙げます。

予防策

  • ポイズンピル(毒薬)
    敵対的TOBに対する防衛策として代表的なもので、米上場企業の約4割が導入している。敵対的買収者を除く既存株主に市場価格を大幅に下回る価格で株式を購入する権利を与え、敵対的買収者が一定の株式を取得した場合に、新株(毒薬)を発行して買収者の持ち株比率を下げる方法。
  • ゴールデンパラシュート(金の落下傘)
    敵対的買収によって経営陣が解任された際に巨額の割り増し退職金を支給する(危機的状況から多額のお金を手に飛び降りる)ことを予め規定し、敵対的買収者の買収コストを膨らませ、買収後の企業価値を低下させる方法。
  • スタッガードボード(捻じれた役員会)
    全役員が一度に選出されないように役員の改選時期をずらして部分的に選任 を行い、敵対的買収者に一度に経営権を握らせない方法。

対抗策

  • ホワイトナイト(白馬の騎士)
    第三者の友好的買収企業(白馬の騎士)に株式を購入してもらい、敵対的買収者を避ける方法。
  • パックマン・ディフェンス
    買収対象企業が、買収を仕掛けた企業の株式を購入し逆に買収を仕掛ける方法(ゲーム パックマンの敵に飲み込まれるイメージ)。
  • スコーチド・アース(焦土作戦)
    敵対的買収が発生した際に、優良資産・収益性の高い事業を売却し、買収の動機を削ぐ方法。


日本における敵対的TOBの事例

 03年12月、米投資ファンド「スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(以下スティール)」が、東証2部上場のユシロ化学工業(以下ユシロ)と毛織物染色業大手のソトーに、日本で初めての本格的な敵対的TOBを仕掛けました。スティールは両社の株主に市場価格よりも高い買い付け価格を提示、ユシロ/ソトーは1株配当金を大幅増配し対抗、それを受けて上昇した株価がスティールの買い付け価格を上まわり、結局TOBは不成立となりました。

 日本でそれまで敵対的TOBがなかった理由には、多くの企業が強固に株式を持ち合いTOBに応じる浮動株が少ない、と認識されていたことがあげられます。しかし、実際には株式持ち合いは90年代後半から大きく崩れており、スティールによるユシロ、ソトーの敵対的TOBは、市場では安価な株が買われること、有効活用されていない資産は株主に還元されること、という資本主義の考え方が徹底された画期的な出来事であったといえます。



参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.07.26

消費者調査データ 炭酸飲料(2024年7月版)  首位「コカ・コーラ」、迫る「三ツ矢サイダー」、高い再購入意向の無糖炭酸水

2024.07.25

24年5月の「広告売上高」は、6ヶ月ぶりのプラス

2024.07.24

24年5月の「旅行業者取扱高」は19年比で72%に

2024.07.23

24年5月の「商業動態統計調査」は2ヶ月連続のプラス

2024.07.22

企業活動分析 キユーピー株式会社 23年11月期は海外など好調で増収も原材料高騰で2桁減益に

2024.07.22

企業活動分析 カゴメ株式会社 23年12月期は引き続き海外事業がけん引し増収増益に

2024.07.19

企業活動分析 ライオン株式会社(2023年12月期) 増収も土地譲渡益の反動等で減益に

2024.07.19

企業活動分析 ユニリーバ(Unilever)(2023年12月期) 減収減益、事業部門の業績格差受け、新成長戦略を修正へ

2024.07.19

24年6月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.18

24年6月の「景気の現状判断」は4ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.07.17

MNEXT 円安は歓迎すべきかー過熱する円安論争

2024.07.16

企業活動分析 山崎製パン株式会社 23年12月期は大幅な増収増益で過去最高益に

2024.07.12

消費者調査データ スポーツドリンク・熱中症対策飲料(2024年7月版) 首位「ポカリスエット」、追い上げる「アクエリアス」

2024.07.11

24年5月の「消費支出」はふたたびマイナスに

2024.07.10

24年5月の「家計収入」は20ヶ月ぶりのプラス

2024.07.09

24年4月の「現金給与総額」は28ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.07.08

企業活動分析 大塚HD 23年12月期は売上は過去最高を記録、医療事業の減損損失で減益に

2024.07.08

企業活動分析 小林製薬の23年12月期は、R&Dや宣伝広告への積極投資を行い増収減益に

2024.07.05

成長市場を探せ 初の6,000億円超え、猛暑に伸びるアイスクリーム(2024年)

週間アクセスランキング

1位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

2位 2024.07.03

MNEXT コロナ禍の前中後の内食もどりはあったのか? -食欲望の現在-

3位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area